見出し画像

『イルミナティ/世界を操る闇の秘密結社』『樹海村』映画星取り【2021年2月号映画コラム①】

今回の星取りは、その存在がありやなしやという題材の映画2本。秘密結社、呪い、タブー、都市伝説…いくつになっても気になるものです、よね?
(星の数は0~5で、☆☆☆☆☆~★★★★★で表記、0.5は「半」で表記)

<今回の評者>

柳下毅一郎(やなした・きいちろう)●映画評論家・特殊翻訳家。主な著書に、ジョン・スラデック『ロデリック』(河出書房新社)など。Webマガジン『皆殺し映画通信』は随時更新中。
近況:いろいろ大変です。
ミルクマン斉藤(みるくまん・さいとう)●京都市出身・大阪在住の映画評論家。京都「三三屋」でほぼ月イチのトークショウ「ミルクマン斉藤のすごい映画めんどくさい映画」を開催中。2020年6月からは大阪CLUB NOONからの月評ライヴ配信「CINEMA NOON」を開始(Twitch:https://twitch.tv/noon_cafe)。
近況:映画評論家。ぶった斬り最新映画情報番組「CINEMA NOON」を配信中。次回は2/5(金)20時から。YouTubeチャンネルで見てね。
地畑寧子(ちばた・やすこ)●東京都出身。ライター。TV Bros.、劇場用パンフレット、「パーフェクト・タイムービー・ガイド」「韓国ドラマで学ぶ韓国の歴史」「中国時代劇で学ぶ中国の歴史」「韓国テレビドラマコレクション」などに寄稿。
近況:韓国映画『藁にもすがる獣たち』、原作同様面白いです。チョン・ドヨン、やはり極上の巧さ。チョン・ガラム(『詩人の恋』など)も推し。

『イルミナティ/世界を操る闇の秘密結社』

いるみなてぃ

監督・原案/ジョニー・ロイヤル 出演/ジョニー・ロイヤル ジョセフ・ウェイジズ ジェイムズ・チスカニック チャーリー・ギリエン アダム・ケンダル(歴史家)ほか
(2019年/アメリカ/76分)
●数々の小説や映画で描かれてきた謎の秘密結社「イルミナティ」の真相に迫るドキュメンタリー。映像作家でフリーメイソン研究家のジョニー・ロイヤルが監督を務め、イルミナティの歴史や実態のタブーに切り込む。組織の正体を知る人物などの証言をもとに、驚くべき真実と伝説にたどり着く。

2/5(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、池袋シネマ・ロサ他全国ロードショー!!
©Praetorian Motion Pictures
配給/知的好奇心の扉「TOCANA」

柳下毅一郎
別に操ってません
Qアノンが話題のこのご時勢によくこんなもんやるな……と呆れるやら感心するやらだったが中身は意外と煽りもなくて事実に即して、つまり十八世紀のバヴァリア(バイエルン)でフリーメイソンのパチもんみたいな秘密結社ごっこをやっていた人たちがいた……という話を地味に語るものだった。残念ながらおもしろくはない。「イルミナティの最大の業績は今も世界で話題になることだ」と語られるとおり。
★☆☆☆☆

ミルクマン斉藤
邦題盛りすぎて、ほぼ冗談になってます。
青春期に少なからず澁澤龍彦に影響された者として秘密結社は今も好物のひとつ。本作は18世紀半ばのプロテスタントの勃興と啓蒙思想のもと、イルミナティを結成するに至る過程やフリーメイソンに寄生して拡大を図ること、儀式や階級の詳細、そして内部分裂から崩壊までを、具体的にしてムーディな再現映像を盛り込みながらも淡々と叙述していくが、まあ、興味のないヒトにはおよそ無駄な知識でしかなかろうし、あまりにもまっとうなオチには全力でずっこけました。
★★☆☆☆

