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ホラクラシーにおける「ロール」の概念を理解する【超初級編】

こんにちは!GMOタウンWiFiで組織改善に励むのんにゃんです。

この記事は、前回の記事の続きのようなかたちになりますので、ホラクラシーの全容がまだ曖昧な方は以下の記事からお読みください。


はじめに

ホラクラシーにおける「ロール」という概念は、ホラクラシーの中でも非常に大切であり、きちんと理解しておかなければ先に進むのが難しいと思います。

「ロール」は和訳すると「役割」なので一見あまり難しくなく、すぐに理解できたような気がするかもしれませんが、「職種」の枠組みとの違いをパッと答えられるでしょうか?

例えば、人事という職種があると思いますが、それをロールにすると「採用」や「勤怠管理」などに分かれるんでしょ!と思われる方もいるかもしれませんが、ひとえにそうとも限りません。「人事」というロールが作られることもあるのです。その理由はこちらの記事で概ね理解していただけるのではないかと思います。

ここでは、ロールの概念について説明することにし、具体的にロールが負う責任等については触れません。それくらい、概念の理解が必要不可欠だからです。

それでは、超初級編としてロールの概念についての説明を始めます!

1. 企業に必要なすべての役割を定義したものが「ロール」

ホラクラシーでは基本的に円で表されることが多いのですが、ここではあえて四角で表現したいと思います。

以下のように、企業が未来に向かって前進していくために必要な仕事を余すことなく定義していき、出来上がるのが「ロール」です。なるべく小さい粒度まで考えていくと抜け漏れが防げると思います(例:人事>採用>採用フロー…など)。

細かくなりすぎてしまった場合には、同一の目的を保有するロール同士を会社の人数を鑑みてくっつけてしまっても良いと思います。

どういうことかというと、「採用フローを考える」「面接する」「Wantedlyを運用する」といったロールがあるが、それらを全て同じ人が担当する場合は3つをまとめて「採用」というロールにしてしまっても良いということです。

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「いや、じゃあ初めから全部まとめて人事でええやん!」となってしまうかもしれませんが、その職種の枠組みはなんとなく蔓延している曖昧なものだと思います。人事に労務を含めるところもありますし、労務はバックオフィスが受け持つところもあります。

このように、我々の認識には齟齬があることが多く、そのせいで仕事を押し付けられたような気持ちになってしまったり、「どうして〇〇さんは、あの仕事をやらないの?」と思われてしまうことがあると思います。

ここでちょっと野球に例えたいと思います。

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本来の守備範囲はそれぞれ重なりがありますが、ホラクラシーの場合は重なるところがありません。むしろ境界線をハッキリさせるのです。

上記の図のように、それぞれの守備範囲が明確になっていれば、微妙なところにボールが飛んできた時もどっちのボールか迷うことがありません。境界線内の人が責任と自信を持ってそのボールを拾いにいくことができますし、周りのメンバーも自分が拾いにいくべきか迷う必要がありません。ピッチャーに、「レフトフライも取ってくれよ〜」と不満を募らすこともあり得ません。

もし空きのあるところにボールが落ちてしまうことがあれば、そこに新たなロールを作ったり(野球のようにポジションの制限はありません)、自分のポジションが取りに行くのが妥当だと思えば範囲を拡張すれば解決できるのです。

また、グラウンド整備やスコアラーも大切な仕事であることを忘れてはいけません。なんとなく新人がやるべき、という主観的な暗黙の慣習は排除しましょう。

ある程度ロールとして区切ることができたら、そこからさらに定義していきます。

2. ロールには「目的・領域・責務」が必須!

