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倫理政経ポイント解説(倫理②)

こんにちは。今回は倫理(源流思想の自然哲学まで)をやっていきます。

自然哲学の誕生の流れ

最初、古代ギリシャ人にとって正義をわきまえた美と善の調和が理想であり、彼らの行動のや思考の指針となる教養は神話(ミュトス)であった。
cf)「イリアス」「オデュッセイア」ホメロス著
 「神統記」ヘオドシス著

ギリシャ人の知的探究心は強く、次第に神話から脱却して理性(ロゴス)に基づく思索を始める。そして現れたのが個々の事物を見つめ、それを超えて存在する普遍的かつ客観的な原理を見つけるテオーリア(観想)的態度である。このテオーリアが愛知(フィロソフィア、哲学)の精神を生んだ。

自然哲学とは・・・自然の根源(アルケー)とは何かを問う営み

万物の根源を探求した初期の自然哲学者
 
   学派       哲学者       アルケー、思想
         タレス        水
 ミレトス    アナクシマンドロス  無限なもの
         アナクシメネス    空気
 エフェソス   ヘラクレイトス    火「万物は流転する
 ピタゴラス教団 ピタゴラス      数の比例関係
 エレア     パルメニデス     有るもののみが有る※1
         エレアのゼノン    アキレスと亀の逆説によって
                    パルメニデスを擁護※2
 多元論者    アナクサゴラス    種子・理性
         エンペドクレス    土・空気・水・火
 原子論者    デモクリトス     原子(アトム) 

※1後のプラトンに大きく影響を与えた
※2あとから追いつこうとするものはまず先行するもののいた場所にたどり着かなければならず、その間に先行するものは進んでいるのでどれほど足が遅くても先行するものは追いつかれないとして運動は単なる見せかけの現象だと主張した。

ソフィストの登場
紀元前5世紀頃の民主政治の成立によって市民が政治の担い手となり、市民が政治的知識や弁論術を身につける必要に迫られた。それに答えるためにプロタゴラス人間は万物の尺度であると主張)やゴルギアスが登場した。彼らは万物を貫く普遍的な真理は無いという相対主義を徹底した。

ソクラテスの登場

ソクラテスとは・・・ソクラテス以上の知者はいないというお告げをソクラテスの友人が受けたことをきっかけに賢者との問答を重ね、自分の無知の知を自覚する。エイロネイア(皮肉)という無知であるように振る舞うことで相手の無知を自覚させる問答法(助産術)を用いた。

ソクラテスにとっての真の知

ソクラテスにとって人間のアレテー(優秀性・卓越性)は徳であり徳とは魂(プシュケー)をできるだけ良いものにすること(魂への配慮)であった。
魂への配慮とは真理を愛し求めること。徳を実現するには徳に対する知が必要であるから徳は知である(知徳合一)また、徳について知っているとはそれに関する振る舞いをすることである(知行合一)このように、徳を身につけ実践することがよく生きることであり、幸福である(福徳一致

ソクラテスは、最終的に死刑判決を受けているが、脱獄を試みなかった理由として「善く生きること」上げている。脱獄するということはポリスの法に反することになり、「善く生きること」ではなくなるからである。


プラトン

イデア・・・イデア界に存在し理性によってのみ捉えられるもので個々の事物の美(現象界に存在)などの原型となるもの。その中でも最高のイデアを「善のイデア」とした

プラトンは世界を現象界とイデア界という二元論的に世界をとらえた。

現象界の個々の事物を見るとき、我々はイデアを想起(アナムネーシス)する。これらの動機となるものがエロース(完全なるものへの思慕)である。

プラトンによる魂のはたらきと四元徳と理想のポリス

魂のはたらき
理性    →正しく向かうと知恵の徳へ
気概(意志)→理性を助けて欲望を統制することで勇気の徳へ
欲望(情欲)→理性に従い過度に陥らないことで節制の徳へ
→これら3つの徳が調和したときに正義の徳を実現できる

知恵の徳→統治者
勇気の徳→防衛者
節制の徳→生産者
正義の徳→理想のポリス(哲人政治の完成)

アリストテレス

プラトンのイデア論を批判
具体的な個々の事物に内在する本質をイデアとした。
そしてこの本質をアリストテレスは形相(エイドス)(現実態)として、その本質を実現する素材を質料(ヒュレー)(可能態)とした。また、アリストテレスにとって最高善は幸福である。

※アリストテレスは神を「不動の動者」すべての現象の最初の原因(第一原因)と考えた。

アリストテレスは人間の生活を享楽的生活、政治的生活、観想的生活の3つに分けた。それぞれに快楽、名誉、知恵という善が対応し、観想的生活を最も望ましいものとした。

また、アリストテレスは「ニコマコス倫理学」の中で、人間の魂を理性的な領域(知性的徳)と、感情・欲望の領域(倫理的徳)に分類した。日常生活においては過度と不足の中庸を選ぶことを理想とした。倫理的徳の中でも正義と友愛を重視し、正義については法を守るという全体的正義と公正を意味する部分的正義に二分した。さらに、部分的正義は能力、業績に応じて名誉や報酬を与える配分的正義と各人の利害を調和させる調整的正義から成る。

ヘレニズム

ヘレニズム文化はギリシャ文化、オリエント文化の融合によって形成。
ストア学派とエピクロス学派が有名※1

ストア学派
ゼノンを祖とする
思想
自然は理性法則(ロゴス)に従っていて人間にもロゴスの種子が宿っている。よって、ロゴスを自然を貫く法則と一致させることで魂の内的な調和を得て、それによって情念(パトス)や欲望によって動かされることのない自由な境地(アパテイア)に到達する。これこそが人間の幸福、つまり最高善である。このような立場は禁欲主義と呼ばれる。

また、ストア学派には理性を持つ人間はすべて世界市民(コスモポリテース)として同法であり平等とするという世界市民主義があり、のちのキリスト教、自然法思想に影響を与えた。

※ストア学派はローマ人に受け継がれた。キケロ、セネカ、エピクテトス、皇帝マルクス・アウレリウスなどが有名。

エピクロス学派
エピクロスは快楽を最高善であるとし、これを追求することが人生の目的だとした。これを快楽主義という。

快楽主義とは

勘違いする人をたまに見るので強調します。

エピクロスによると、真の快楽とは肉体的快楽や死の恐怖(魂の苦痛)を離れた魂の平安(アタラクシア)である。
永続的で安定した精神的快楽を求め、動揺のもととなる世俗から(隠れて生きよ)と説いて、「エピクロスの園」という友愛の共同体の学園を作った。

※1ピュロンを祖とする古代懐疑論も大きな役割を担った。

プロティノスの新プラトン主義

すべての根源を万物である一者(卜・ヘン)としてすべてはそこから川のように流れ続けるとした。


以上で倫理②は終わりです。次は源流思想(宗教編)やります。
閲覧ありがとうございました。スキしてくれると励みになります。

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