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最強のバディを探せ! ハイロー、あな番、メサイア…今回はバディものを深掘りします!

テレビブロス本誌でも活躍中の、エンタメ業界に詳しいライターの吉田可奈氏、横川良明氏に、注目のコンテンツや昨今のイケメン事情を語り尽くしていただくこの企画、前回、前々回とタイのBLや俳優たちのヒゲ事情、ネクストブレイクなどを語りまくりました。その記事は大変ご好評をいただいたので、タイトルつけてカムバック〜! 今回はどんな話題が飛び出すのでしょう?

<過去記事はこちらから!>

文/横川良明

よしだ・かな●エンタメ系フリーライター。著者本『うちの子、へん?』『シングルマザー、家を買う』(ともに扶桑社)が発売中。音楽、映画、声優、舞台、アイドル、オタク事が得意。
よこがわ・よしあき●演劇とテレビドラマを得意とするライター。初のインタビュー本『役者たちの現在地』(KADOKAWA)が発売中! 電子書籍『俳優の原点』(ライブドアニュース編集部)も発売中。

ーー前回、前々回は吉田さんにお題を発信してもらったので、今回は横川さん、お願いいたします!(ちなみに今回も、文中に出てくる人物名は親しみと敬意を込めて敬称略で表記させていただきます)

横川良明 今日は“バディもの”の魅力についてプレゼンしたいと思います。

――旬な響きです! ドラマの世界でも、今期は『SUITS/スーツ2』(フジテレビ系)、『MIU404』(TBS系)、『未満警察 ミッドナイトランナー』(日本テレビ系)と男性同士のバディもの作品が多いですよね。

横川 そうなんです。他にも蓋を開けてみれば『BG~身辺警護人~』(テレビ朝日系)も木村拓哉と斎藤工のバディものですし、『竜の道 二つの顔の復讐者』(フジテレビ系)も玉木宏の主演ですが、内容は双子の兄弟を演じる高橋一生とのバディものです。

吉田可奈 そっか。でも正直、私、あんまり刑事ドラマとか通ってこなかったから、バディものと言われてもあんまりピンと来ないかも……。

ーー『相棒』(テレビ朝日系)とか、古くは『あぶない刑事』(日本テレビ系)とかね。そういうイメージが強い人も多いかもしれないです。

横川 と思うじゃないですか? でもバディものって刑事ドラマに限らないんです(編集部注:定義には諸説あると思いますが今回はこういう解釈で進めます)。僕のバディものの源流と言えば、1996年に放送されたKinKi Kids主演の『若葉のころ』(TBS系)です。

吉田 なつかしい!

横川 というか、KinKi Kidsってそのすごさが浸透しすぎてみんな当たり前のように受け入れているんですけど、バディとして見たときに最強なんですよね。堂本という同じ苗字の男の子がふたり、同世代で、同じ関西圏でジャニーズに入所してきた。こんな奇跡、考えられますか? しかもザ・少女漫画顔の光ちゃん(堂本光一)と、ザ・少年漫画顔の(堂本)剛という対照的な顔の組み合わせも至高……!

――確かに。

吉田 KinKi Kidsって、『若葉のころ』以外にも何作か一緒にドラマをやってなかったっけ?

横川 そうですね。まずは1994年の『人間・失格〜たとえばぼくが死んだら』(TBS系)でクラスメイトを演じ、プールサイドのキスシーンで話題を集めました。

吉田 あれはすごかった……。

横川 また、『若葉のころ』から1年後、『ぼくらの勇気 未満都市』(日本テレビ系)でもW主演を務めています。その中でも僕はあえて『若葉のころ』を推したいわけですよ!

――よし、その理由を聞きましょう!

横川 『若葉のころ』は酒浸りの父を持つ貧しい家庭の剛と、医師家系に生まれた裕福な光ちゃんが主人公。貧乏少年とお金持ちというこの対比がまずいいんです。しかも、そんな正反対のふたりの絆にヒロインの奥菜恵をめぐってヒビが入るというストーリー展開がこれまた至高……!

――要は、正反対のふたりというのがバディものの条件なんですね。

横川 まさにそうです。そこで言うと、もうひとつバディものの古典的名作として挙げたいのが、『ビーチボーイズ』(フジテレビ系)!

吉田 好きー!!!

