【15連戦】松波ガンバとは何だったのか【振り返り】

 みなさんこんにちは、ちくわ(@ckwisb)です!本noteをお読みいただき毎度ありがとうございます!

 まずは選手の皆さん、スタッフのみなさん、そしてサポーターの皆さん、15連戦(ACLも含めると21連戦)本当に本当にお疲れさまでした!

 いやー、もう2度とやりたくねえ。後半戦は選手の疲弊が画面越しにも伝わってきて本当に痛々しいほどでした。まだまだ試合は続きますがやっと一息つけますね。恐らく月・火曜とオフもらっておられると思うので、色々しんどい状況かと思いますがまずは英気を養ってこれからの戦いに備えていただければと思います!


15連戦をまとめてみた

 はい、いきなりですが今回の記事のメインディッシュです。15連戦の結果と出場記録を以下にまとめてみました。これをネタに色々書いていこうと思います。

20210907_ガンバ15連戦記録

 まずは出場時間に注目していきましょう。全選手で一番の出場時間だったのはやはり東口。天皇杯ではゴールマウスを石川に譲りましたが、リーグ戦、ルヴァンカップでは全試合フル出場。

 フィールドプレーヤーではCBからキャプテン三浦が出場時間トップの985分(以下、Jリーグ公式記録より。アディショナルタイムは考慮せず)。比較的運動量が多くなるCB以外のポジションではWB小野瀬の928分が最高。WB/SBのみならず、時にはインサイドハーフやシャドーなどマルチロールをこなせる彼だからこそ、ここまで出場時間を伸ばしたと言えそうです。MF部門ではACLで調子を取り戻した山本が最高の845分。次いでボランチを中心にシャドーやサイドハーフでも起用された倉田が838分。

 FW部門では宇佐美が789分でトップ。宇佐美は途中出場も含めると唯一の皆勤賞となっており、チームの中心だったことが伺えます。それもあり、フル出場はウェリントン・シウバが負傷離脱したマリノス戦の1試合のみ。かなり慎重に出場時間がコントロールされていたことが伺えます。


 ここまでさらっと書いてしまいましたがたった2か月足らずでこの数字ですからね……。つくづく大変だったと思います。



松波ガンバとは何だったのか~3つの論点から~

 さて、ここからはメインディッシュを使って松波ガンバとは何だったのか(まだ終わった訳ではないですが)を振り返っていきたいと思います。ACLの振り返り記事(下記参照)では「①序列の固定」「②戦い方の固定」「③怪我人の復帰」という松波ガンバの元で起こった3つの変化について着目しました。

 これが15連戦を経てどう着地していったのか。「序列」「戦い方」「メンバー」——ACLまとめ記事でも取り上げた、この3つの論点を踏まえて整理していきたいと思います。


序列:厳密な出場時間マネジメント

 15連戦の状況下では流石に「序列(≒誰がスタメンなのか)」を明白にするマネジメントは困難だったのか、「"主力クラス"グループの中から出場時間を考慮してスタメンを選ぶ」という傾向が見て取れました。

 この傾向がはっきり分かるのが途中交代の少ないCB。"主力クラス"グループ:三浦・昌子・ヨングォン・菅沼の4人から3人ないしは2人を選ぶローテーション。加えて「連戦は3回まで」というルールが厳密に守られていることが伺えます(例外は天皇杯の延長で出場した三浦のみ)。

 他のポジションでもほぼ同様の傾向です。相手チームの戦い方に合わせたスタメン選びではなく、各ポジションの"主力クラス"グループから使い減りを考慮してローテーションさせるという方針が明白でした。連続したスタメン出場を避け、出場時間は60分~70分と短く制限されるなど、徹底したマネジメントが行われていました。

 その中で言及しておきたいのが奥野。連戦の序盤はボランチの"主力クラス"として数えられていながら、控えの層が薄かったWB/SBでも起用されていました。出場時間こそ681分と山本・倉田には劣りますが、全試合にベンチ入りし、5人交代ながら控えは7人(うちフィールドプレーヤー6人)しか登録できない特異なJリーグのレギュレーションの中で発生する無理・余白を引き受けていたのが彼でした。

