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【やさしい】卵子の質ってなに?【不妊症ガイド】

たなかゆうすけです。

不妊症のやさしいガイダンスです。


前回までのお話はこちら。

年齢と妊娠についてお話しました。

その中で、受精卵が大きなファクターになっているとお話しました。

今回は、その受精卵の質に大きく関わる『卵子の質』についてお話をします。


こちらも併せてどうぞ。


卵子の質ってなに?

『質』をgoogle検索してみました。

『質』は、そのものの良否・粗密・傾向などを決めることになる性質という意味があると書かれています。

なんだかよくわからないですね。

卵子の粗密や傾向というのはちょっとイメージしにくいので、一般的にイメージされる『卵子の質』は、卵子の良し悪しということで良いでしょうかね。

では、その卵子の良し悪しについて、

・良い悪いの指標はなんなのか?
・それを具体的に数値などで表すことはできるのか?(『卵子の質』を調べることはできるのか?)

ということについて考えてみましょうか。


『卵子の質』について、良い悪いの指標は?

前回もお示ししたこちらのデータ。

日本産科婦人科学会 ARTデータブック2021より

体外受精・胚移植の成績ですが、これによると、30歳ごろから治療成績は徐々に低下をし始め、治療ごとの妊娠率は低下していきます。
特に35歳を超えると顕著に成績は低下していきます。

それに伴って流産する率もどんどん上昇していき、結果、生産率(赤ちゃんを得られる率)は年齢の上昇とともに大きく低下していきます。

これらは受精卵の質の低下によって起こるということが言われており、この受精卵の質の低下は、おもに卵子の質の低下によるものであるというお話でした。

これは、受精卵の質、ひいては卵子の質の指標は、妊娠率と流産率であるということになります。

赤ちゃんを得られる率に直結する数字ですので、卵子の質の指標としては、至極もっともなものだと思います。

しかし、このデータは、体外受精・胚移植を受けた人たちを何人も何人も集めてきて、標準化したデータになります。

そのなかでも個々人の持つ『卵子の質』には多少なりとも差があるはずです。

では、この個々人の卵子の質を調べる方法はあるのでしょうか?


『卵子の質』は調べることができるのか?

例えば、採血などで何かの項目を調べれば卵子の質は簡単に調べることができるのでしょうか?

答えは『そういった検査はない』です。

では、先ほどの指標、妊娠率や流産率については調べることはできるでしょうか?

答えは『妊娠率や流産率そのものを調べることは難しい』ということになります。

しかし、体外受精・胚移植においてできた受精卵の状態から、妊娠率や流産率はある程度推定することができます。

この受精卵の状態が卵子の質と関連するということもできるでしょう。

しかし、これは治療上必要だから体外受精・胚移植を行って、その過程で受精卵の質ひいては卵子の質がわかるということであって、卵子の質を調べるためにわざわざ体外受精・胚移植を行うということは現実的ではありません。

結局は、卵子の質そのものを簡単に調べることは基本的にできないということになります。

そもそも『卵子の質』が低下するメカニズムはわかっていない

これまでお話してきたように、女性の年齢が上昇することにより、卵子の質の低下が起きていることは明らかです。

細胞内のエネルギー産生機関であるミトコンドリアの機能低下と「卵子の老化」を関連付ける研究結果が報告されていますが、卵子の質が低下する詳細なメカニズムは現在のところ不明です。

年齢と染色体異常

流産率の上昇については、染色体の不分離と呼ばれる現象が関わっていると言われています。

人間の設計図である遺伝子が束になった染色体という構造物があります。

人間の細胞は46本の染色体を持っていますが、23種類の染色体を2本ずつ持っています。
卵子と精子が合体するときには、23種類の染色体を1本ずつ持っている状態になります。
卵子と精子は、減数分裂という過程を経て、染色体を46本から23本へ減らします。
染色体の本数が減るので、減数分裂ですね。

そして、合体して受精卵になるときに再び46本になります。
このように、受精卵は両親から通常23本ずつの染色体をもらってきます。

卵子は生まれたときから卵巣内で待機していますが、この減数分裂の第一段階目の途中で停止しています。
この状態で何十年も待機しているとやはり異常が起こりやすくなるのでしょう。
女性の年齢の増加に伴い、卵子の第一減数分裂の異常である染色体不分離という現象が増加します。

23種類が1本ずつになるはずが、一部は0本だったり、一部は2本あったりということが起こります。
これによって、本来23本であるはずの染色体が、22本だったり、24本だったり、もっと違う数になったりします。

こういった染色体の本数の異常が、卵子の加齢によって増加すると考えられており、これも『卵子の質』と言えるかもしれません。

この染色体の本数の異常は、卵子自体を検査して調べることはできません。


結局は、早めにアクションを起こしましょうということ

ここまで、『卵子の質』は正確に調べることはできないという話をしました。

では、『卵子の質』について、なにを指標にすればよいでしょうか?

それはシンプルに『年齢』です。
正確な指標ではありませんが、年齢がある程度の指標になります。
ここまで、年齢と『卵子の質』は大きな関係があるというお話を繰り返ししてきたはずです。

年齢が上昇していくとともに、卵子の質が低下していくことは確実なのです。

卵子の質の改善する方法も、卵子の質の低下を食い止める方法も確立していません。

結局はある程度年齢が上昇する前にはアクションを起こしましょうということになります。


次回予告

ここまで、卵子の質についての話をしました。

質といえば…対になる言葉は?
『量』ですね。質と量、よく聞くワードです。
量とはつまり『数』です。

卵子の質の話をしたからには、卵子の数の話をしなければいけません。
『卵子の数』は、治療するうえでどのような意味を持つのか?

次回は『残っている卵子の数』です。

こちらも併せてどうぞ。


妊娠を希望される皆様が、幸せな結末へたどり着けますように…

たなかゆうすけでした。

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