すべてのロールには、目的・領域・責務の少なくとも一つ以上が必ず定義される必要があります。なるべくすべて定義した方が境界線がよりはっきりすると思います。それぞれの定義は以下です。

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例えば、弊社にある「福利厚生の企画・浸透ロール」を見てみましょう。

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元々は「福利厚生」というロールだったのですが、バックオフィスに社労士さんとやりとりをしている人がおり、誰がどこまでやるべきなのか不明瞭だったため、このようなロールに変更しました。

また、ロールの名前に関しては特に定義はないので、説明的でわかりやすいものであればなんでも構いません。

きちんと定義することで、誰かに何かをお願いする時に変な気遣いをする必要もなく、誰かにお願いをされた時も「仕事が増えた」なんて嫌な気持ちを抱くことなく、自分の仕事で間違いないと納得できると思います。

さて、また野球に例えましょう。

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例えば、ピッチャーロールは「投球」という領域を持っています。つまり、投球する権限があるのは、ピッチャーロールだけということです。なので、例えばファーストの人が突然投球をし始めたらどんな気持ちでしょうか?また、ピッチャーロールは自分一人だけなのに、他の人が投球の練習をしているのを見かけたらどうでしょうか?

野球で例えると笑えますが、実際の仕事に置き換えて考えてみてください。自分の仕事だと思っていたことを他の人が得意気にやっていたり、関係のない人にやたらと口出しをされたり、、、意外とあることだと思いませんか?

これらの定義が曖昧なせいで、人間関係がギクシャクしたり、職場に慣れること自体が大変だったり、人間関係をうまくやり過ごせる人だけが有利なように感じてしまったりすると思います。

しかし、ホラクラシーであれば、巷で叫ばれ続けてきている処世術としての「コミュニケーション能力」なんてものもある意味でもはや有利な能力ではなくなるかもしれません。

3. SoulとRoleを分離して、人に暗黙の期待を抱かない

ホラクラシーには、人とロールを分離するという大切な考え方があります。「〇〇さんはあれもこれもやってくれて仕事ができる」とか、「△△さんは気が利かない」とか、そういった思考はホラクラシーには存在しません。なぜかというと、会社には目的・領域・責務が定義されたロールがあるだけで、そのロールを担当している誰かしらがいるに過ぎないからです。

一人の人間として見てしまうと、そこには「暗黙の期待」が生まれてしまいます。暗黙の期待とはどんなものかというと「〇〇さんならもっとやってくれると思ってた」とか、「この仕事は△△さんがやるべきだ」など、人に依存した結果に生まれてしまう明文化されていない期待です。

ホラクラシーは非常にシンプルで、そのような期待するのであれば該当のロールの目的・領域・責務のいずれかに明記すればいいだけなのです。よく考えたら人への期待なんてただのエゴの塊だと思いませんか?

野球に例えると、「四番ピッチャーエースの〇〇君」は存在しない、ということになります。

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ピッチャーロールと4番バッターロールがチームには必要で、それぞれをたまたま同じAさんが担っているだけなのです。たしかにAさんはすごいかもしれません。誰よりも速い投球ができて、誰よりも強打を放つことができる。素晴らしいことです。だからといって、明記されていること以上に期待を抱いたところで、Aさんに同じ認識がなければ期待通りの結果になることはないですし、期待通りにならなかった場合に勝手にガッカリしてしまうなんてもってのほかです。

おわりに

ロールの概念について、ご理解いただけたでしょうか?

最後に冒頭で触れた「人事」というロールが作れる理由について改めてご説明したいと思います。

「人事」という名前はただのラベルに過ぎないので、その中身、つまり、目的・領域・責務がきちんと明確に言語化されているのであれば、「人事」という名前を持つロールを作っても問題ないのです。

間違えないでいただきたいのは、この「人事」は、私たちがこれまで出会ってきた「人事」の枠組みではないということです。人事といえば、採用や労務や評価制度を作ったりする人、という認識を持っている人が多いと思いますが、ホラクラシーで定義される「人事」はそれとは大きく異なることになるでしょう。

まとめると、ロールとは、企業が前進するために必要不可欠な仕事の数々を明示的に定義したものである。会社の規模により粒度は異なるが、それぞれがどこに向かって何をしていくのかが明確になっており、企業のパートナー(社員)はそれらのいずれかを担っていく、ということなのです。

それでは!また次の記事でお会いしましょう。

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