見出し画像

THE SECONDという賞レース。

結成16年以上の漫才師だけが出場できるという、極めて稀有な賞レース。
対戦方法はトーナメントのガチンコ対決。
審査員は選ばれた100人のお笑い好きの一般人。
今までありそうでなかったこの大会の決勝戦が遂に行われました。
2023年5月20日。
我々は新たな歴史の始まりの証人になったのです。

選考会からノックアウト32→16、ノックアウト16→8とすべての戦いを見てきて、もちろん今回もがっつり見させていただきました。
その感想をここからは完全なる個人の見解、お笑い芸人ではなくいちお笑い好きの観点から書かせていただきます。敬称略、全組面白いというのは大前提で。
ネタの内容などは割愛させていただきます。
過去の記事も併せてみていただければ幸いです。

まずオープニング。
MCのお二人とアンバサダーの松本人志さんがまさに出演者が通るセット裏から出ていきます。
青を基調としたその配色は落ち着いた大人の雰囲気さえ醸し出していて、M-1やKOCのような情熱の赤ではなく、ふつふつと温度は高くてもそれでいて頭は冴えている、そんな空気を感じました。
最初はこれまでの戦いの振り返りVTR、このバックに流れるのがTHE YELLOW MONKEYの「バラ色の日々」。
音楽にあまり詳しくない僕ですが、世代的に流行った曲でこの歌詞がまたぐっときます。

追いかけても追いかけても 逃げていく月のように
指と指の間をすり抜ける バラ色の日々よ

まさに今から戦わんとしようとする芸人たちを表す歌詞ではないでしょうか。

いよいよ戦いの火蓋が切り落とされます。

・準々決勝第1試合
×金属バットVSマシンガンズ〇
共に決勝戦に出場するのは初となるコンビ、名前から「武器対決」「凶器対決」なんて言われていました。金属バットは野球用品なのに。
抽選会で「引かずにトップバッター」になった金属バットはいつも通りふらっと現れてその辺で立ち話してふらっと帰る、みたいな気軽さと独特の雰囲気を醸し出してました。
あと友保さんの髪のキレイさに目を奪われました。さらさらやん。
ゆるーい感じとどぎつい大阪弁で進む漫才が、この会場をテレビの賞レースから一気に劇場の寄席に持って行った感じではありました。
後攻はマシンガンズ。
名前の通りのマシンガントークで世の中や自分たちや色んなことにツッコんでいくスタイルは相変わらず。
金属バットの3倍くらいのセリフ量で6分を駆け抜けていきました。
どこまでがネタでどこまでがアドリブかわからないその絶妙さも相まってお客さんの心をぐっと掴んでの勝利だったと思います。

・準々決勝第2試合
×スピードワゴンVS三四郎〇
どちらのコンビもよくテレビに出ている、言ってしまえば「売れている」コンビの対決。
逆に言うとテレビにたくさん出ていてもネタを作ってこの大会にでているというのが凄い。
二組の思いは共通してて「漫才師として見られたい」というもの。
テレビで売れると芸人としては知っていても何をしている人か、というのは徐々に認知されなくなってきます。しかもネタ番組に出ないならなおさら。
バラエティータレントとしての知名度ばかりが上がり、本人たちがネタをしたいと思っててもそれは叶わなくなってくる。
まさに原点回帰を計った二組の戦いでした。
いつものスタイルは崩さず、これまで勝ち上がってきたネタでガチンコ勝負をした二組。
今日のお客さんの心を掴んだのは三四郎でした。

・準々決勝第3試合
〇ギャロップVSテンダラー×
「関西ダービー」となったこの戦い。結果は後輩のギャロップが勝つという結果でしたが、どちらも劇場に出まくってるだけあって仕上がり方がエグかったです。
奇しくもギャロップは16→8で後輩のラフ次元とも「関西ダービー」を繰り広げたわけですが、ここで先輩を打ち負かすという偉業を成し遂げたのは、選考会イチウケの実力を存分に発揮できたからではないでしょうか。
もちろんテンダラーも百戦錬磨なんですが、今回はネタのチョイスが勝敗をわけたのかなと。
先輩の思いも乗せて準決勝に駒を進めたギャロップでした。

