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2020ガンバ大阪シーズンレビュー前編:『激動じゃないシーズンってあるの?』

 みなさんあけましておめでとうございます!ちくわ(@ckwisb)です!寒い日が続きますがお元気ですか?

 元日の天皇杯決勝を終えてガンバの長いシーズンがようやく終わりました。次から次へと試合がやってくる1年、やる側はもちろんですが観る側もかなり大変だったんじゃないでしょうか。本記事ではそんな2020年ガンバ大阪のシーズンをざっくり振り返っていきたいと思います。

 さて、今回は新しい取組として対話形式で進めていきたいと思います。話し相手として登場するのは、友達のガンバサポ……ではなく、私の心のアナザーサイドから召喚した「はんぺん君」です。じゃ、はんぺん君、今日はよろしく。

……

△はんぺん:よろしくやで。

◎ちくわ:(あ、そういう(関西弁)感じ?)

イントロダクション

ちくわ:じゃあまずは結果から振り返っていきましょう。今年の勝ち点は「65」で順位は「2位」、得点「46」、失点「42」、得失点差「+4」という結果でした。去年が勝ち点「47」、順位は「7位」、ということを考えると、リーグ戦の成果としては、大幅なジャンプアップになった。

はんぺん:数字だけ見たら、確かにそんな感じやな。でも、なんかこの数字に違和感あんねんなー。ぬるっと勝ってる時が多くて、「上位らしい強さ」を感じられる瞬間ってのは、あんまりなかった気がするわ。

◎ちくわ:確かにそうだね。「再現性のある神通力」なんて単語をタイムラインで見て笑った記憶がある。「勝ちに不思議の勝ちあり」という名言があるけど、まさにそれを地でいくような試合が多い印象だった。

◎ちくわ:せっかくだから、もう少し細かく振返ってみよう。参考になる切り口として、今回も去年と同じように一年の変遷を章立てしてみました。勝ち点推移のグラフと合わせるとこんな感じです。

2020勝ち点推移

はんぺん:なんだか分かるような分からんような感じやな。

ちくわ:まぁ、そのうち分かりますよ。順番に話していきましょう。まずはbeforeコロナ。リーグ戦中断前に、ガンバはルヴァンカップの柏戦とリーグ開幕のマリノス戦の2戦を消化。

はんぺん:なんかめっちゃ昔の事のような気がするわ。

◎ちくわ:この2戦、それぞれ戦い方が全く違ったね。ルヴァン柏戦の方は2019年のサッカーを踏襲するような3-1-4-2の布陣、マリノス戦の方は「対マリノスシフト」とも呼べる、4-3-3⇔5-4-1の可変布陣が印象的だった。

はんぺん:全然違うサッカーを見せられて、ガンバがやりたいサッカーがよく分からんまま中断に入ったなぁ。

【第1章:トランスフォーマービーストツネ様】

ちくわ:その後実に4カ月の中断期間を経てリーグ戦が再開したけど、再開後は前年を踏襲した3-1-4-2の布陣でスタートすることが多かったね。シーズン前は「3バックと4バックの併用」とは言っていたけど、4バックが使われたのは4節の清水戦だけだった。

◎ちくわ:サッカーの中身に視点を移すと、前年と布陣は同じだけど、「守り方」が少し違っていた。シーズン前に何度も言及されていた「ハイプレス」というキーワードだね。2トップが積極的に相手ディフェンダーに詰める、連動して中盤が前に出て中央のコースを消す。

はんぺん:確かホーム大分戦のアデのゴールとかはそんな感じやったな。

△はんぺん:で、この「トランスフォーマービーストツネ様」ってのは何なん?

ちくわ:この時期のガンバは選手交代をきっかけにまるで別のサッカーに変化することが多かったから、僕はこういう表現をTLに投げることが多かった。笑 特にビハインドの時にパトリックや渡邉千真を投入して繰り広げられる、激しくオープンで獣(ビースト)のようなサッカーは印象深いね。

はんぺん:せやな。過密日程で追加された5人交代とか飲水タイムとか、布陣変更を全体に伝えやすいレギュレーションをうまく活用してたわ。でも、その割にはなんかうまくかみ合ってない印象が強かったけどなぁ。

ちくわ:まあ、90分の中であれほど振れ幅が大きくなってしまうと、チームの規律を維持するのも難しくなる気がする。反動か、前期は形になってた自陣からのローテーションを使った崩しがあまり見られなくなった。

はんぺん:ローテーション、中盤のメンバーが変わると機能しなくなったなぁ。もう少し、チームとして共有できてるもんやと思ってたけど。

ちくわ:その辺りは、中断や過密日程の影響もあったかもね。新しいメンバーが入ったけど戦術をうまく熟成させる時間もなく、試合内容もピーキーだと、サイクルを回すのも難しかったと思う。

【第2章:挑戦!グッドスタッフ3バック】

はんぺん:ほんで次は「挑戦!グッドスタッフ3バック」とのことやけど。「グッドスタッフ」って、どういう意味なん?