横川 ですよねー!!! 野性的な反町隆史と都会的な竹野内豊という組み合わせは今もって塗り替えることのできないオールタイムベスト。まさに伝説のバディですよね。

――そう言われてみると、バディものっていろいろありそうですよね。

吉田 うん。映画『探偵はBARにいる』の大泉洋と松田龍平とか。

横川 松田龍平は『まほろ駅前多田便利軒』シリーズで瑛太ともバディを組んでいますよね。他にも『東京DOGS』(フジテレビ系)の小栗旬と水嶋ヒロ、『ウロボロス~この愛こそ、正義。』(TBS系)の生田斗真と小栗旬なんかもバディものと言えます。

――あとは『臨床犯罪学者 火村英生の推理』(日本テレビ系)の斎藤工と窪田正孝とか、『シャーロック』(フジテレビ系)のディーン・フジオカと岩田剛典とか! 10月30日公開予定の映画『さんかく窓の外側は夜』の岡田将生と志尊淳も話題を呼んでいますよね。

横川 他にも『あなたの番です』(日本テレビ系)は-反撃編-に入ってから横浜流星が加入。主人公である田中圭とバディを組みました。前半はやや視聴率の面で苦しんだのですが、後半になって一気に盛り返した要因のひとつに、田中圭と横浜流星のバディの相性の良さが人気を呼んだと言われています。

――田中圭はバディものが多いですよね。『らせんの迷宮~DNA科学捜査~』(テレビ東京系)では安田顕とバディを組んで、9月からスタートの『キワドい2人-K2- 池袋署刑事課神崎・黒木』(TBS系)では山田涼介とバディに。

横川 これは持論ですが、田中圭の顔っていい意味であっさりとしていてクセがない。だから、どんな人とも合わせやすいんです。それこそ、『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)で林遣都とあれだけ相性が良かったのは、あっさり顔の田中圭とクセの強い西洋顔の林遣都の組み合わせが抜群だったのもあると思います。

――なるほど。いいバディの条件に、顔の違いがあるんですね。

横川 それこそ僕が理想としているバディのひとつが『WATER BOYS』(フジテレビ系)の山田孝之と森山未來。非常に濃い顔の山田孝之と、非常に薄い顔の森山未來。この相性の良さと言ったら……ちょっと語ってもいいですか!?

吉田 どうぞどうぞ!

横川 この『WATER BOYS』というのが、男子シンクロに憧れて水泳部に入部した山田孝之演じる進藤勘九郎がクジでリーダーを任されるものの、外部の反対により水泳部でのシンクロ公演そのものが中止になってしまうんですね。で、気の弱い勘九郎はすっかりシンクロ公演を諦めてしまうんですけど、そこに現れたのが森山未來演じる転校生の立松憲男。シンクロがやりたくて、わざわざ転校してきたお調子者の立松はなんとか勘九郎を懐柔してシンクロ公演を強行しようとするんですけど、いろいろ揉めちゃってふたりは仲違いし、結局シンクロ公演も中止になってしまうわけです(以上、ここまでオタク特有の早口)

一同 はい。

横川 で、勘九郎はシンクロを吹っ切るべく受験勉強に励むんですけど、やっぱりシンクロのことが忘れられなくて、放課後、誰もいないプールに服を着たまま(重要)飛び込むんです。そしたら、振り返るとそこに立松がいて……という。

吉田 何それ。全オタクが好きなやつ!!

横川 そう! ずっと立松はプールで待ってたんですよ! そんな立松に進藤が「中止が決まったんだから誰も来るわけねえだろ」と言うんですけど、それに立松がこう答えるんです。「進藤ちゃんが来てくれたじゃないの!」と。

ふたり きゃあああああ!!!!!

横川 で、服を着たまま(重要)ふたりがプールでわちゃわちゃするっていう。これが第1話のラストシーンです。

――1話? この濃さでまだ1話なんですか?

横川 神がかってますよね……。リアルタイム時、僕、このラストシーンだけで軽く10回は見返しました。しかも恐ろしいことに、このふたりには後日談があるんです。

――後日談?

