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THE FIVE SENSES【感想】①

斎藤君sightより
Lost summer navy

逃げ水の向こうへ君を見送ればこんなに暗い傘の内側
傘の内側に視線を落とすところが面白い。暗い傘の内側それは君のいた場所の明るさの対比。

陰影のパレードがゆく蒼ざめた回転木馬が沈む夕暮れに
陰影のパレード、回転木馬、楽しい時間は過ぎ去った過去。回想している主体の蒼ざめた記憶。夕暮れにと指定することで刹那、切なさが際立つ。

草原のただ一本の樹であった深呼吸する君のフォルムは
草原のなかに立つ樹にみたて君の存在感、深呼吸するさまで君を強調しているように感じる。主体にとっての光のような存在の君の描写。

肖像はついに描きあげられぬまま耳のあたりに死後の手触り
未完の肖像のデッサンが浮かぶ。死後の手触りとは何だろう。死後硬直か。ここで冷たさと硬さを感じる。その感触が目から伝わったものであるのに温度が感じられる。

黄昏に乾いた餌を降らせれば乾いた眼の魚が集う

死んだ魚の目という表現がある。水槽に乾いた餌をパラパラと降らせる主体の眼もまた死んだ魚と同じなのかもしれない。

ボストンで撮った写真の片隅に二度と帰ってこないひこうき
またこの写真もモノクロで浮かんでくる。帰ってこないひこうきに誰が乗っていたのだろうか?

透明な湖だったふいに手が離れていってそれからはもう
自死あるいは別れを連想させる。透明な湖が内的な心の投影なのか。

絶滅が確定された種を知って怯える胸に空の青さが
空の青さがと表現されているのにまた色が感じられない。むしろ青さの怖さまで感じてしまう。

揺れていた白い瞼をふと思う雲の向こうの月の満ち欠け
瞼を閉じた状態で見ようとしたとき何が見えるだろうか?瞼の下で眼球を動かす。ゆっくり瞼を開くさまと月の満ち欠けが重なる。

肉体のないあたたかさ老いすらもかなぐり捨ててそれでも君は
老いをかなぐり捨てるとは?肉体のないあたたかさとは?やはり主体がみている君の肉体がない=死を連想させる。

逆光に胸をひらいた永遠の盲となって ひかりを抱いて
逆光、盲、ひかりを抱く。主体にはもうみえない君の実態を目を瞑ることによって見ようとする。矛盾したものを逆光で表現しているのだろうか。

これは青 夏の夜の青 詩のような君の小指を知ったあの日の
唯一甘酸っぱい青春のような追憶が感じられる。だが詩は死であり君はもういない。小指から連想される約束がどうなったのか何だったのか気になる。

水のないプール何かを待っている

ゆうれいはそこにおります日の盛り

夕凪の予感瞑目すれば闇

全体的にモノクロの世界で統一されている。唯一青が出てくるが、それは主体が感じるひかりのようでありながら網膜には青の残像はなくモノクロ。目に映るnavyが無声映画のよう。

反応で野良之コウモリさんが全てを見通しているのがまた面白い

青ばっか使っとったらのーなったプテラノドンは夜空も飛んだ
恐竜の色は何色なのか分からない。夜空に飛ぶプテラノドンはモノクロに違いない。

連作全ての感想を書いたのは初めて。そして人様の歌をnoteに残すのも初めて。歌評とは言えないが感想を書き留めたくなった。
続きはまた後日。

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