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「花火とアイスと秋の空」
にゃんくしーさんの企画「【ネコミミ花火】俳句・短歌&ストーリー募集」の参加ストーリーです。
ヘッダー画像はスズムラさん作です。
「花火とアイスと秋の空」
どぉぉ~ーー…ん………。
ひときわ盛大に音を響かせて、最後の花火が散っていく。パラパラと音がする中で、周りの人たちは家族で笑い合ったり、腕をくんで良い雰囲気になったりしてるカップルたちがいたり、とにかく幸せそうな騒ぎになっている。そんな中、私は一人ポツンと空を見上げながら突っ立っていた。
(結局、一人で終わっちゃったなぁ…)
そりゃ、当たり前だ。誰も誘ってないし、友達グループの誘いは断ってしまった。でも、グループで彼氏なしは私だけなのだ。行けるわけないでしょ、気まずすぎるわ…。
(だからって、こうして一人、花火見てるってメッチャ寂しいやつだなぁ、私。…あぁ、家でテレビでも見てりゃよかったかも。)
なんにしても、このままここで突っ立ってたってしょうがない。もう、帰ろう。さっさと。
「あれ? ナツさん?」
帰ることに決め振り返ると、視界の端から声をかけられた。あれはたしか、フユさんだ。本名は知らない。一番の友達のハルの彼氏だ。何度か話をしたことがある…もちろん、ハルも一緒に。
「あぁ、こんばんは、フユさん。…あれ? ハルたちは?」
フユさんの周りには誰もいない。てっきりグループで見に来たんだと思ったんだけど…。
「ハルはねぇ、バイトだって。何も今日とかなぁって感じだけど、なんか店長に頼み込まれて断れなかったらしいよ。…っていうか、なに? 一人? はぐれたの? 迷子?」
「一人ですよ、どうせ。何ですか、そのニヤニヤ顔。…あれ? フユさんだって、じゃあ、一人で来たんですか?」
「まぁねえ。せっかくのネコミミ花火の日なんだからさ、ハルが来れないからって家にじっと籠ってるわけにもいかんのですよ。」
ふーん、私は家にいた方がマシだったって思ってたところですよ。
「まぁいいや。ねえ、もう帰るんでしょ? 送ってくよ?」
「あー、大丈夫ですよ。ちょっとコンビニとかも寄ってくつもりだし。」
「そう? それじゃ、気をつけてね~。」
またね!と言って、フユさんは帰っていきました。あのねー、フユさん。そういうの、ハルさんに悪いと思わないかね?
本当はそのまま帰るつもりだったんだけど、何となく、言い訳通りにコンビニに寄って、ちょっと高級なアイスなんかを買って帰った。エアコンの効いた部屋でアイスの蓋を開ける。
(でもまぁ、とりあえず言っておこうか。ありがとう、フユさん。)
来年も、ネコミミ花火は見に行こう。
アイスが美味しかったからだよ。
きっと他の方が書いてくる作品たちの主人公は、みんな恋人がいたりしてハッピーなネコミミ花火なんだろうなぁ…。ごめんよナツさん、と思いながら書きました。
でも最終的には、きっとこの主人公も彼女なりにハッピーな花火だったと思います。アイス美味しかったからね。
最後まで目を通して頂き、どうもありがとうございました。