第1234回 2021年の歴史ニュース その1 海外編

1、年末モード加速

今年も残り少なくなって来ましたね。

そこで、恒例になりつつある、年末企画。

歴史に関する話題をジャンルごとに今年の十大ニュースとして勝手に選出します。

基本的にリンク切れしてしまったニュースは選外とします。

第1回目は海外ニュースから。


2、各地各時代バランスよく


①イタリア南部の古代ローマ都市ポンペイの遺跡で、現代のファストフード店に相当する食堂のカウンター跡が発掘




②イスラエルのティムナ渓谷で出土した紫色の繊維が紀元前1000年前ごろのものであることが判明


③スペイン南東部で4000年前の青銅器時代では女性が強い政治権力を保持していた可能性があると発表

④「死海文書」の新たな断片を発見

⑤中国国家文物局は、長江上流の四川省で3000年余り前の「三星堆遺跡」から黄金の仮面など新たに500点以上が出土したと発表


⑥エジプトで3400年前のアメンホテプ3世が築いた都市の痕跡を発見



⑦ベルギーの首都ブリュッセルでは、医師が患者に「美術館や博物館への無料入場」を処方する試験的なプロジェクト


⑧エルサルバドルのサンアドレス遺跡で人工的に積み上げられたと考えられる厚さ約5メートルにもなる真っ白な火山灰の堆積を発見

⑨オーストリアの世界最古の岩塩坑・ハルシュタットで見つかった2700年前の排泄物を分析し、ブルーチーズとビールを摂取していた可能性を指摘

⑩ヨルダンのトール・エル・ハマムで3600年前の隕石の衝突の痕跡か



3、中国の躍進と文化財の役割

いかがだったでしょうか。

ヨーロッパに中東、南米からの話題がありました。

やはり中国の話題が多く、地域的なバランスも加味して選出するのは難しかったですね。

三星堆遺跡は国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産登録申請を計画している、という話題もありましたね。

すでに展示会で我が国にも何度か出土遺物が来ているので馴染みもあり、

当然世界遺産の価値があるとは思いますが、

今年我が国から登録された縄文遺跡群と同様、地下の遺跡が本質的価値を有しているという課題は大きなものでしょう。

どのように価値を伝えていくのか、大いに関心があります。

そして一つ異色なのは⑦の美術館や博物館が「医師の処方箋」によって無料になる、という話題。

これは博物館業界にとって非常に示唆に富むものだと思うのですよ。

博物館、文化財の社会的意義についてかつてないほど問われる時代。

観光資源として消費されるのを危惧するのであれば

代わりに存在意義を示せるものが必要になってきます。

そこで明確に「人の心」に寄り添えるものがあるのだ、と主張できれば

違う目が出てくるのではないかと思うのです。

企画する側が見せたいものと来館者が見たいものとのズレが出ていることが

問題視されることもあり、中の人はこれまで以上に社会情勢に注意を払い

何が求められているのか、をアンテナ高く情報収集に励まなくてはいけないということです。

もしくはもっと対話を重ねて理解しあえるようにする、

そのような王道しかないのでしょうね。


今回も最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。




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