・準々決勝第4試合
×超新塾VS囲碁将棋〇
漢字コンビ名対決、今回で一番審査が難しいであろう対戦カードだったのではないでしょうか。
まず5人組の漫才というのが他に類を見ません。4人以上で漫才やってるのは超新塾かザ・プラン9くらいしか思いつきません。
ハイテンポで畳みかけていくボケの多さは爽快で、動きもあって、見ているものを飽きさせない楽しさがある超新塾。
かたや独特の目線と圧倒的なワードセンスでずっと聞いていたくなる東京漫才師のカリスマ囲碁将棋。
軍配はしゃべくり漫才に上がりましたが、超新塾は再ブレイクの予感が凄いします。松本さんも言ってたけど。動きがキャッチーというのは今の時代に合ってるんじゃないかなって。
あとアイクさんより囲碁将棋の方がでかいっていうのがなんか目の錯覚みたいでした。

・準決勝第1試合
〇マシンガンズVS三四郎×
1試合終えて緊張もほぐれてきたのか、前の試合より圧倒的にのびのびとネタをしていたマシンガンズ。
16→8でやったネタを持ってきたのですが、最後に紙を出す、というM-1では絶対できないことができるのもこの大会ならでは。
審査員がプロならここできっと落とされていました。
そこがまさにいいところで、これをお客さんがよしとしているところが、寄席に近い感覚なんだろうなと思います。
がっつりネタを仕上げてきた三四郎には申し訳ないですが、売れないおじさんたちの魂の叫びが心に刺さりました。
そこが最高得点に繋がったのではないかなと。

・準決勝第2試合
×囲碁将棋VSギャロップ〇
今大会のベストバウト。事実上の決勝。
準々決勝のハゲネタではなくあるあるネタをふんだんに盛り込んだギャロップ。
準々決勝同様どうやったら思いつくねんそんな面白ワードをふんだんに盛り込んだ囲碁将棋。
笑いの量ではどちらも大差なく、出た点数は同点。しかも先ほどのマシンガンズと同じ284点という大会最高点。
この大会、これまでも同点がなかったわけではありません。32→16のなすなかにしVSCOWCOWです。
大会ルールにより「3点をつけた審査員が多い方が勝ち」となっていたので、結果はギャロップの勝利に。
ただ囲碁将棋は1点をつけた人が0という快挙も成し遂げました。
最高得点取って誰もが面白いと思ってるのに負けるってどういうこと?伝説?
でも一番面白い漫才師を決める大会なので理にはかなってるなと思います。

・決勝
×マシンガンズVSギャロップ〇
「ネタが2本しかない」というネタを引っ提げて決勝の舞台に立ったマシンガンズ。
一体どこまでが本当でどこまでがアドリブか全くわからないので、先ほど起こった出来事や大会中にエゴサーチした内容などを盛り込んでくるなんて、若手には到底できない「これぞ立ち話」を体現してくれました。
対してギャロップはM-1では絶対できない、6分という尺があるからこそできるネタをここにきてぶち込むという度胸の強さ。
6分の漫才で4分一人がしゃべり続けるなんてもはや狂気の沙汰ですよ。そこのツッコミでウケなかったらとんでもない空気になるからです。
アドリブ力と構成力。
全く違うタイプの決勝戦になりました。
そしてここまでそのアドリブっぽい漫才を3本持ってきたマシンガンズと3本とも全然違うネタのスタイルで魅了したギャロップ。
自分がもし審査員だったら、ここまで色んな顔を見せてくれたギャロップに点を入れるでしょう。審査員も同じことを思ったんでしょうね。
勝てたのは必然だったのかなと今となっては思います。
不仲で解散説も出ていたギャロップがそれでも腐らず結果が出たことに関西の人間として単純に嬉しいと思いました。
林さん、毛利さん、おめでとうございます!!

この戦いの場を用意してくれたスタッフの方々、長丁場の審査をしてくれた観客のお笑い好きの皆様、そして出場してくれた全芸人の先輩方に本当にありがとうと言いたいです。
今まで見てきた賞レースの中で一番好きです。
「誰も損しない大会」
まさにその通りの大会でした。

これは来年からも目が離せないですね!!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?