ちくわ:「グッドスタッフ」ってのはカードゲーム用語で、まあ簡単に言うと単体でパワーが高いカードって意味だね(オタク特有の早口)。強いカードを揃えたデッキは強い、という理論のもとシナジーとかコンボとかじゃなくて

はんぺん:もういい分かった

ちくわ:……

はんぺん:要は、ヨングォン・昌子・三浦の日韓代表3バックのことやろ?いや~、かみ合わんかったなぁ、あの3バックは。

ちくわ:そうね。この3人になってから、最終ラインのビルドアップミスからの失点が目立ってた。ホームの浦和戦とか、FC東京戦とか……。「チャレンジする上で仕方ないミス」とも言えるけど、正直、次から次へと試合がやってくる今年のレギュレーションでは収支が合わなかったと思う。

はんぺん:降格がないシーズンだから、チャレンジに振り切ってしまうのも一つの手やったとは思うけど、このまま続けても上手くいかんと思ったのか、やっぱりそれでも勝つことが大事って考えたのか……。

ちくわ:そのあたりは、宮本監督のポリシーをもう少し掘る必要がありそうだね。結果的に、アウェイではロングボールを中心とした割り切った戦術に切り替えて勝ち点を拾っていくことができた。

【第3章:シンプルイズベター】

ちくわ:いずれにせよ、札幌戦から4バックに変更、そのゲームで三浦がハムストリングを痛めてしまって、グッドスタッフ3バックは続行不可能になった。ただ、3バックではなく4バックに変更した理由は、3バックがイケてなかったこと以上に、矢島の怪我を受けてスタメンに入った大卒ルーキー、山本悠樹にあったかもしれない。

はんぺん:ふむ。

ちくわ:山本をトップで初めて見た時は、オンザボールに強みがありそうなプレースタイルの割に球際が強くて驚いた記憶がある。ただ、矢島ほどうまくアンカーとして立ち回れてる感じはしなかった。特に柏戦、江坂にあっちこっち動かされて大変だったなぁ。

はんぺん:ルーキーに慣れないシステムをやらせるより、シンプルで馴染みのあるシステムを使ったほうが良いと。

◎ちくわ:そういう事かもね。4-4-2への変更自体は苦肉の策だったかもしれないけど、これをきっかけにポジティブな変化が色々起きる。

ちくわ:1つは2トップのプレッシング。特にパトリックは、後先考えない単騎プレッシングしかできなかった去年の彼とは見違えていた。埋めるべき場所を把握し、自分が前に出るときは後ろの確認と味方への声掛けを怠らず、時にサイドハーフの位置までプレスバックする献身的な姿勢も見せ、スタメンの座をガッチリ掴み取った。これは、コーチングスタッフの努力の成果と見ていいと思う。

はんぺん:パトはめっちゃ良くなったよなぁ。日本語の勉強もめっちゃしてるし、負けた後もSNSでポジティブコメントするし、今年で好感度爆上げやわ。笑

ちくわ:あとは井手口もね。インサイドハーフをやってた時はプレーエリアがピッチの片側に制限されてた感があったけど、2ボランチに変えてからはまさにボックス・トゥ・ボックスの権化で、ピッチのどこにでも顔を出す、鬼気迫るパフォーマンスだった。

はんぺん:月間MVPも取ったしな。もう海外行く前と遜色ないというか、「結果につながるズルさ」という意味では、海外行く前以上やな。

◎ちくわ:福田のサイドバック起用が当たったのもこの布陣変更からだね。これも、藤春の怪我というひょうたんから駒って感じだったけど。SBに置かれてから、SHやWBの時と比べると相手のマークが緩いとこから始められるのもあってか、彼のデュエル性能がより際立つようになった。

はんぺん:ヨングォンもバシバシ左に通すし、あれを見てまうと、藤春にももっと色々求めたくなるなぁ。あと、デュエルって話やったら、守備も良かったな。強力ウイングで鳴らしてる名古屋にぶつけてきたときはどうなるかと思ったけど、マテウス転ばして綺麗にボール奪ったのにはビビったわ。

