第682回 歴史史料の記録保存と活用事例後編
1、活用事例
ちょっと間が空いてしまいましたが、
2月29日に行われた上廣歴史資料活用講座で学んだことシェアの後編をお届けします。
前回はこちら。
2、挑戦する前にしっかりと戦略を
聖心女子大学の酒井一輔専任講師の
「市町村立博物館と教育普及、地域連携」
という講演を拝聴いたしました。
酒井さんは以前千葉県香取市の伊能忠敬記念館にお勤めだったということで、
どのように教育普及と地域連携に取り組んで来館者数を増やしたか、
という具体的なお話をうかがいました。
マクラとして話題に出されたのは泉佐野市の歴史館の話。
最近はふるさと納税で話題の市ですが、
2004年に財政非常事態宣言が出され、2009年には財政再建団体へとなってしまう事態に直面していました。
その中で歴史館の存続が危ぶまれたとのこと。
市民の支持がなければ、財政を理由に削られてしまうのが
文化施設だということを意識していかなくてはいけない、という趣旨でした。
そこで香取市でやったことは何か。
まずは課題の分析。
東日本大震災以後、地域全体の観光客数の減少に加え、
もともと伊能忠敬に特化した資料館だったことから入館者層の偏り(高齢男性が多い)があったこと。
そこから最初のターゲットを小学生の団体客、校外学習の目的地となることを目指したのです。
そこには学校行事が恒例化しやすく、いってみれば「固定客」になりやすいという目算があったとのこと。
ここからがすごいのですが
徹底的に相手の立場になって考えること、が実践されています。
例えば、校外学習先を探している学校の先生がどんな情報を求めているか、を的確に読んでいきます。
まず学習効果の高い時間にするため、練りに練られたワークシートが用意してあります。
Webで公開していますので、ぜひご覧いただきたいのですが
全部で8種類用意され(平成26年1月現在)、1枚を解くためにかかる時間は、10分程度です。児童・生徒の学年や習熟度、見学時間にあわせて、適宜利用することができます。
という状態。なかなかここまでできている館は少ないのではないでしょうか。
作成にあたっては市の教員たちと協議しながら進め、学校での学習内容との
連動に配慮されたものになっているとのこと。
あとは穴埋め式で答えが一つに決まること、を重視しているとのこと。
よくある
感じたことを自由に書いてみよう
なんて設問だと書けないもんですよね。
さらに痒いところに手が届く、とでも言いましょうか
見学の申し込みから当日までの流れがもらさず記載されていますし、
周辺の観光施設が紹介されていてうまく組み合わせた社会科見学ができるよう配慮されていますし、
団体でお弁当を食べる場所の説明までしていたとのこと。
3、大事なのは想像力と創意工夫
いかがだったでしょうか。
私自身はつい自分のところの展示施設の悪いところばかり言い訳にしてしまっていたな、と反省しました。
見学者の視点に寄り添って、想像力を働かせれば
もっともっと工夫できることあるよな、そう考えが改まりました。
今は自粛ムードですが、落ち着いた頃に展示で使いたいアイディアが浮かんできました。
いつか私もこのような場で先進事例としてお話できるような取り組みを実践していきたいと決意を新たにしたところ。
本日も最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。
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