2022ガンバ大阪シーズンレビュー後編:未来を考える話
前編の続きだよ!
"前例のない監督選び"が何故行われたか?
◎ちくわ:さて……ここからは未来の、来期の話をしていこう。
△はんぺん:今期徳島で監督を務めたポヤトス監督の就任が決まったな。意外も意外やったわ。
◎ちくわ:そうだね、"スペイン人監督"、"J1での成功経験なし"、と、今までのガンバではありえなさそうな基準で監督選定が行われていそうなのは気になるね。
△はんぺん:ぱっと見ボールを大事にする路線への回帰で、失敗をもう一度繰り返すことになりそうな気がせんでもないが、大丈夫なんか?
◎ちくわ:確かにそれは気になる……ただ、同じことを繰り返すのか?という問いに対して答えるなら、今回の人事は片野坂監督が選定されたプロセスとは少し違うと思ってる。
△はんぺん:そのこころは?
◎ちくわ:ここでひとつの記事を引用したい。和田取締役が片野坂監督の解任にあたってメディアに語った言葉。
△はんぺん:この記事は覚えとるわ。そんなことも話してなかったんかい!って、サポーターから袋叩きにあってたな。
◎ちくわ:これを言葉通りにとらえるならその通りだと思う。でも、思い出してほしいのは、片野坂監督にはかなり早い段階からアプローチをかけていたはずなんだよね。
◎ちくわ:大分が天皇杯決勝まで残っていたとはいえ、これほど早々に候補を一本化したなら、意見交換するだけの時間は十分にあったはず。
△はんぺん:和田さんはじめ、現強化部がサボったのでは?
◎ちくわ:当然そういう解釈もできるけど、和田さんも別に強化のルーキーってわけじゃないから、その作業が重要なのであれば、やらないリスクを理解しているはずなんだよね……。その前提で、意見交換を「しなかった」のではなく「できなかった」とするなら、和田さんの言葉の意味が変わってくる。つまり、片野坂監督の招聘を推進したのは……
△はんぺん:……。
◎ちくわ:そうなると、突然の松田コーチ参画、過去と比べていくつもターニングポイントを過ぎたギリギリのタイミングでの解任など、不可解なマネジメントにも合点がいく。
△はんぺん:選んだ片野坂監督をできるだけ引っ張りたかった"上"と、見切りを付けて次にいきたかった強化サイド……という構図だな。
◎ちくわ:あくまで状況証拠を踏まえた推論でしかないから、実際どうかは分からないけどね。ただ、次期監督がおよそ今までのガンバではありえない選定基準によって選ばれている……という点から考えると、やはり意思決定のプロセスに何らかの変化があったと考えるのが自然だと思う。
△はんぺん:なるほど。もしそうだとしたら、それに巻き込まれた片野坂監督も不憫やな。
◎ちくわ:本当にね……。同じガンバの中でこういう"綱引き"が発生しているとするなら、クラブとして同じ方向を向けていなかったということにもなるのでやはりよろしくない。「失敗」に限りなく近づいた今回の経験によって、いい方向に組織が変わってくれているといいんだけどね。
△はんぺん:これからのオフシーズンの動きにも注目やな。
何故ポヤトス監督なのか?
