押井守のサブぃカルチャー70年「謎の円盤UFOの巻」【2021年9月号 押井守 連載第27回】
今回は押井さんがさらに萌えたという『謎の円盤UFO』がテーマ。学生時代の押井さんが興奮しまくったという同作には、『エヴァ』につながる部分もあったとのこと。ともかく、大興奮の回になりました。
取材・構成/渡辺麻紀
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当時の私たちからすると、とんでもなくエロいシリーズだったんです!
――今回はジェリー・アンダーソンの最後の回、『謎の円盤UFO』(1970~1971年)です。押井さんは、ホップ=『サンダーバード』(1965年)、ステップ=『キャプテン・スカーレット』(1967年)、ジャンプ=『謎の円盤UFO』としています。ちなみに『UFO』はパーフェクト! と前回おっしゃっていました。
そう、お話よし、設定よし、おねえさんよしの三拍子揃った作品です。麻紀さんは観てるの?
――すみません! ずっと気になっていた作品ではあったんですが、結局は観てないんですよ。
好きだと思うよ。とりわけ主人公の短髪でプラチナブロンドのストライカー司令官が。彼の右腕になっているのがフリーマン大佐というんだけど、これが結構脂ぎったおっさんなの。クールなストライカーと脂ぎったおっさんのコンビ。私は絶対、ストライカーはゲイだと思っている。
――押井さん、私が好きだろうというのは、その部分なんですか!?
それもあります。いや、本当にこのふたり、ベタベタするんだよ。学生時代、観ていたときから、絶対怪しいと思っていたからね。ストレイカーの部屋にはバーがあったから、しょっちゅうふたりで飲んでいた。
――写真を見ると、きれいなおねえさんが周囲にたくさんいますが、恋バナみたいなのはあるんですか?
ない。だからますます怪しくなる。まさに麻紀さんの好きそうな、少女漫画に出て来そうなゲイ・キャラですよ、ストレイカーは。
――いや、押井さん、「ストレイカー ゲイ」で検索してもひっかからないですよ。
そうかもしれないけど、私はそう思っているということです!
――映画製作会社の地下に基地があるそうですね。
そうそう。だから、どんな人が出入りしてもおかしくない。ストレイカーも表向きはその映画会社のエグゼクティブになっているからね。それに、その設定が思わぬ効果を得てる。つまり、とても虚構っぽい。製作会社の下にエイリアンと戦う秘密組織の基地があるなんて、そそられるじゃない? もちろんウソなんだけど、実際にそうだったら面白いなと思わせる部分がある。
――確かに、キャットスーツのおねえさんがそのまんまのスタイルでうろついても誰も怪しまない。
そうです。『UFO』の隠れたウリはおねえさんたちなんです!
あそこまで凄まじいキャットスーツはこれが初めてだと思う。もちろん、それまでもぴったりしたコスチュームはあったし、SF映画にもギンギラのものが登場していた。
でもさ、この作品のキャットスーツはメッシュなんです。オープニングにほんのワンカットだけメッシュのキャットスーツを着たおねえさんが登場するんだけど、当時の青少年たちはみんな、このおねえさんが下着を着けているか、それとも下着ナシで着用しているのか、私は映研の仲間と一緒に酒を飲みながら、目を皿のようにして見極めようとしていたんです。ビデオも何もない時代だから、そうするしかなかった。
――(ネットの写真等を見ながら)押井さん、このおねえさんですか?
いや、これはムーンベースのおねえさん。あ、これですよ、これ。メッシュでしょ? 潜水艦のスカイダイバーの女性隊員の制服がメッシュなんだよ。
――ほんとだ、これはかなりヤバいかもですね。少なくとも男子は上半身何もつけてないし、女子はおそらく着けているんだろうけど、妙にボディラインが生々しい…うーん。
そう、生々しいんですよ! それを当時、普通にTVでオンエアしていたから凄いんです。これで萌えないほうがおかしい。(『キャプテン・スカーレット』の)エンジェル隊どころの騒ぎじゃないから。こちらは生身のおねえさんだし。
――(動画を見ながら)このオープニング、かっこいいですね。驚くほどカットが短い。
ここまで短いのは珍しいし、当時としてはやはり斬新だった。音楽もかっこいいから。いまでもリズムを取れる。
――(写真を見ながら)このメッシュのおねえさんのファンだったんですか?
いや、好きだったのはパープルのウィッグをつけたムーンベースのエリス中尉です。ウィッグは制服のひとつ。地上に降りたときは、普通の髪になっているから。
エリス中尉を演じている女優さんって、麻紀さんの好きな(ベネディクト・)カンバーバッチくんのお母さんじゃないの?
――確か『UFO』に出ている女優さんでしたよ……(調べて)でも、エリス中尉じゃないみたいです。ヴァージニア・レイク大佐を演じているワンダ・ヴェンサムですね。エリス中尉の女優さんはガブリエル・ドレイクです。
そうなんだ。じゃあ、私が聞いた情報は間違っているね。
いや、そういうことを除いても、妙にセクシャルなシリーズだったんですよ、これは。
――押井さん、まさかセクシャルだったから「ジャンプ」だったわけじゃないんですよね?
もちろん、ストーリーも面白かったんだけど、やっぱり本当にエロい。潜水艦のスカイダイバーは艦首部分にスカイ1という戦闘機を搭載していて、浮上して戦闘機をぶっ放すときの表現はどう見ても射精しているようだし、インターセプターは機首にデカいミサイルを装着していて、これも男根が空を飛んでいるようにしか見えない。
アンダーソンが意識したかどうかは分からないけど、当時の私たちからすると、とんでもなくエロいシリーズだったんです!
――そ、そうですか……ストーリーの面白さはどうだったんですか?
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