ベトナム人が会社で炊飯器を買った話
はじめに
私たちがハノイに進出して、8ヶ月ほどが過ぎた、ある日の事。
なぜか炊飯器を抱えて出社してきたベトナム人の女性スタッフのハンさん(仮名)。
「今日から私たちは社内でランチを食べようと思います。この炊飯器でご飯を炊いて、おかずは皆が家から持ち寄ります。あなたも一緒に食べましょう!」
なるほど、その発想はなかった。炊きたてのご飯が社内で食べられたら最高だよね。
こうして、社内でのランチ会の日々が始まりました。
コミュニケーションの大切さ
女性スタッフが当番で台所で米を研ぎ、ご飯を炊いてくれます。お昼前になると、炊飯器から蒸気が出てきて、お米の甘い香りが漂ってきます。社内のスタッフからクスクスと笑い声が漏れる。
なんか皆がソワソワしだす。お腹が空いたんだろう。そりゃそうだ。
そしてお昼。
それぞれの家庭からも持ち寄ったおかずを皆で頂きます。そして炊き立てのご飯。
なんというか、やっぱりスタッフの手作りという愛情があるかないか、という差は大きい。
そして、皆でお昼ご飯を一緒に食べながら、コミュニケーションをとる。
ベトナムでは、こうしたコミュニケーションの時間を本当に大切にしていると感じます。特にベトナム人の女性は本当にこうした気遣いが細かく、そして行動が積極的です。
炊飯器を買った本当の理由
さて、こうして始まった社内ランチですが、実はハンさんが炊飯器を購入したのには理由がありました。
実は、私のハノイでの生活は落ち着いていましたが、その頃から食生活に行き詰まりを感じるようになっていました。
ハノイでは様々なベトナム料理を食べましたが、一通り経験して慣れてくると、やはり日本人としては食べ慣れた日本食が落ち着くよなぁ、と思うようになります。
なんとなく食欲不振になり、いつの間にか夕食のみの一日一食の生活になっていました。
不思議なもので、朝と昼を食べない生活を続けると自然にお腹も空かなくなります。
仕事が忙しいという事もあり、ある程度、気が張り詰めた生活の中で、私は至って健康なつもりでしたが、食事も食べずに仕事ばかりしている私の事を、ハンさんは心配してくれていました。そして、さり気なく女性スタッフ達と相談し、社内でランチの炊飯というアイデアを考えてくれたのでした。
きっかけは、彼女達が私を事を心配してくれたからだったのです。
私は、彼女達のそんな気持ちが嬉しくて、なんだか胸の奥が暖かい気持ちになったのでした。
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