横川 放送終了から9年後。雑誌『BARFOUT!』vol.202で山田孝之と森山未來が対談をしているんです。そこで当時、ふたりの間はぎくしゃくしていたということが語られていて。マイペースな山田孝之とリーダーシップの強い森山未來。多感な時期にそんな水と油のふたりがぶっこまれてうまくいくはずがないんですけど、そういったことも含めて大人になってなつかしく語っているふたりを見て、このふたりに青春を懸けてきて良かった……!!と強く噛みしめました(涙目)。

――わかる。なんかわかるよ……(と、ハンカチを差し出す)。

横川 これに近い話でもうひとつ紹介したいのが、1994年の『若者のすべて』(フジテレビ系)。ちょっと再び語ってもいいですか??

――もちろん! どうぞどうぞ!

横川 ここでバディとなるのが、萩原聖人と木村拓哉です。親しみやすい庶民的な雰囲気の萩原聖人と、絶対的な美のオーラを放つ木村拓哉という対比ももちろん良いのですが、このドラマの真骨頂はラストシーン。井ノ原快彦演じるヤンキーに刺されたふたりは、瀕死の重傷を負いながら、ひとつのライターにふたりでタバコをつけるんです。こんなカッコいいラストシーンないですよ!?(以上、やはりオタク特有の早口)

――小学生でしたけど、うわーかっこいいと思いながら観たことを覚えています。

横川 僕もそれを観て、小学生ながらふたりを永遠のバディとして胸に焼きつけたわけですが、時が流れて2012年、木村拓哉が『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)で萩原聖人のことが得意じゃなかったと告白したんです。

吉田 えー!!

横川 そのときの木村拓哉の話によると、撮影当時、萩原聖人からアイドル扱いされていたことが引っかかっていたみたいで……。これについては、2019年にオンエアされた『ダウンタウンなう』 (フジテレビ系)で萩原聖人本人も「俳優は俺だけっす。あとはタレントっす」というようなことを言ったと認めるような発言をしています。まだふたりとも20代前半でギラギラしていた時期ですし。そういう舞台裏もあったんだなというのは、今聞くと感慨深いものがありますね。

――しかもこのふたりは2018年の『BG~身辺警護人~』(テレビ朝日系)で再共演していますよね。

横川 そうなんです。そんなふうにかつてのバディがまた別の作品で共演するというのも、バディものを楽しむポイントのひとつです。

吉田 バディものの楽しみがわかってきたぞ……。そこで言うと、私が好きなバディものは『昭和元禄落語心中』(NHK総合)の岡田将生と竜星涼だな〜! 私、竜星涼が大好きなんだけど、あれを観て竜星涼の可能性は無限大だと思ったよ。


――あの竜星涼はむちゃくちゃよかった! 岡田将生とは顔も性格も全然違っていて。でもふたりとも背が高いから並ぶとすごく綺麗だった……。

吉田 山崎育三郎も良かったね。山崎育三郎は今、『エール』(NHK総合)に出てるけど、この間の古川雄大との発声対決も面白かった〜! あのふたりの組み合わせも私は好き。舞台『ロミオ&ジュリエット』では2011年版で山崎育三郎がロミオを、2013年版以降は古川雄大がロミオをやっていて。他にも同じく舞台『モーツァルト!』のヴォルフガング・モーツァルトだったり、舞台『エリザベート』のトートだったり、同じ役をする機会も多い。ふたりともテレビの出世作が『下町ロケット』(TBS系)で事務所も一緒。そのあたりにもドラマティックなものを感じます。

――そういう俳優さんの歴史とか背景が見えるのっていいよね。私は『HiGH&LOW』(日本テレビ)はバディの宝庫な気がする!

吉田 わかる!

――私が推したいのは、コブラ(岩田剛典)と村山良樹(山田裕貴)です。村山は拳で勝ち上がった番長だから、基本的に鬼邪高校のメンバーには悩んだり迷ったりする姿を見せないんだけど、一度拳を交えて、しかも自分を負かしたコブラだけは別みたいで。で、コブラもそっけなさそうに見えて、ちゃんとアドバイスをしてあげたりして。『HiGH&LOW THE WORST』でもそういうシーンがあったんですけど、その関係性がいいなって。わーどうしよう、止まらない!

吉田 その気持ち、めっちゃ分かるよ。『HiGH&LOW』はキャラクターも多いし、自分にとって最高のバディを見つけるだけで、めちゃめちゃ楽しめそう。

――あと鉄板なのが、村山と轟洋介(前田公輝)のコンビ!

吉田 あのふたりの絆はたまらないね!