はんぺん:にしても分からんのは、何でこんなポジティブな変化が起きたんか、ってことやなぁ。

◎ちくわ:理由はいろいろあると思うけど、自分の仮説は「やることがシンプルになって、考えることが少なくなった」からじゃないかな、と。

はんぺん:なるほど。

◎ちくわ:俗に言う「監督交代ブースト」なんてのも、同じ理屈で起きる現象だと思う。調子の悪いチームって、一般的には改善のために色々なことを色々な人が試す。それがかみ合わず、悪いスパイラルに入る……、と。でも、監督交代が起きると、時間的な制約もあって「とりあえずやらなきゃいけないことだけやろう」と、諸々がリセットされて、タスクが限定される。選手の頭がすっきりして、悩みながらプレーしている時よりアグレッシブになる、みたいな。

はんぺん:ガンバにとってのそれが、4-4-2への布陣変更やったと。

◎ちくわ:うん。ただ、普通はこういうのの効果ってすぐに切れちゃうはずなんだよな。「地が出る」から。ただ、今年はそうはならなかった。

はんぺん:何でなんやろな。結果が結果を呼ぶ、みたいな内的要因、あとは過密日程で相手のスカウティングがはまらなかった外的要因、とか?確かなことは分からんけど。

はんぺん:そういえばこの頃は、毎試合のように東口がビッグセーブしてた記憶があるな。笑

◎ちくわ:ああ、東口は凄かった。あとは、センターバックもね。もともと、CBの質には強みがあるスカッドだし。布陣がシンプルになったからこそ、センターラインの強さを押し付けることができて、まずそこで計算が立つ、ってのは大きかったと思う。

はんぺん:ここであえてタイトルに戻すけど、「シンプルイズベター」なんだよな。ベストじゃなくてベター

◎ちくわ:そう。結果は出てたけど、本来やりたかったであろうコンセプトからはどんどん離れていったという意味で、決してベストではなかったはず。だから、ベター。

【第4章:総力戦だョ!全員集合】

◎ちくわ:結果的に、12戦負けなしとなったわけだけど、それが途切れるきっかけとなった敗戦は非常にショッキングなものだった。

はんぺん:17戦勝ちなしの仙台相手に0-4のあれか。長沢にハットトリック決められて。笑

◎ちくわ:あの試合に関してはガンバ側がターンオーバーしてたってのもあるけど、さっきの話でいくと、「相手の仙台が逆にシンプルだった」って感じもしたな。

はんぺん:開幕ん時の4-3-3に戻してな。

◎ちくわ:続く浦和戦で逆転勝ちして連敗しなかったのは大きかった。けど、続く川崎戦でまた0-5の大敗。目の前で優勝を決められた。

はんぺん:思い出したくもないわ。笑

◎ちくわ:ここまで、アデミウソンの不祥事井手口小野瀬の怪我、と、立て続けに主力を失うイベントが起きたのが痛かった。アデミウソンの件は全くの想定外だったけど、ここにきて一気に過密日程の歪みが出てきた感じで、まあ、限界がきてたのかも。

はんぺん:井手口は結局最後まで戻って来んかったなぁ。

◎ちくわ:ただ、主力の離脱、というネガティブな話題とセットだったポジティブな話題が、若い力の台頭だね。特に、去年ユースから昇格した川﨑修平・塚元大・唐山翔自の3人はシーズン前半はU-23に名を連ねていたけど、そこで結果を出して卒業、トップチームでも出場機会を得るようになった。

はんぺん:あとは去年昇格の奥野もやな。神戸戦でいきなり先発起用されたときはビビったけど、ソツなくこなしてた。

◎ちくわ:ユース卒が一年目から出場機会を得ることって、最近はあんまりなかったからね。リーグ戦最終盤はほんとにしんどかったけど、彼らの力もあって何とか最後まで走り切ることができた。

はんぺん:アウェイの横浜FC戦や天皇杯の徳島戦なんかは、シンプルに守って相手の決定機を減らし、少ないチャンスをモノにする、って感じで、今期のガンバの集大成みたいな試合やったな。そのまま最後までやり切ってほしかったけど、天皇杯決勝では川崎に勝てず準優勝、と。

◎ちくわ:川崎とは今期3回戦ったけど、結局3敗。負け方も色々だけど、つまるところ、どの試合も今のスカッドとやり方の限界を突き付けられるような試合だった。

はんぺん:数字だけ見ればええとこまで来たけど、このままのやり方じゃタイトルは取れん、ってことなんやろなぁ。

◎ちくわ:そうだねぇ。


◎ちくわ:……さて、じゃ、前編はこのぐらいにしておこう。ここまで、2020年のガンバ、特にピッチ上に見えたものについて、大まかにトピックを洗ってきました。次回の後編は、そこから繋がるガンバの現在地と宮本監督の評価、そしてこれからのガンバについて話していきたいと思います。前編ではあえて全く触れなかったあの人の話もね。

▽はんぺん:あの人……?一体何藤何仁なんだ……?


(後編へ続く)

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