スクールアイドルミュージカル
『スクールアイドル』のミュージカル作品。
ラブライブ!で完全新作ミュージカル、事前情報では想像の余地がなく、内容が全くつかみ切れなかった今作。
蓋を開けてみれば絶賛の嵐が吹き荒れる。
とにかく良かった、そのひとことに尽きるだろう。
ネタバレを避けるために多くの人が濁しながら、口を揃えて「スクールアイドルの原点を描いている」とつぶやく。はたして、どの部分に原点を感じるのだろうか。
今までスクールアイドルの原点と言えるのはμ’s、並びに高坂穂乃果だろう。彼女たちはすでに「スクールアイドル」という概念がある世界に生きている。彼女たちの功績は、概念を自分たちで解釈し、表現する事でスクールアイドルは楽しいと言うことを世界に広げたことだと考えている。
スクールアイドルミュージカルはそもそもの「スクールアイドル」の概念が生まれる瞬間を描いている、と言いたい。
無印もミュージカルも、学校で、部活としてアイドルをすることは楽しいというメッセージは同じ。ただ、前提となる世界が違う。
無印がラブライブ!大会の知名度を広げ、ラブライブ!シリーズとして後発作品の世界設定の礎になっているように、ミュージカルは更にその下の階層にいると感じる。
一番の根拠は、ルリカが出会うのが「滝桜芸能コース」のアンズという点。
出始めからスクールアイドルじゃないんですよね。
高坂穂乃果も高海千歌もあなたちゃんも高咲侑も唐 可可も、みんなスクールアイドルを見てから始まっている。けどミュージカルはそうじゃない。
『スクールアイドル』とは一体なにか?を深堀する為に、無印ラブライブ!を分解して要素を抜き出し再構築すると、このミュージカルが完成するだろう。
そして、そんな物語の表題曲につけるタイトル名が「未完成ドリーム」。
未完成な夢、なんですよね。
みんなで叶えた物語という、完成した夢の無印ラブライブ!と対になる物語じゃなかったらなんなんだという話になるんです。
「シリーズを見てきたオタクは絶対に見ろ」という言葉が飛び交うのも、ラブライブ!の世界設定の根幹を説明しているから。
そんな重要なものを限られた期間の映像化無しで披露しないでほしいと、見終わってから頭を抱えてしまうほどだった。
逆に言うと、無印劇場版で語られた「限られた時間の中で輝くスクールアイドル」という台詞がある。
限られた時間のミュージカルという表現方法が、スクールアイドルを表現するのに限りなく正解に近いものだったからこそ、物語が完成度高く成立しているとも言える。
パンフレットにラブライブのプロデューサーが珍しくインタビューに答えている。自分が知る限り、プロデューサーが表に顔を出すのは初めてだと思う。
その中で、ラブライブ!は何よりも最初に「スクールアイドルという存在が最初にある」というキーワードが大変興味深い。タイトルのラブライブ!大会が最初じゃないんですよね。サブタイトルのschool idle projectのほうが大事なんです。
改めて公式サイトを見ると、各シリーズのページに行く前に「スクールアイドルとは」という説明文がある。
これしか説明がない。
けど私達はスクールアイドルというものに対して十分な理解を持っている。それは雑誌やアニメ、ライブ等を通じて表現されてきたからだ。
ラブライブ!の物語は5作品目が生まれようとしている現在、悪くいうと各作品のもつベクトルがさまざまな方向に特大の大きさを持っているので、シリーズの中心がブレている印象がある。
ミュージカルの話を持ちかけたのは向こう、劇団側からという話だが、これをいい機会に、シリーズの中心にあるスクールアイドルというものを再定義したように思える。そのために参考にされるのはやはり無印ラブライブ!を元にする。だからか、今作はμ’sの時のような荒削りだけど濃厚な懐かしい味がする。
ミュージカルは、好きなことをやるのは楽しい、楽しいから本気になる。それがスクールアイドルなんだという本質をとことん丁寧に組み立てていた。それを彩る緻密に積み上げられていく音楽も見事だった。
アンサンブルがこれもまたいい仕事をしていて、今何が起きていて、次に何を期待すればいいのかを歌い上げてくれるおかげで、目まぐるしく変化していくステージから置いてけぼりにならずに物語に参加していける。
そして何より、彼女たちも主役なり得るのだ。
ダイジェストで見ると、歌が上手く聞こえないかもしれないが、劇場の音響の聞こえ方とはまるっきり違うので安心してほしい。
現在の仕上がっているLiella!と同等のパフォーマンス力があると思ってもらっていい。
そして何より、
この物語を、僕たちしか見ていないなんて。
──そんなの、もったいなさすぎる。
微妙なネタバレ書き散らし。
スクールアイドルってこういうものなんだろうな。
こうしてステージに立つというのは見てる側からも恥ずかしさを感じるだろう。実際、一曲目が始まる時のどよめきがそれを証明している。
ステージに立つ者も、見ている声援送る側も、そういう文化に触れてこなかった人の前で晒されるワケだから恥ずかしいんだけど、それを乗り越えてしまう。
体が熱ってじっとしていられれない微熱感がこの動画から感じることができるスクールアイドルの原点、全ての原動力。
好きなんだからしょうがない。
そうなったら、もう、やりたくて仕方ないんだ。
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