 この方針は、連戦において第一に避けたいのは「負傷離脱等によるチームの破綻リスク」であると考えれば、理解できるものです。

 一方で、こうした起用方針を取ったからこそ、スタメンが毎試合パズルのように入れ替わるため、チーム戦術やユニットの練度を高める作用は働きにくくなっていた、と思います。


戦い方:実らない"奇策"

 上述の通り、スタメンの入れ替わりによって練度を高める作用が働きにくかったであろう状況下で、戦い方についてもスケールダウンを余儀なくされていたことは否めないと思います。

 ACLのまとめ記事では松波ガンバの攻撃面の特徴を「クロスへの傾注」、と表現しました。同記事にて参照した「クロス」のデータに、ACL後のリーグ戦のデータも追記したものが下図。平均すると1試合当たりの成功数・試行数は連戦前のリーグ戦よりは改善しているものの、試合が進むにつれ試行数は減少傾向にありました。

20210907_ガンバクロス分析

(Sofascoreより引用)

 クロスからのゴールは連戦中のリーグ戦全12ゴール中5ゴールと、依然プライオリティは高い状況とみられますが、チームとしてどうクリーンにクロスを打てる状況を作るのかについては、なかなか光明が見えません。


 さらにこの連戦の中で目立っていたのは「"奇策(≒イレギュラーな戦術)"を採用した場合の勝率の低さ」です。連戦中、スタートで採用していたフォーメーションについても記録してみましたが、

 3-4-2-1採用 :6勝1分3敗
 それ以外    :1勝4敗(※1勝は天皇杯松本戦)

20210907_フォーメーションと結果のみ抜粋

 と、松波ガンバのベース戦術である3-4-2-1以外のオーガナイズで臨んだ場合、如実に勝率が落ちる結果となっています。

 これも、前述の"練度を高める作用が働きにくい状況"が関与していると思います。自分たちの戦い方にベースがあり、そこからの"応用"という形で展開できるならば、"奇策"で起こす変化を自分たちの有利になるようコントロールできると思うのですが、そうはなっていないので状況がカオスになり、「"奇策"によるプラスの作用をマイナスの作用が上回ってしまっていた」のではないでしょうか。


メンバー:出会いと別れ

 数少ない明るい話題が新戦力の台頭でした。

 1人目は奥野のコンバートが示すように苦しい台所事情が明らかだった右SB/WBとして加入した柳澤。シーズン当初から薄さがさけばれていたポジションでしたが、ようやく本職のサイドプレーヤーが来てくれました。守備面では線が太く当たり負けしない安定感があり、加入直後に負傷離脱した髙尾の穴をしっかり埋めてくれました。加えて天皇杯ではセットプレーから先制点、ルヴァンカップのアウェイ戦では絶妙なパスでアシストなどスコアポイントでも貢献。復帰した髙尾との切磋琢磨で更にチームのレベルを引き上げてほしいです。

 2人目は今夏から特別指定選手としてやってきた関西学院大学の山見。出場時間はのべ150分とまだ短いながらも、チームを救うゴールを2回も叩き込む活躍っぷり。清水戦のスーパーゴールは、ガンバサポーターのみならずJリーグファンたちの話題をかっさらいました。ゴール以外にも、前線からの精力的なチェイシングや執拗に裏を取りに行くスプリント、仕掛けてシュートを狙う思い切りの良さなど、既存メンバーにはなかったフレッシュさでチームを盛り立ててくれています。

(もう20,000回は観た)


 しかし出会いがあれば別れがあるのも世の常。今シーズン満を持してレンタルから復帰した一美は徳島ヴォルティスへ、ユース卒2年目の川﨑がポルトガルへと旅立ちました。

 一美は出場時間こそある程度得られていましたが結果が出ず、なかなか序列が上がっていかない状況に苦しんで環境を変えることを決断。

 川﨑は起用されるポジションが安定せず、先述した"主力クラス"のグループにも含めてもらえていなかった状況。ポルティモネンセは今までの日本に関連する選手の扱いからあまりいい声が聞かれないため、果たしてお互いにとっていい移籍になるかは不透明です。一方で、川﨑側の視点にたてばこのまま出場機会を得られずにシーズンが終わってしまいかねないことに焦りもあったと思います(恐らく今夏、クラブはJ2へのレンタルも視野に入れていたとは思いますが……)。2019シーズンにマンチェスターシティに旅立った食野のケースと同様、野心のある若手の扱いは悩ましいですね。


