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【やさしい】不妊の原因と治療【不妊症ガイド】

たなかゆうすけです。

不妊症のやさしいガイダンスです。


前回までのお話はこちら。

残っている卵子の数の意味についてお話しました。

ここから、現代の治療の考え方についてお話していきます
現代の治療は、体外受精・胚移植を軸に組み立てます。

その話をする前にまず、不妊の原因と治療についてのお話をしていきます。


原因と治療

治療の基本は、原因に対し治療法を選択することです。

妊娠しない方が抱える問題は、『排卵』の問題、『卵管』の問題、『精子』の問題、『着床』の問題、そして『受精卵』の問題に分けられます。

それぞれの問題についての対応を見ていきましょう。


『排卵』への対応

排卵の問題は、『排卵させるものがない場合』、『排卵させる力がない場合』『排卵させるものもあり、排卵させる力もあるが、うまく排卵が起こらない場合』に分けられます。

排卵させるものがない場合とは、卵子が枯渇してしまっている場合です。
排卵させる力がない場合とは、脳から排卵させる指令が出ていない場合です。
この二つは、対応がかなり困難ですので、ここでは比較的よく見られる『排卵させるものもあり、排卵させる力もあるが、うまく排卵が起こらない場合』について見ていきましょう。

この場合の対応は、基本的に排卵誘発となります。
排卵誘発は、排卵のタイミングが不規則な方へ行う方法です。

卵胞という『卵子が格納された袋』が一定の大きさになると排卵が起こります。
卵胞は、ある程度の大きさになるとほぼ一定のペースで発育するようになります。
排卵のタイミングが不規則になる方は、この『ある程度の大きさ』になるタイミングが不規則であるため、結果的に排卵のタイミングが不規則になっています。
いつ入るかわからない卵胞発育のスイッチを、強制的に入れてしまうのが排卵誘発です。

排卵誘発は、適切に行われなくてはなりません。
スイッチを入れる力が弱ければ、結局卵胞は発育してきません。
スイッチを入れる力が強すぎれば、卵胞が複数発育してしまい、二人以上の赤ちゃんができてしまう可能性が上昇します。
赤ちゃんが二人以上になると、妊娠・出産のリスクは著しく上昇します。

このため、卵胞は発育してくるが、複数は発育してこない、ちょうど良い塩梅が必要になります。
このちょうど良い塩梅というのが、意外と難しいのです。

詳細は別稿で触れますが、体外受精・胚移植の場合は、ここの対応を比較的簡単に行うことができます。


『卵管』への対応

卵管の問題への対応は、卵管自体に直接治療を行う方法か、卵管自体の直接的治療は行わずに(行えなくても)問題に対応してしまう方法に分かれます。

卵管自体に直接治療を行う方法として、卵管鏡下卵管形成術(FT)があります。
FTは、細い専用のカテーテルを使用して、その先端についている風船(バルーン)を膨らませることで、卵管の狭い部分や塞がっている部分を再開通させる方法です。

これは、あくまで狭い部分や塞がっている部分を再開通させるだけで、受精卵を運ぶ機能を回復させることではありません。
卵管が開通していることと、受精卵をしっかりと運搬できることは、別の話になります。
そのため、治療効果には限界があります。
妊娠に至らない場合には、また別の方法をとることになります。

また別の方法とは、卵管自体の直接的治療は行わずに問題に対応してしまう方法、いわゆる体外受精・胚移植です。

卵管内では、受精と、子宮内への受精卵の運搬と、受精卵の発育が起こっています。
体外受精・胚移植では、受精と受精卵の発育を体の外で起こせてしまいます。
その結果得られた受精卵を、卵管を経由させずに直接子宮内へ入れてしまうことで、受精卵の運搬に問題がある場合でも対応ができてしまいます。

このため、卵管の諸問題は、体外受精・胚移植で解決できてしまいます。

特殊なケースとして、卵管が水風船のように変化してしまう『卵管水腫』『卵管留水症』がありますが、こちらも手術と体外受精・胚移植で対応が可能です。


『精子』への対応

精子の問題への対応もまた、それ自体に直接治療を行う方法か、それ自体の直接的治療は行わずに(行えなくても)問題に対応してしまう方法に分かれます。

精子の問題への直接治療も、基本的には原因に対する治療となります。
これについては、片手間でお話するようなボリュームでもありませんので、また別稿でお話することにしましょう。

では、精子の問題が直接治療によって大部分解決できるかというと、そういうわけではありません。
解決が難しい例も多くありますので、そのような場合はやはり別の方法で対応します。

精子の問題によって起こることとは、受精効率の低下です。
ここでも、やはり体外受精・胚移植での対応になります。

体外受精の場合、卵子と精子を相対的に近い距離に持ってこれます。
精子の移動距離が長いとその間に脱落していきますので精子の数や運動性の影響が出やすいのですが、距離が近いことでこの影響を緩和できる可能性があります。
顕微授精に至っては、ゼロ距離で授精させることになりますので、精子と卵子が出会わないという心配がほぼありません。

精子と卵子が出会った後の過程で問題が起こっている場合は、体外受精・胚移植でも対応が難しいのですが、それは精子と卵子が出会ってからのお話です。
まず出会わないと話が始まりません。
これについては、体外受精・胚移植で対応が可能です。


『着床』への対応

着床への対応は、基本的に直接的な対応になります。

着床に問題を起こす可能性が高いポリープがあれば、ポリープ切除を。
着床に問題を起こす可能性が高い筋腫があれば、筋腫核出を。

対応は可能なものがほとんどです。
対応が難しいものもありますが、基本的にはやることをやるしかありません。
全く妊娠ができませんという状態の方は多くありませんし、そこまでの断定は困難です。

着床については、比較的シンプルです。
しかし、体外受精・胚移植であっても問題を解消できるわけではありませんので、きちんと対応を考える必要があります。


『受精卵』への対応

ここまで、『排卵』『卵管』『精子』『着床』について見てきました。
実はここまでは前座です。

これらすべてに対応した状態で、最終的には『受精卵』というファクターへの対応が問題になってきます。

『受精卵』というファクターの難しいところは、

・実際どうなっているかわかりづらく、評価が非常に難しい
・直接介入が難しい

ということです。

基本的に確認ができるのは、排卵までです。
その後に受精が起こっているのかどうか、受精卵がきっちり発育しているのかどうか、着床しているのかどうかは、妊娠が成立しなかった場合には確認ができません。

受精が起こりにくいかどうか、着床が起こりにくいかどうかについては、評価が可能ですし、対応方法もあります。

これに対し、受精卵についての評価は困難を極めますし、おなかの中で進行している限りは対応方法もありません。

状態の良い卵子を選んで排卵させたり、受精卵のクオリティを確実に上昇させたりする方法はありません。
受精卵に対する直接介入はできないということです。

では、この問題をどうやって解消していきましょうか。

確実に解消する方法はありませんが、緩和する方法があります。

それは、体外受精・胚移植です。


次回予告

今回は、不妊の原因と治療についてお話しました。

そして、最終的に残る受精卵という問題は、体外受精・胚移植で緩和することができるということをお話しました。

これこそが、現代の治療は体外受精・胚移植を軸に考えるということの理由です。


そこで次回は、なぜ体外受精・胚移植で受精卵の問題を緩和できるのかということに焦点を当ててお話をします。

こちらも併せてどうぞ。


妊娠を希望される皆様が、幸せな結末へたどり着けますように…

たなかゆうすけでした。

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