――今度は私が語るターンいきますね。

一同 どうぞどうぞ。

――この轟というのが鬼邪高に転校してきた全日の生徒で。転校早々、全日を制し、鬼邪高の番長である定時制の村山にタイマンを挑むんですけど負けちゃうんですね。村山に倒され、「なんでだよ……」と悔しがる轟。そのとき、村山が「拳が強いだけじゃダメなんだよ」ってデコピンをするんです。ここがポイント!!

横川 はい(と、メモをする)。

――そこから時が流れて、『HiGH&LOW THE MOVIE』。あの伝説のコンテナ街の戦いが描かれるわけですが、村山は仲間を危険にさらしてはいけないと鬼邪高に退学届を出して最終対決に乗り込もうとするんです。そこにやってきたのが、おなじみの鬼邪高のトラック! 加勢に来た轟が、俺たちを置いて勝手に行くんじゃねえよとばかりに、今度は村山にデコピンをし返すんです。

横川 うわあ……オタクたちの大好きな伏線回収だ……(震え)。

――しかもこのデコピンはアドリブらしいんです。ねえ、こんな最高のバディありますか???

横川 俳優オタクの好物・アドリブ! ま、参りました!!

――ちなみに轟は、映画『HiGH&LOW THE WORST』で(塩野瑛久演じる)小田島有剣というまた別軸での最高のバディを得るのですが、それはまたいつかの機会に……。私は村山と轟のことを思うと今でも胸が熱くなります……(涙)。

横川 (そっとハンカチを差し出して)いいですよね……。ではお返しに、僕もここで切り札を紹介します。

――切り札?

横川 みなさんは『メサイア』という舞台をご存じでしょうか?

吉田 め、めさいあ……(と、検索する)。

横川 これは高殿円の小説『メサイア 警備局特別公安五係』を原案としたメディアミックス作品で、舞台を軸に映画、連ドラと多彩な展開がされているわけですが、要は情報戦争が激化した架空の日本を舞台に、国家最高機密のスパイ組織“サクラ”の暗躍を描いたアクションサスペンスです。本編ではこのサクラを育成するための教育機関・チャーチと、そこに通うサクラ候補生たちの日々を描いているのですが、このサクラにはある掟があるんです。

吉田 掟……?

横川 サクラは戸籍も抹消された闇の存在で、家族はもちろん友人や恋人を持つこともできません。また、任務に失敗したサクラは救助を待つことも許されず、人知れず散っていくのがさだめ。ただし、たったひとりだけそんなサクラを助けられる存在がいるんです。それが、チャーチで共に過ごし、卒業を迎えた相棒。孤高のサクラにとってたったひとり心を許せる魂の片割れがその相棒であり、その相棒のことを“メサイア”=俺の救い人と呼ぶのです!

吉田 うわあああああ。何その設定!

――好き! 大好き! そういうの! 俺の救い人って!!!!!!

横川 で、『メサイア』では毎回いろんなメサイアの絆が描かれるわけなのですが、中でも僕のイチオシは海棠鋭利(松田凌)と御津見珀(小野健斗)。この珀というのが今までいろんな人とメサイアを組んでいるのですが、そのたびに相棒が死んでしまうジンクスを持った男で。一方、新たにメサイアとなった鋭利は何度も瀕死の危機に陥りながら九死に一生を得てきた不死身の男。絶対に相棒を死なせてしまう男と、絶対に死なない男がメサイアになるという最高のストーリーなんです!!!(息切れ)

――いい……めっちゃいい……。

吉田 どこ? どこに行けばそれは観られるの? 円盤は? 円盤はあるの??

横川 時系列としては映画『Messiah メサイア -漆黒ノ章-』が最初になるので、ぜひここからコンプリートしてください(中にはもう円盤が手に入らないものもあるんですけど、吉田さん、そこはオタクの人脈をフルに使って頑張って……)。

吉田 (うん…わかった……。オタクって脳内で会話しがちだよね……)。

――いやあ、いいですね、バディもの。私もそんなに興味ないかなと思っていたんだけど、話を聞いていたら好きだった作品がいっぱい出てきました。

吉田 うん。そして私は気づいたよ。横川さんがまだ知らない、バディものの極地があることを。

横川 な、なんですか、それは……!?

吉田 究極のバディもの……それは、ジャニーズです!!

横川 ジャ、ジャニーズ!!!!(ということで、後編に続きます)

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