まとめ:限界は見えたが……

 さて、ここまで「序列」「戦い方」「メンバー」の3点で改めて松波ガンバの整理を試みてみました。

 正直に申し上げるならば、この15連戦で監督としての松波さんについては限界が見えてしまった、と思います。

 未曾有の連戦、加えてコロナの影響で普段通りのマネジメントができないなど色々とエクスキューズはありますが、この連戦に至るまでにチームの土台、方針を固める余地はあったと思います。昌子選手曰く、身体より脳がパンクするほどの連戦の中では、優先順位を示しやることをシンプルに整理することの要請が大きかったと思いますが、コメントやインタビューを読むにつけ、あくまで基本的なことに言及するのみで「選手の"自主性"を重視する」スタンスなのが松波監督だと思います。

 暫定監督からの正式就任という経緯から「厳しい規律を求めても選手がついてこない」と判断したのかもしれません。一方でそのスタンスが、連戦の疲労・ローテーション起用による練度醸成の難しさと相まって、最終的にはチームとしてのモラル崩壊に繋がっていたようにも思います。

("基本的なこと"と言えば聞こえのいいコメント)

(抜粋:リーグ戦ダービー後の落胆ツイート)

 加えて"奇策"がこれだけ当たっていないところを見ると、コンディションや彼我の力量の見極め、勝負師としての才覚についても突出したものがなかったと受け止めざるを得ません。

 ただ、そんなことは当たり前なんですよね。本来はやる予定がなかった監督業なわけですから。言うなれば今の状況は長い長い敗戦処理です。松波体制の問題点をあげつらっても仕方なくて、松波体制で走らなければならない状況が何故起こってしまったのかを考えなければいけないと思います。


 さて、宮本監督解任時に私は下記のような文章を書いています。

 有料記事なので詳細については割愛しますが、本論のまとめとして「①残留のための現実路線を選ぶのか」「②宮本監督が道半ばで果たせなかった攻撃的なサッカースタイルの立ち上げに再度挑むのか」をまずははっきりさせないと!と書いています(実際はもっと色々詳しく書いているので未読の人は是非)。

 翻って今のガンバの姿勢はどうかと問われれば、"問題の先送り状態"と言えるかなと。

 まあ先送りなのも理解できなくはないんですよね。今のチーム状況やコロナ禍の環境を踏まえても、今すぐ松波監督の首を切ってリクルートがうまくいくかどうかは未知数ですし。何とか我慢して、来シーズンに繋げる方が有利に交渉は進むと思います。もちろん、残留できる前提ですが。

 ただ、クラブとしてそれで良くても、選手にとっては「今」未来が見えてるかどうかの方が重要に思います。一美や川﨑の移籍でそれを否応なく突き付けられました。ガンバで「今」が見えないからこそ、出ていくときに「成長」とかいう言葉が出てきちゃう。

 ぶっちゃけサポーターなんて、多少いじめても結局はついてくるからいいんですよ。でも、選手にとって魅力的なプランを示せていないとするならそちらの方が致命的と思います。んで悲しいことに、こういう時は優秀な人から去っていくんですよね。できるだけ早く残留争いを抜け出して、選手に「未来」を示してほしいです。


 曲がりなりにもこの連戦で勝ち点30まで積み上げました。降格圏との勝ち点差は7、何とか息ができている状況です。残り11試合で4回勝てれば残留は固いはず。松波監督の求心力がどこまで残っているかは分かりませんが、ようやく週一でマッチ・トレーニング・マッチの文脈が作れるようになりました。このデスマを乗り越えたよしみで、何とか今期はJ1に食らいついていただきたいと思います!とにかく最後までがんばれみんなー!



ちくわ(@ckwisb

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