第804回 TVにはTVにできることがある

1、昨日TV見た?と言われても大丈夫

本日はほんとにブログのネタが見つからなくて

久しぶりにNHKの歴史番組を見て、その感想を記そうと思いました。

リアルタイムでこの手の番組視聴するのもう何十年ぶりだろう、という感じです。

2、文字のない時代?

取り上げる番組は

歴史秘話ヒストリア「謎の古代遺物がモノ語る」


物語るとモノが語るという掛け言葉ですね。

期せずして考古学ネタ回。

「文字がない時代」ということで縄文・弥生・古墳時代から一つずつ紹介されていました。

縄文時代からは土偶。

縄文時代の女性の姿を土偶から再現するという企画に挑戦していました。

京都橘大学名誉教授の猪熊兼勝しの監修の下、

髪型は結髪師(けっぱつし、日本髪を結うことができる職人)が悪戦苦闘。

流石に違和感なくまとめられていますが、

本当に縄文時代にこんなに手の込んだこともやっていたのか、というくらい美しい。

ここに櫛や化粧も再現。

流石にここまで着飾っていたのはハレの日のみだろうとの見解がしめされています。

続いて登場したのは東京都立大学教授の山田康弘氏。

縄文人の死生観を「循環」と捉え、

子どもを土器棺に入れて埋葬する形態も

土器を女性の身体に見立てて再生を願ってのことという解釈。

その場面で縄文時代の葬送の再現VTRが流れます。

土偶を打ち欠くシーンも含まれていますが、これに関しては特に説明がなかったのがちょっと残念。


弥生時代からは銅鐸。

テーマは大きく分けて2つ。

まずは使用方法について。

南あわじ市の工事現場から偶然見つかった銅鐸に舌があったことに注目。

全国で銅鐸の出土例は500個ほどあるそうですが、そのうち舌があるのは2例のみとのこと。

実際に現代の鋳物師による再現が行われます。

1回目の鋳造では炭酸ガスが出てくるので表面が穴だらけに。

3回ほど繰り返すとそれはなくなるという説明。

さらに一つの鋳型から量産できたことが確かめられ、

現代の職人の談では1日10個はできたのではないかとのこと。

重要なデータです。

ここで再び出土遺物の銅鐸に話はもどり、突帯のすり減り状況から一定の方向で鳴らすされたことを見出し、

鈕に複数方向にのびたヒモの痕跡があり、土器に描かれた様子も参考にして鳴らし方が復元されます。

2つ目の論点は神戸市の桜ヶ丘5号銅鐸に描かれた表現について

謎の道具(先がH型になっている長物)を持った人物の足元に魚が泳ぐという絵について、

セインズベリー日本芸術研究所研究員の内山純蔵さんの導きで

田堰を開けて水を張った水田に鯉が入り込んだ瞬間を切り取った絵だと解釈しています。

同じ銅鐸の他の絵も水田を巡る風景が描かれていることもあり、

豊穣の願いが込められていたのでないか、と結論付けられていいます。


古墳時代からはよろい。

群馬県榛名山の噴火による火砕流で鎧を着たまま息絶えた人骨が見つかったところから議論が起こります。

実は発掘調査で見つかったのは、よろいの男(40代)だけでなく、成人女性(30代後半)と10歳未満の子どもと乳児。

これを王の一家が集落に住む住民を避難させ、最後まで残っていた姿だということが推定されています。

これをどう解釈するかで、3者の仮説をそれぞれ紹介しています。

①群馬県立歴史博物館特別館長 右島和夫説。

鎧は男が身につけていたもの以外にもう一領出土しており、

王の家族が最後に宝物を持って避難しようとしたのではないか。

と考えるもの。

②群馬県埋蔵文化財調査事業団上席調査研究員 杉山秀宏説

倒れ伏した方向から山の神を沈めようという儀式をしていたのではないか。

というもの。

③明治大学准教授 若狭徹説

鎧は戦いの象徴。王は噴火を続ける榛名山に戦いを挑んだのだ

と考えるもの。

みなさんはどの説が気になるでしょうか。

3、やはりTVからも学びがある

いかがだったでしょうか。

文字の記録のない時代、といっても中国には文献がありますし、

縄文・弥生・古墳だけが考古学の対象ではないのですが、というモヤモヤはありつつも、

テーマを絞って各分野の最新研究成果を取り入れた紹介の仕方が見受けられて

正直予想以上に得るものがありました。

たまにはTVもいいかもしれませんね。


本日も最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。


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