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(詩)「不条理」

際限なき世界を恨んで
どうしようもないほどこの世の不条理に泣いた日がある

空を信じていたが雨は止まない
時を信じていたが針は止まない
町を信じていたが開発は止まない
お前を信じていたが涙は止まない

手は動いている
もう君を抱きしめることもないけれど
足は動いている
もう君の下へは行けないけれど
目は見ている
もう君を見ることはないけれど
耳は聞こえている
もう君の声は届かないけれど

憎めど憎めど
空は変わる、時は変わる、町は変わる、人は変わる
心だけが変わらないと気づいた時には
もう遅かった   

お前が全てを奪ったのか!

裏切り者は笑い転げている
見窄らしくて
裏切られた者は泣いてうずくまる
分からなくて 

裏切り憎悪哀し

一夜にして枯れた目と
乾いたシャツに
さらわれて
いつしか夢に堕ちる

カーテンから差し込む一寸の光に誘われて
窓を開ければ

変わらず鳥は鳴いている、太陽が東に昇っている、春風は抱いてくれている、自分は生きている

手で掴めよ
細く眩しい陽光を
足で立てよ
日々新しき芽が生まれる大地に
目を開けよ 
ほのかに揺れる草花に
耳を澄ませよ
必死に生きんとす虫の羽音を

際限なき世界の果てを探す旅を始める日がある
不条理に生かされる者たちと共に

*広瀬凌也

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