第381回 失われる景観

1、見過ごされがちな文化遺産

突然ですが、火の見櫓(ひのみやぐら)ってご存知ですか。


その名の通り、高所から火災を知らせる鐘を鳴らすのが本来の役割です。

古くは江戸時代から用いられ、昭和初期には全国に整備されていきました。

戦後に119番の電話による通報が普及したことや防災行政無線の整備によって姿を消していきました。


その性質ゆえに、集落全体を見渡せる位置にありますし、よく見ると地域的な特徴があったりするので、建築やデザインの視点から評価されることもあります。

考古学的に研究するのも面白いのでは?と思えてきますね。

もう誰かやってますかね。


全国を見渡すと近代化遺産として国の登録文化財になっているものもあります。

たまたまわが町に残っていた3基のうちの1基が解体されてしまい、悲しい気持ちになっていたのですが、ふと

どれくらい残っているものなのだろうか。

という疑問が生じました。

子どもの頃は感心がなかったからか見かけませんでしたが、

学生時代にフィールドワークしていた茨城ではよく見かけたような気がしていました。

2、火の見櫓の数は

早速検索してみると

広く収集するサイトは二件見つけることができました。

【火の見櫓図鑑】

24都府県 1332基 掲載

【建築デザインマニアック】

46都道府県 1313基 掲載

同じくらいの件数を拾っていますが、案外被っていませんでした。

この二つのサイトからミヤギのモノを拾ってみると


わずか50基。

特に仙台なんてもはや1基しか残っていないということでした。


もちろんまだ見落とされているものもあるかと思いますが、

消えゆく景観であることはよくわかるかと思います。

さらに言うと老朽化が進んで今後も撤去解体が進んでいってしまうことと思います。


わが町で撤去された一基も古くからある集落の中央、三差路にあり、一里塚やそれを示す榎の大木や天保の飢饉があったことを示す供養碑があった場所でした。

地域住民の安全のためにはやむを得ないかもしれませんがどんどん景観の構成要素が失われてしまうのは少し悲しいですね。

3、現代に生きる火の見櫓の意義

地元消防団がホースを干すのに使われたり、火事を知らせる半鐘の代わりに行政防災無線のスピーカーを設置したりと現役で使われている例もあります。


東京都江戸川区では景観形成要素の一つとして大事にされている様子も伝わってきます。

これはとても恵まれた例ですが、

見方を変えることでありふれた景観の中にも、唯一無二の、その土地の歴史を物語るような特徴が見いだせるかもしれませんよ。

みなさんの周りにもまだ火の見櫓残っていますか?

今ならネットの力を借りてみんなで図鑑を完成させられるのかもしれません。


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