第675回 カヤの葺きたては美しい

1、修復現場を見られるってワクワクする

先日こんなイベントに行ってきました。

東北歴史博物館今野家住宅母屋等屋根改修工事現場見学会

要は宮城県指定文化財の古民家の屋根葺き替え工事の見学に行ってきたのです。

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2、今野家住宅とは

今野家住宅は1769年建築の「ホンヤ」を中心に、石巻市北上から移築して屋外展示場となっています。

ホンヤの特徴は屋根の煙出し部分で、この地域特有の形状だそうです。

屋根は箱棟になっていて、後ほど紹介する建物ごとにそれぞれ異なっているのが興味深いです。

元々は北上川沿いの村の肝煎を務めた家で、

上級役人を迎える時用の座敷も設えてある格式高い構造になっています。

チューモンは幕末から明治のはじめ頃の年代が想定されていますが、

門の両側が馬や牛を飼うマヤや物置になっているコマヤとなっておりかなりの迫力です。

こちらはマルキグシという棟構造になっており、側面からみると棟にも茅が詰まっていることがわかります。

そしてベンジョ棟は芝棟といって屋根の上が花壇みたいになっており、

ニラやショウブが植えられるとのこと。

今回の修理とは関係ありませんがフロ棟や井戸、植栽に畑まで

移築前の姿をイメージできるようなゾーニングがされているのも特徴です。

「昔の家」というイメージにぴったりなのか

小学生の我が子等もけっこう気に入っています。

寒い時期に囲炉裏に火が入っていると

つい側で火にあたりたくなってしまいますよね。

直火の近くであったまると、どうして体の芯まであったまったような気がするのでしょう。

3、修理の道具と使い方

さて修理に関しましては

おおむね20年に一度は葺き替えをしているようで、ホンヤは葺き替えですが

チューモンは挿し茅といって悪くなった茅を抜いて、

開いたところに新鮮な茅を挿し込む工法が採用されたようです。

元請けさんは株式会社伝統建築研究所というところで

工期はは昨年8月から3月までの約半年。

金額も看板に掲載してあったので公表していいと思いますが、

4620万円だそうです。

萱葺自体は熊谷産業という専門業者が請負い、

職人さん等が道具の名前や

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使い方を実演で教えてくれました。

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萱葺の手触りを実感できたのは興味深かったです。

4、しいてあげれば

参加者は40人ほどでしたが、客層はなかなかコアなファンが多かったようで

職人さんがタジタジになってしまうような鋭い質問が飛び交い、

聞いているだけで勉強になりました。

このイベントを知ったのは東北歴史博物館のWebサイトをたまたま別件で確認したところ目に入ったことからでした。

そう、県内の文化財担当者である私自身も偶然出会わなければ見に行けなかったということです。

一方先日ご紹介した古代の鏡作りは

家族連れに混じって県内の同業者が私の他にも2名いたのと対照的です。

修理中の現場を間近で見て、担当する職人さんの説明を聞いて、質問し放題。

こんな機会なかなかないので、もっとPRして多くの方に足を運んでもらったらいいのに、と思ってしまいます。

現実的には殺到してしまうと狭い仮囲いのなかですから安全上の問題があるのかもしれません。

それにしてももったいない、という気持ちが消えてくれません。

新規顧客を常に呼び込まないと、その分野は下火になっていきます。

そうならないために、もう一捻りほしかったところです。

事業内容ではなく、システム上の問題ですね。

今後は葺き替えたばかりの屋根がどのくらいで馴染んでいくのか

変化を楽しみたいと思います。


さて、こうして宣伝できるのもあと数回。

3月1日に宮城県松島町で、講演会をメインとした歴史イベントを実施します。

入場は無料で、近代の地域史について、最先端の成果を目の当たりにすることができますよ。

100名が上限の会場に事前申し込みだけで70人を超える応募がありました。

ですが、いつもの常連さんだけではなく、

このようなイベントに参加したことのない方にもぜひ足を運んでいただいて

感想などをオフ会で語り合いたいと思いますので、

少しでも興味を持たれた方はこのnoteにコメントでもいいですし、

TwitterのDMでも、Facebookのメッセージでも構いませんので

ご連絡いただけると幸いです。


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