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第631回 史跡はどれも固有の魅力に満ちている

1、記念物ってなあに?

職場で購読している『月刊文化財』

第677号は「新指定の文化財ー記念物ー」が特集です。

「記念物」とはあまり聴きなれない言葉かもしれませんので

少し説明しますと、

史跡・名勝・天然記念物

が含まれます。

史跡・名勝は不動産的なもので

天然記念物は動植物や自然が対象になっています。

美術工芸品や建造物以外、と考えても遠からず、といったところでしょうか。

新たに国指定の文化財になったもののうち、記念物に含まれるものを紹介していく、という号になっていますが、

あまりにも件数が多いです。

というのも「追加指定」といって、調査の進展や整備計画の推進によって

新たな範囲を付け加えたりするものも多いからです。

とりあえず列記して、いくつかピックアップしてご紹介したいと思います。

ちなみに前号のレビューはこちら。

2、新指定文化財一覧

【特別史跡】
埼玉古墳群(埼玉県行田市)
 〈追加〉
無量光院跡(岩手県平泉町)
遠江国分寺(静岡県磐田市)
水城跡(福岡県太宰府市)
【史跡指定】
小山崎遺跡(山形県遊佐町)
磯浜古墳群(茨城県大洗町)
○上野国多胡郡正倉跡(群馬県高崎市)
神明貝塚(埼玉県春日部市)
午王山遺跡(埼玉県和光市)
光明山古墳(静岡県浜松市)
永原御殿跡及び伊庭御殿跡(滋賀県野洲市・東近江市)
安宅氏城館跡(和歌山県白浜町)
大元古墳(島根県益田市)
○讃岐国府跡(香川県坂出市)
引田城跡(香川県東かがわ市)
○阿恵官衙遺跡(福岡県粕屋町)
杵築城跡(大分県杵築市)
島津家墓所(鹿児島県鹿児島市他)
白保棹根田原洞穴遺跡(沖縄県石垣市)
〈追加〉
大野原古墳群(香川県観音寺市)
長崎台場跡(長崎県長崎市)
亀ヶ岡石器時代遺跡(青森県つがる市)
入の沢遺跡(宮城県栗原市)

阿津賀志山防塁(福島県国見町)
八幡山古墳(群馬県前橋市)
北谷遺跡(群馬県高崎市)
○幡羅官衙遺跡群(埼玉県深谷市・熊谷市)
里見氏城跡(千葉県館山市・南房総市)
下野谷遺跡(東京都西東京市)
川尻石器時代遺跡(神奈川県相模原市)
穴太廃寺跡(滋賀県大津市)
近江大津宮錦織遺跡(滋賀県大津市)
伊勢遺跡(滋賀県守山市)
古市古墳群(大阪府藤井寺市・羽曳野市)
上塩冶築山古墳(島根県出雲市)
中須東原遺跡(島根県益田市)
元寇防塁(福岡県福岡市)
須玖岡本遺跡(福岡県春日市)
釜塚古墳(福岡県糸島市)
御所山古墳(福岡県苅田町)
鬼ノ岩屋・実相寺古墳群(大分県別府市)
塚崎古墳群(鹿児島県肝付町)
【名勝指定】
成田氏庭園(青森県弘前市)
對馬氏庭園(青森県弘前市)
須藤氏庭園(青森県弘前市)
哲学堂公園(東京都中野区)
〈追加〉
多賀大社庭園(滋賀県多賀町)
英彦山庭園(福岡県添田町)
【特別天然記念物】
〈追加〉
白骨温泉の噴湯丘と球状石灰石(長野県松本市)

3、古代のきらめき

今回の指定では古代の官衙遺跡がいくつか含まれていたのはお気づきでしょうか。

文化財名称の前に○印を付したものがそれで、

4つほどあります。

官衙とは役所のこと。

旧国ごとに国府があり、郡衙があり、郷単位でも公的施設が見つかっている地域があります。

群馬県高崎市の上野国多胡郡正倉跡は郡レベルの役所ですが

何がすごいって、この「多胡郡」がいつできましたよ、という由緒を書き記した石碑が残っていることです。

石碑が先にあって、周辺に碑文に出てくる役所があったはずだ、ということで

市の教育委員会が発掘調査を実施。

平成24〜28年に実施した調査で、

南北210m、東西で125m以上の溝に囲まれた区画内に

大型の礎石建物跡が見つかりました。

瓦や壁土、炭化した米などが出土したことから、

税として集めた米を納める倉であったと推定されています。

香川県の讃岐国府跡も古くから場所について伝承がありつつも特定されていませんでした。

県の教育委員会が21年度から「讃岐国府跡探索事業」を開始。23年度から30年度にかけて調査で多数の建物跡が見つかりました。

その結果、官衙が成立する前(7世紀中頃)から20棟以上の建物が立っていたことや

周辺地域の地割と同様、計画的な方向性を持った官衙的な土地利用(建物の配列がコやロの字状に)の段階を経て、小規模な建物が密集する中世的な姿まで時代変遷を追うことができるようになったようです。

福岡県の阿恵官衙遺跡でも幅21mの古代官道と正倉と政庁とみられる掘立柱建物跡が見つかっていますし、

埼玉県深谷市・熊谷市幡羅官衙遺跡群では石製模造品を使った祭祀の跡が見つかっています。

4、網に引っかかることだけでも重畳

いかがだったでしょうか。

古代の遺跡は規模も大きいですし、

ある程度規格が決まっていますので各地での比較がし易いという面もあります。

古墳や縄文時代の貝塚と並んで整備されて史跡公園になっている例が多い

遺跡でもあるのではないでしょうか。

ちなみに今号では新認定の登録文化財も掲載されておるのですが、

建造物の件数が多すぎて紹介を断念しました。

新たに指定・認定された文化財が多いということは

それだけ地域で守っていこう、と思えるものが増えているということ。

まずはそれを寿ぐことが大事ですね。


本日も最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。


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