Serif 書体の種類と歴史
1つ前に続いて教科書的なやつ。あっちこっちに書いてあることなので価値はない。なんとなく書きたいから書く。
Serif 書体
ストロークの終わりに飾りみたいな線がついてるやつ。この飾りがセリフ。タイトル画像みたいなの。ついてないのが Sans-serif。Sans は without、〜がない、という意味。
Serif 書体は Old style、Transitional、Modern に分けて説明されていることが多い。主な違いは角度とコントラスト。英語の本だともっと細かい分類も見たことがあるけど(Georgia は Scotch Romanとか)、日本語の本だと大抵この3つ。何が原典なんだろう。
ここに並んでる順に古い(Old styleが一番古い)けど、今流通している書体は全部、「この時代の書体の特徴を意識して作った」というだけなので厳密に定義することに実用上の意味はあまりないと思う。デザインのボキャブラリーとして考える方が良い。
「ある時代の特定のマニュスクリプトを研究して再現しました」的なものから「Old styleっぽい骨格に幾何学的な肉付けをしてみた」的な創作料理もある。どれが良いというわけではない。使い道次第だ。
Old Style
15世紀から18世紀くらいの文字が原型。Garamond、Caslon あたりが有名。手書き文字の特徴を残している。太いところと細い所のコントラストが弱めなのと左に傾いたストロークが特徴。ペンを斜めにして書くとこういう線になる。小文字の上端(Lの上端など)も斜め。
Claude Garamond は16世紀のフランス人。今 Garamond という名前がついている書体は大体この Garamond さんが作った書体を元に再現したものだ。原典になる文字にも色々あったり、Garamond が作ったと思われていたものが実は違う人の字だったり、と色々な理由で様々なバリエーションがある。よく知らないけど。
今使われている文字、いわゆる Roman Type の原型を作ったのは15世紀の Nicolas Jenson だと言われている。Jenson の字を元にした書体にはCentaur がある。Bembo は15世紀の Aldus Manutius の文字を参照しているらしいので、この辺が一番古いデザインだと思う。
Transitional
18世紀のスタイルらしい。代表のJohn Baskervilleは18世紀のイギリス人。コントラスト強め。ストロークは水平。
他には Perpetua, Century Schoolbook など。Georgia、 Times New Romanなんかもこの仲間っぽい。Modernの特徴を持ったOld style、という感じで色々曖昧、いろんな人が言葉を濁すのがこのカテゴリーな気がする。
下は左からBaskerville、Georgia、Times New Roman、そして比較用に Garamond Premier Pro. Times New Roman は気持ち斜め。
Modern
18世紀から19世紀のスタイル。Didot や Bodoni など。Didot が代表すぎて Didone Typefaces とも呼ばれる。横線が細くコントラストが強い。セリフも細い水平線になり、Terminal (f や j などのセリフがない先端部分)が正円に近いなど幾何学的な装飾になっている。
もっと昔
上の3つは全部グーテンベルク以降のデザインが元になっている。文字の歴史はもっと古い。Wikimediaの画像を貼っておく
一番上はトラヤヌスの記念柱(Trajan's Column )の文字だから二世紀のものだ。現代使われている大文字に非常に近い。小文字はまだなかった。そのあといろんな形に崩れていって今の小文字の原型みたいなのが生まれてくる。Protogothic から Fraktur あたりがいわゆる Black Letter。グーテンベルグの時代この図だと Humanist より後になる。
骨格の話
余談。Old style、Transitional、Modern の分類は主にストロークの違いで語られているが、文字を見るときには骨格も重要だと思う。Didot と Bodoni を比べるとセリフなど細部の処理は似ているが、文字全体を見るとBodoniの方がずっと細い。こういう特徴は時代やカテゴリーを跨ってみられたりする。
特にSans-Serif はストロークであまり差がでないので骨格の形状が印象を決める度合いが大きい。Futuraを例にしてみると幾何学的な書体の代表でありながら Trajan に似たとても古典的なフォルムをしていることに気づく。骨格の話は面白いしあまりまとまった資料がない気がするのでまた書く。
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