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サッカー部は嫌いじゃなかった #5

 2時間の戦争が始まった。女子の方も懸念事項が多かったが、そちらは頼り甲斐のある女子2人の学級委員コンビがいたし、そもそも女子を心配する余裕などなかった。

 私は、埒が明かなそうであれば誰と班が同じになろうが、席が隣になろうが構わない。そう考えていた。

 サッカー部のやつらが全行程で固まってさえくれれば良かったのだが、彼らにはいかんせん無駄に社交性がある。クラスの多くの男子との行動を共にすることを望んでいた。漏れず私も誘われていた。「どこかでは隣になろう」と。いや、素直に誘われたことは嬉しかったんだけどさ。お前らでまとまっておけば楽なものを、、、とか考えてたのが正直なとこだよね。

 そして、旅館の部屋の割り振りも2人部屋が3つで3人部屋が4つで...とかもう割り振り方もっと無かったのかよってくらい中途半端だった。それにも振り回され、何も決まらずに1時間が経過した。

 皆、飽き飽きしている。サッカー部のやつらも含めて。いや、お前らのせいなんだって。お前らが折れてくれよ頼むから。それに、なんかサッカー部以外でも仲良い奴と一緒になれなくて不貞腐れてるやつとか出てきてるし。教室は混沌としていた。

 女子もなんか揉めてそうだった。もう、限界だった。私の表情はこの時、現実を受け止めて前を向いて進んでいく、志願兵のように凛としていただろう。学級委員一同はその時、覚悟を決めた。

 妥協。我、自己の希望を通さず、皆の希望のゆくままに。

 君たちは気がついていたのかな。気がついていたけど声をかけられなかったのか。それとも本当に純粋に思い通りになったとだけ思っていたのかな。真偽の程は定かではないが、最大限の努力をし尽くし、班決め論争に終止符が打たれた。

 サッカー部以外のやつらにも非はあった。けれどもあの時、私が頑なにサッカー部を恨んでいたのには、それ相応の理由がある。

 サッカー部のやつらはとにかく...
 「センス生き」なのよ。

#6(最終話)に続く。

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