地畑寧子
都市伝説の解明
闇の部分がひとり歩きしている、かつてあった秘密結社の真相を真面目に綴ったドキュメンタリー。イルミナティが存在した時代背景に加え、フリーメイソンとの寄生関係や創設者自身の矛盾をついた有識者の証言を巧く構成していて分かり易い。が、語り口は淡々とはしているものの、タブーに踏み込んだぞという作り手の意気込みは、キリスト教に馴染み薄の立場には響きづらいかも。個人的には、もっと闇が深そうな薔薇十字団を追究したバージョンの制作も希望。
★★半☆☆


『樹海村』

樹海

監督・脚本/清水崇 脚本/保坂大輔 出演/山田杏奈 山口まゆ 神尾楓珠 倉悠貴 工藤遥 大谷凜香 山下リオ 塚地武雅 黒沢あすか 高橋和也 安達祐実 原日出子 國村隼ほか
(2021年/日本/117分)
●実在した心霊スポットを題材に描くシリーズで、『犬鳴村』に続く第2弾。「コトリバコ」と呼ばれる呪いの箱と、自殺の名所として知られる富士の樹海がもたらす負の引力が相まって起こる恐怖を描く。古くから伝わる呪いが樹海に封印されて13年。その樹海では行方不明者が続発するようになり…。シリーズ第1弾に続き、清水崇が監督を務める。

2021年2/5(金)公開
Ⓒ2021「樹海村」製作委員会
配給/東映

柳下毅一郎
幽霊顔認証は新しい
樹海の荘厳さを突き詰めて『アンチクライスト』みたいになってもよかったんじゃないかと思うんだが、結局「樹海村」がなんなのかも樹海の呪いがどこから来てどこへ行くのかもよくわからないまま暗黒舞踏が襲ってくるのはちょっと残念。影絵が襲ってくるのは低予算ホラーならではの工夫という感じで悪くないし、幽霊顔認証とかゴーストVRとか、最新のガジェットがらみは楽しいですね。
★★★☆☆

ミルクマン斉藤
超難解(笑)。ちょいブーアマン。
前作『犬鳴村』がアレだったもんでハードル低くして観たのだが、こりゃかなりの怪作。「村」と「箱」というふたつの主要要素が巧く絡み合ってないし、かなり唐突に過ぎる展開が連続するのだけれど、それが『エクソシスト2』的な時空間を超える驚異と『マタンゴ』的なじくじくした有機的恐怖をないまぜにしたケレンにやがて結集していき、なんだかよく判らない興奮へと至る (クライマックスの暗黒舞踏もいいねえ)。やけにキャメラと照明が素晴らしいと思ったら、行定勲組の福本淳+市川徳充でした。
★★★★☆

地畑寧子
日本産都市伝説を料理
人が樹木に同化する造型も素晴らしい、厚みのある怨念ホラー。樹海の過去、そこから派生した村、左手の薬指を集めたコトリバコの伝説をきっちり抑え、繊細ゆえにその難を受けた母娘の情愛まで見せ込んである強固な作りで好感度。樹海をイベント化する薄い風潮を対比しているのも効を奏している。解決はまず不可能な目に見えない恐怖こそ最強の恐怖。怖がらせキャラを知恵と勇気でスピード退治的な他国産とはやはり一緒くたにはできないなと痛感。
★★★半☆

ここから先は

0字
「TV Bros. note版」は、月額500円で最新のコンテンツ読み放題。さらに2020年5月以降の過去記事もアーカイブ配信中(※一部記事はアーカイブされない可能性があります)。独自の視点でとらえる特集はもちろん、本誌でおなじみの豪華連載陣のコラムに、テレビ・ラジオ・映画・音楽・アニメ・コミック・書籍……有名無名にかかわらず、数あるカルチャーを勝手な切り口でご紹介!

TV Bros.note版

¥500 / 月 初月無料

新規登録で初月無料!(キャリア決済を除く)】 テレビ雑誌「TV Bros.」の豪華連載陣によるコラムや様々な特集、テレビ、音楽、映画のレビ…

TV Bros.note版では毎月40以上のコラム、レビューを更新中!入会初月は無料です。(※キャリア決済は除く)