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サッカー部は嫌いじゃなかった #6(最終話)

 センスだけで生きているように見えた。その運動神経にルックス、何を言っても何をやっても許されるそのキャラクター。だから、許せなかった。自分が卑屈なせいで、余計に君たちは輝いて見えた。

 浮ついた噂話の中心には常に君たちがいた。そのカリスマ性に何度も嫉妬した記憶がある。だから、自分はこいつらにないものを伸ばそうって思えた。

 ただ、こいつらのすごいところは、話題を持っていくカリスマ性を一人ひとりが持ち合わせていながらも、「こんな人になりたいな」という憧れは一切抱かせないところだ。

 あんな無責任な発言を連呼していたキャプテンについていきたくもないし、中3にもなって座る瞬間に椅子を下げるようなお調子者も御免だ。

 そして、何よりもあの集団行動癖が好きになれなかった。いつ、何をする時も、どこへいく時も、サッカー部のみんなはいつも一緒。それは、中学を卒業して10年近く経つ今も変わっていなさそう。

 ここで突然だが、サッカー部が集団でいてイラッとした瞬間ベスト3を発表する。

第3位:廊下を歩いている時に廊下を封鎖されてた時
第2位:自転車でありえんくらい横に広がっていた時
第1位:ベランダで部活着やシューズを皆が干してた時

 いかがだろうか。もはや身内にしか伝わらないランキングだが、分かる人は今頃このランキングを見てあの頃を思い出しているはずだ。そう信じている。

 あえてここで取り上げたいのは、第3位だ。これは割と日常茶飯事で起きていた。会議でもしてるならまだ百歩譲って許せるが、これの大半が悪ふざけや雑談なのよ。1箇所に多くのサッカー部員が集まるため、側から見たらバーゲンセールに群がる主婦のよう。基本、こちらから声をかけないと道開けてくれないし。コムドットかよ。

 コムドットみたいなものだな。結論が出た。
「サッカー部はコムドットのようだ。」

 カリスマ性や多様なキャラクター、人気を持つ一方。ナルシストな側面や、教室内でのワンマンプレーのせいで、私のようなアンチが一定数いる。

何の恨みもないのにコムドットに苦手意識があったが、これを書きながら中学のサッカー部に原因があったと判明した。多分、サッカー部の奴らはコムドット好きなんだろうなあ。(偏見)

 すげえ、イライラしてきた。あの時の感情を思い出したら腹立つことばっかりだな。

 けれど、私もやっぱり心の底から嫌いになれない。彼らの人間性やチームワークは真似できない。恨むと同時に、自分の不可能を可能にしている彼らに対しての憧れも同時に再認識した。

 まあ、トータルで言うと20:80くらいで嫌いですけどねいまだに。鼻につくし。キャプテンやってたあいつとか特にな。今度、成人式の夜話した時以来、めちゃくちゃ悪口ぶつけてやりたいから、覚悟しておけよ。実家の場所、意外と近いんだからなてめえ。

 これからもサッカー部アンチとして、対極にいることが、私にとっても楽しいし、僅か数名のつながりを持つサッカー部のみんなにとっても面白いんじゃないかな。

 今、サッカー部のみんなと飲むとするならば、

 葛西にある、ありがいる並木道で、『よし、休も』って声かけて、美しい波の話を飽きるまで聞くことにしよう。

ー完ー

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