第740回 まだまだ希望を捨てない若人に光を
1、質問箱の正しい使い方
本日は質問箱に頂いたものを少し掘り下げていきたいと思います。
ちなみに質問箱というサービスをご存知ない方に少しだけ説明すると
送る側は匿名で、回答は連携しているSNSでシェアすることができます。
私も最初は「質問くれる人なんているのか?」と半信半疑でしたが、
なんともうすぐ100件目に突入しそうなくらい様々な質問を頂いておりました。
特別のお知らせがあるとき以外はTwitterの固定ツイートとして私のTLの最上位に掲示してありますので、ぜひ遠慮なくお寄せください。
2、斜め上からの回答かも知れませんが
さて今回質問いただいたのはおそらく考古学専攻の大学2回生(2年生)の方で、
発掘調査のバイトもなくなり、図書館も閉まっているこのご時世でどう専門の勉強をしていったらいいのか、という趣旨の内容でした。
一部重複もしますが、私なりの回答を記していきます。
まずは私自身の大学2年生の頃を思い起こしてみますと
発掘調査のバイトが面白くなってきて、長期休み意外にも週2回ほど参加させていただいていました。
大学のOBの方に紹介してもらった現場で、
基本的なスキルを学ばせてもらうとともに、結果的にはその後の専門分野を選ぶときにも大いに影響されました。
学部時代を過ごした大学はゼミも2年生から始まりますし、
院生の指導の元に大学の調査で出土した遺物の整理も手伝っていました(こちらは無給)。
大学の図書館で興味のある論文をコピーして集めていましたし(全部読んだとは言っていない)
どっぷり考古学に浸かっていることができたな、と振り返って見れば思います。
そんな中で、後悔していることとすれば外国語の勉強をもっとやっておけばよかったな、ということ。
やっぱり考古学専攻だと、同級生でもエジプトが、とかマヤ文明が、とか希望に満ちてゼミに入ってきてはいても
外国語の論文を読めなくて、結局は卒論のテーマは地元の古墳を、とかに収まってくるんですよね。
私は第2外国語は中国語でしたし、なぜかイタリア語も関心ありましたし、たまたま中東の研究が盛んな大学だったので、ヘブライ語もかじったりしました。
しかしどれも長続きしませんでした。
英語も全然ダメです。
いくら専門が日本国内の遺物・遺構を対象としたものであっても、
文化というのは交流もありますし、海外に源流があったりするものです。
周辺地域の最新研究を翻訳を待たずに取り入れることができる、というのはアドバンテージになるでしょうし、
昨今は英語で研究成果をプレゼンするのは研究者の必須スキルになっているでしょう。
語学ができないために、研究者への道を諦めるというのは悔しいですよね。
語学の基礎くらいなら自宅からでも、YouTubeの学習系からでも得るものはあるでしょうし、
さらに深めたいならオンラインでの教室だっていくらでもあります。
割り切って学習に取り組める意欲があるのなら、語学に振り切るのはかなり効果的な時間の使い方だと思いました。
3、やっぱり考古学が好きだから
ただ、そうは言っても、20歳の頃の自分がそう言われたら素直に語学に没頭できたか、と想像すると心許ない気がします。
やっぱり考古学に触れていたい
きっとそう思ったでしょう。
時間がある、ということだけであれば「考古学史」にハマってみるのをオススメしたいところですが、
図書館が使えない、という条件では厳しいですよね。
ならば逆に最新トレンドを追ってみる、というのはどうでしょうか。
例えば発掘調査出土情報。
少し前までなら各種ニュースサイトで追うことができます。
今自分が関心のある時代・テーマに少しでも関連のありそうな出土例を集めて
把握しておくのも良いのではないでしょうか。
さらにそこで得た情報を元に、全国遺跡報告総覧で類例をしらみつぶしに探してみるとか。
考古学の基本は「集成」だと私は思います。
もちろんデジタル化していない情報も多いでしょうし、
実物を見ないと分からないことも多いですが
基礎データの収集は時間と根気がある時しかできません。
ちなみに私も今もっぱらこれをやっています。
いつかやろうと思っていた集成作業に時間をかけています。
もっと漠然とした状態で、気になるテーマを見つけるところから始めるのであれば、最先端の研究者がどんなことをテーマにしているのか、題名だけでも眺めてみるのはどうでしょう。
考古学関係では最大の学会である日本考古学協会での研究発表は全時代・全世界を対象としたものが集まっているので、
きっと何か引っかかるものが見つかると思います。
キーワードさえ決まればそれを頼りに参考文献という名の読みたい本リストが溜まってきます。
もうこのリストを作る作業自体がワクワクしませんか?
この作業に大いに役立つであろうサービス、
雑誌記事索引集成データベース・ざっさくプラスは5月31日まで無償で使えるようですよ。
どんな苦境でも希望を捨てなければ、まだやり方はある、と私は思います。
困っている若者になにか手を差し伸べたい、とそれぞれの立場でできることを模索している大人たちもいることを、その希望の一つと思ってくれると幸いです。
本日も最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。
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