第701回 国会会議録でみる文化財 その7

1、第5回国会⑤

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を使って「文化財」という言葉が国会でどう語られてきたのかを

少しずつみていくこのコーナー。

ちなみに前回はこちら。

2、第5回国会 衆議院 文部委員会 第29号 昭和24年9月26日

ここでは法隆寺の五重塔心礎内の埋蔵物について議論がなされています。

論点は国宝としてどこまで公開に付すべきかということ。

現在でも信仰的な観点から非公開とすべきところと

国民に広く共有すべきところとのせめぎ合いは課題になりますが

この時はまずは研究者が調査することを認めつつも、法隆寺側からその人選に少々口を出すようなことで決着を見たようです。

夢殿の救世観音のように、千年の秘佛でも公開の方向に進んでいるが、もともと心礎に埋納する舎利は人目に触れる想定のないものだということが決め手にあるようです。

3、第5回国会 参議院 文部委員会 閉会後第12号 昭和24年10月13日

ここでは文化財保護法案が第5回国会で審議未了となった後に

京都などの観光連盟、京都府と奈良県の教育委員会、国立博物館の職員組合、日本学術会議や各新聞社などから寄せられた意見書をもとに

再度検討した結果が報告されています。

内容は多岐にわたり、どれも興味深いのですが、1点だけご紹介すると

埋蔵文化財の取り扱いについて、出土遺物の権利関係の問題もあり、法制局の担当者からの説明も加えられているのが印象的です。

遺失物法を前提にしつつも、

新たな埋蔵文化財包蔵地を発見し、通知を出したものに報奨金を出すとか、

発掘調査で出土したものは基本国に帰属するも、発見者と土地の所有者に報奨金を出すとか

そんなことが語られています。

ここでしっかり議論されて出された法律なのに、報奨金制度使われた例はどれだけあるのでしょうか。

4、文化財が正しく守られるのはいつになるのか

いかがだったでしょうか。

今日的な課題として

・信仰の対象として非公開となっている文化財の取り扱い

・所有地が埋蔵文化財包蔵地(遺跡)となることの不利益に対する補償

の2点が議論されていることが分かります。

正直現場での運用を目の当たりにしているものとしては

どちらも未解決の問題で、もう一度国会でじっくりと議論してもらいたいとさえ思います。

時は第3次吉田茂内閣。

第6回国会の参議院本会議の場において、山口県出身の仲子隆議員から

先ず第一に世界に誇るに足る文化財というものが我が国にあります。先人が苦心して古き昔から作り上げたこの文化財、在るものはこれは国宝となつておる、これが十分に保護保存せられておるのであるかどうか。更に又これを世界に示すために十分展示し、人に見せるというような組織方法ができているのであるか、これらの点が一つの問題であります。

という質問が出されるように、文化財の置かれた状況は現在からするととても考えられないようなものだったことは想像に難くありません。

さて今回で第5回国会での文化財に関する議論は終わりますが、

さて、いつになったら文化財保護法は制定されるのでしょうか。

第6回国会 衆議院 文部委員会 第8号 昭和24年11月22日では

原彪委員長が

参議院側としてはこの臨時国会に出したいという熱意に燃えております

と述べられ、昨年のような審議未了とならないよう、先に衆議院の意を組み入れた素案を作ることについて了承を得ていますので

もう少し先を見ていこうと思います。


本日も最後までお付き合いくださりありがとうございます。

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