『ランボー ラスト・ブラッド』『SKIN/スキン』映画星取りコーナー再始動!【6月号映画コラム④】
テレビブロス本誌で恒例だった「映画星取りコーナー」が、劇場の復活とともに再始動! 週末の映画選びのお供に、今後ともよろしくお願いいたします。
(星の数は0~5で、☆☆☆☆☆~★★★★★で表記)
<今回の評者>
渡辺麻紀(映画ライター)
わたなべ・まき●大分県出身。映画ライター。雑誌やWEB、アプリ等でインタビューやレビューを掲載。押井守監督による『誰も語らなかったジブリを語ろう』『シネマの神は細部に宿る』『人生のツボ』等のインタビュー&執筆を担当した。
近況:自粛期間に20年ぶりの断捨離で凄まじいことに。まだ続いているのがこわい。
折田千鶴子(映画ライター)
おりた・ちづこ●栃木県生まれ。映画ライター、映画評論家。「TV Bros.」のほか、雑誌、ウェブ、映画パンフレットなどで映画レビュー、インタビュー記事、コラムを執筆。TV Bros.とは全くテイストの違う女性誌LEEのWeb版で「折田千鶴子のカルチャーナビ・アネックス」(https://lee.hpplus.jp/feature/193)を不定期連載中。
近況:他業種に漏れず仕事激減っす。試写もままならないながらリモート仕事への移行に自分自身興味津々状態です。
森直人(映画ライター)
もり・なおと●和歌山県生まれ。映画ライター、映画評論家。各種雑誌などで映画コラム、インタビュー記事を執筆。YouTubeチャンネルで配信中の、映画ファンと映画製作者による、映画ファンと映画製作者のための映画トーク番組『活弁シネマ倶楽部』ではMCを担当。
近況:映画館が動き出して嬉しい限り。7/3公開『カセットテープ・ダイアリーズ』のパンフにキーワード集を寄稿。
『ランボー ラスト・ブラッド』
監督/エイドリアン・グランバー 脚本/マシュー・シラルニック&シルベスター・スタローン 出演/シルベスター・スタローン パス・ベガ セルヒオ・ペリス=メンチェータ アドリアナ・バラーサ イヴェット・モンレアル スカル・ハエナダほか
(2019年/アメリカ・スペイン・ブルガリア合作/101分)
●ランボーは故郷のアメリカで古い友人のマリアと彼女の孫娘ガブリエラとともに平穏な暮らしを送っていたが、ベトナム戦争で負った心の傷は癒えず、自宅の地下壕にこもることもあった。そんな中、ガブリエラは実の父に会うためにメキシコに向かったきり、戻ってこなくなる。人身売買の被害に遭ったと直感したランボーは単身、彼女の救出に向かう。
6月26日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
©2019 RAMBO V PRODUCTIONS, INC.
配給:ギャガ
渡辺麻紀
男の生きざま その一
ずっと傭兵として各国の戦場で活躍していたランボー氏がプライベートな戦いに血を流す。記念すべき1作目もプライベート・ウォーだったから、最終章(らしい)で“初心に戻る”のは悪くない。でも、いいのはそこだけで、ランボー氏が抱える哀しみや痛みに共感するのは難しいし、肝心のアクションも残酷なだけで新鮮味もなければハラハラもない。スタイルは初心でもスピリットは使い古されてしまっている。ランボー氏の賞味期限は過ぎていたってことなのかも。
★☆☆☆☆
折田千鶴子
復讐心たぎる凄まじい暴力
タイトルからして“老体に鞭打ちランボーが大暴れ”という予想と期待に違わず、終盤は“復讐の総仕上げ”のごとき、大殺戮万博が華々しく開催! それを待ちわびていた人々は楽しめるハズ。その終盤ありきで積み上げられていく話(なぜか要塞のような謎の地下道を手掘りしたり、最初はマフィアに簡単にノックアウトされたり)に深みはないが、ソレで良しという思いも。特にエンドクレジットで若きランボーの姿が映し出されると、感無量の感慨を抱かせるから歴史って重い。
★★★☆☆
森直人
カルト化必至の怪作ゾーン
『最後の戦場』から11年後のランボーはラスト・カウボーイそのものになった。養子縁組した孫娘がメキシコの悪いヤツらに奪われて「俺は復讐したい」と断言する。ジョン・フォードの『捜索者』とイーストウッドの『許されざる者』を合体させて、エゲツない残酷描写を加えたハードコア(&ゴア)な西部劇。負の連鎖なんか知るか!とでもいった暗く壮絶な情念のたぎり。スタローンの顔が「時代おくれの男になりたい」と歌う河島英五に見えてきたよ。
★★★☆☆
『SKIN/スキン』
監督・脚本/ガイ・ナティーヴ 出演/ジェイミー・ベル ダニエル・マクドナルド ダニエル・ヘンシュオール ビル・キャンプほか
(2019年/アメリカ/118分)
●鍵十字のタトゥーを体に刻んだ差別主義者のブライオンは、シングルマザーの女性と出会ったことで自分の人生に迷いを感じ始める。白人至上主義のグループを抜けて彼女と平穏な暮らしを求めるが、元仲間からの脅迫が続いていた。そんな彼に反ヘイト団体の人物から転向の手助けの申し出があり、過去の自分と決別するため、タトゥーの除去手術に挑む。
6 ⽉26 ⽇(⾦)より新宿シネマカリテ、 ホワイト シネクイント、アップリンク吉祥寺ほかにて全国順次公開
© 2019 SF Film, LLC. All Rights Reserved.
配給:コピアポア・フィルム
渡辺麻紀
男の生きざま その二
全身タトゥで埋め尽くされたネオナチの青年がシングルマザーに出会ってフツーの人生を取り戻そうとするわけだが、彼の人生を激変させるきっかけになるシングルマザーの魅力や彼女との関係性が伝わってこない。映画がネオナチ青年にフォーカスし過ぎで、彼女やその子供たちにまで気が回らずイマイチ説得力に欠けているのだ。★ひとつはジェイミー・ベルのがんばりに。
★★★☆☆
折田千鶴子
普遍的?脱組織の七難八苦
ギャングか宗教団体か、みたいな結びつきや成り立ちの“レイシスト集団”の在り様、勧誘方法、吸い寄せられる恵まれない子供やその連鎖…。驚きつつ、知っていた感覚もありつつ…鑑賞に辛さは伴う。彼らの思想の“根”に対し腑に落ちない疑問や不可解が、問題の根深さそのものだろう。シングルマザーとの出会いで脱組織を決意した主人公の運命に目が逸らせないながら、心の変遷は少々弱い気も…。可愛かったベル君がゴリゴリゴッツイ男を熱演、成長や骨太な才には歓喜。
★★★★☆
森直人
ヘイト側の「痛み」を知る
「焼き尽くせ! 焼き尽くせ!」と盛り上がるネオナチ(白人至上主義)グループのもとで育ったスキンヘッズの主人公。これは根こそぎ染まった差別主義から「抜ける」ための悪戦苦闘を描くもの。ジェイミー・ベルの渾身の役作りは、類似のテーマを持つ『アメリカン・ヒストリーX』のエドワード・ノートンを彷彿させる。タトゥーで武装した強面の内にマザコンっぽい愛の飢えが見える辺りなど素晴らしい。Black Lives Matterの動きにひとつ重要な視座を補完する力作。
★★★★☆
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