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押井守のサブぃカルチャー70年「裏方のプロの巻」【2021年7月号 押井守 連載第23回】

『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』に大きな影響を与えたという、押井青年がハマった『プリズナー№6』の話題を。…といきたいところですが、脇道にそれて、映画とその監督を支える裏方のプロフェッショナルについてアツくなり…。
取材・構成/渡辺麻紀

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ジャンル映画とその監督を支える裏方のプロたちがいなくなると…

――今回はやっと『プリズナー№6』(1967~1968年)です。前回、押井さんは『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(1984年)にその影響が大きいとおっしゃっていました。

私も当時は、ロボットアニメを作りたかったんだけど、そう簡単にはいかなくて……。

――いや、押井さん、そういうお話、前回でもしていらっしゃましたよ?

そうなんだけど、もうちょっと喋らせてよ。
ロボットものを作りたかったって言ったよね? でも、苦手なジャンルではあったし、(プロダクション・)I.Gだってロボットものが得意とは言えない。やっぱり思うんだけど、突き抜けた作品を作るためには基盤が必要なんです。それに何が一番、適しているかと言えばシリーズものになる。

――は、はい。

映画やアニメを1本、ぽこんと作っても続かない。怪獣映画がそのいい例で、大映も日活も怪獣映画を作りはした。それでも、やっぱり怪獣ものは東宝だよなと思ってしまうのは、東宝には特撮部という部署があったからですよ。日活にも一時期あったけど、すぐになくなっちゃった。

つまり、何が言いたいかというと、そういうスペシャリストの集団がいて、初めて怪獣等の表現が可能になるわけだ。

――よくハリウッドの監督がイギリスのパインウッドやシェパートンといった歴史のあるスタジオで撮影をしたがるじゃないですか? あれはそれぞれのスタジオに優れた大ベテランの職人さんがたくさんいるからだと言っていました。監督の意図を組み、大道具小道具をちゃんと作ることが出来る人たち。だからクオリティを望む監督たちが集まって来るみたいです。

そういうのは古今東西同じなんです。
日本で言うと時代劇がまさにそう。“時代劇は東映”と言われていたのは、京都撮影所という時代劇のメッカを持っていたからですよ。
結髪から衣装、タケミツのプロだっている。そういう専門家がよってたかって作るのがジャンル映画なんです。

――それはアニメも同じということですね。

そうです。
では、そういうプロフェッショナルを失うとどうなるのか? 最近の日本映画になってしまう。監督をサポートするはずのプロ集団が少なくなって、それが映画のクオリティにも響くことになるんです。

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