◎ちくわ:ポヤトス監督自身の話をすると、注目したいのは「育成畑の出身である」というところだね。エスパニョール、レアル・マドリーなど、錚々たるクラブの下部組織を歴任している。同じ"スペイン人の監督"で、"Jでの監督経験"があって、"現在フリー"という条件だと、ロティーナ氏やリカルド・ロドリゲス氏などの線もあったと思うけど、そこにいかなかったとするなら、育成での経験を重視した、という観点もありそう。
△はんぺん:「目指すサッカー」とやらを実現するにあたって、選手を育てることに重きを置いていく、ということなのかもしれんな。前編でも触れたように、「できることを広げる」ために、「個人のレベルを上げる」といったチャレンジに踏み込まなければいけないわけだから。
◎ちくわ:いずれにせよ、和田さん自身がこれまでの反省点として挙げている通り、監督に丸投げするのではなく、クラブとしてビジョンを描けているかどうかが大事になると思う。
来シーズンの編成についてあれこれ
△はんぺん:さて、そうすると来期の編成も気になるな。
◎ちくわ:現在の状況を以下の画像でまとめてみた(※12/20時点)。
◎ちくわ:一つ目の大きなトピックは「外国人選手の契約満了」。長年活躍してくれたパトリック(→京都)をはじめ、レアンドロ・ペレイラ、ウェリントン・シウバの3人が満了。ダワンはどうやら残留が濃厚らしいが、6人中3人が入れ替わることになる。
△はんぺん:驚いたのはパトリックの満了だな。チームのトップスコアラーでもあったし、磐田戦での劇的ゴールなど残留に向けて大きく貢献してくれた功労者。確かに近年はパフォーマンスが安定しない時期もあったが、絶対的な空中戦の強さという尖った武器があるから残しておく選択肢もあると思っていた。
◎ちくわ:彼の存在に引っ張られたゲームプランが作られる部分もあったから、満了からはチームの不退転の意思を感じる。一方で、広島から完全移籍で獲得した際にかなり給料も上がっているはずだから、2年前のACLを想定して膨らんでいた外国人選手にかかっていた費用を一気に圧縮したい狙いもあるのかもしれない。
△はんぺん:なるほど。普通に考えれば空いてる外国人枠でセンターフォワードを補強するのが自然だが、そもそも過去2年の編成が上振れと考えれば、同等の人件費水準が維持されると期待しないほうがいい、という考え方もあるワケか。
◎ちくわ:さすがに外国人枠を余らせることはないと思うけどね。ACLがない年でもそこは埋めてきてる訳だし。ここは大型補強を期待しながら待ちましょう。
△はんぺん:とか書いてたら面白ニュースが舞い込んできた。
◎ちくわ:様子を見てみようじゃないか。
△はんぺん:功労者の放出という観点では、小野瀬の満了は驚きだった。
◎ちくわ:小野瀬についてはこれまでの活躍を考えても残すものと思っていた。外国人と比べると給与の節約効果もそこまでは見込めないと思うし、そう考えるとポヤトス新監督の意向が働いている部分でもあるのかなと。小野瀬に代わって新しく補強された杉山は左利きのドリブラー。左で作って右のアイソレーションを活かして刺す、トラディショナルなイメージの4-3-3になりそう。小野瀬は素晴らしい選手だけど、仕掛けるというよりはサポートを使いながら突破したりクロスを蹴ったり、大外で使うには少しもったいない選手だと思う。でもそれだけでわざわざ使わないってことはないだろうから、「契約の切れ目」ってのもあったんだろうなぁ。
△はんぺん:左利きのという観点なら、中村仁郎も輝くかもしれない。
◎ちくわ:仁郎ちゃん活躍したら速攻で海外だよ
△はんぺん:ぴえん
◎ちくわ:そして昌子も鹿島へ移籍。ここは夏から移籍が取り沙汰されていたけど、結局冬に移籍となった。
△はんぺん:移籍金も払ってもらったみたいだけど、ガンバもどうしても慰留!とならなかったのは編成の部分も影響していたんだろうな。
◎ちくわ:来期4バック志向なら三浦・昌子・ギョンウォンと代表クラスを3人抱えておくのは少しオーバーだしね。佐藤の復帰、若手有望株でSBも兼任できる江川にオファーを出したらしいあたり、監督の要望を尊重しつつもバランスの取れたスカッドにしていくつもりであることが伺える。
△はんぺん:あとは右SBにアンダー代表の半田陸の加入濃厚との報道。なんか最近有望株の争奪戦に割と勝ててるのはなんなんだ……そんな良いチーム状況でもなかろうに。
◎ちくわ:来てくれる選手は精一杯応援します!!!
◎ちくわ:とまぁ、こう見ていくと今冬はこれまでのガンバと比べるとかなり能動的に動いているような感じがする。基本的には「現状維持」+「抜けたところの穴埋め」がオフシーズンのガンバの基本姿勢だったから、先んじて契約満了、放出をリリースする姿はなんだか新鮮だ。
△はんぺん:ポジティブに考えれば、前年の反省を生かして監督の意向を受けた編成を早めに進めているとも言えるし、ネガティブに考えれば、これまでのようにスカッドの維持から話を始められるほど余裕がなくなっているとか、給与ベースを下げないとクラブが維持できないという捉え方もできる。
◎ちくわ:どちらにせよ変革が必要な状況なのには変わりないだろう。来期は降格が1チームしかないことも正式に発表されたし、このチャンスを活かしてチームを生まれ変わらせてほしいね。
△はんぺん:来期こそ……いや、ぜいたくは言うまい。再来期こそタイトル争いがしたい!
ちくわ(@ckwisb)
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