第1087回 人々の暮らしそのものに価値がある
1、研修会参加メモ
本日は文化庁主催のオンライン研修会「文化的景観保護実務研修会」に参加したので
それに関することを少し述べたいと思います。
2、魅力的な制度
まず「文化的景観」とは下記の通り定義されています。
地域における人々の生活又は生業及び当該地域の風土により形成された景観地で我が国民の生活又は生業の理解のため欠くことのできないもの(文化財保護法第二条第1項第五号より)
ちょっと難しい言葉なので実例をあげてかみくだいてみると、
長野県千曲市の棚田や
京都府宮津市の舟屋など
人々の暮らし、とくに地域独特の生活様式が景観に現れているものを保護していこうという制度です。
現時点で全国に70箇所が選定されているとのこと。
身近な東北・関東地方では岩手県一関市の骨寺村の景観(中世の荘園時代まで遡る!)や
東京都葛飾区柴又の帝釈天門前町などが選定されています。
とは言え、他の文化財累計でも言えますが「西高東低」が否めませんね。
初めに文化庁の担当調査官から制度説明などがなされましたが、
その中で印象に残っているのは
絵画や物語の舞台となるだけでは「文化的景観」とは言えない。そこに暮らす人々の「生業」が滲み出る景観でなくては
と言う趣旨の言葉。
まさに我が町のことを言われているかのようでぐさっときました。
さらに続く話は「現状変更」について。
従来、文化財は指定された当時からの「変更」には厳しく、
現状を護ることに注力されてきたきらいがありました。
ただ「文化的景観」においては
景観に対してよい影響を与える「現状変更」を積極的に行なっていく
ことを重視しているとのことでした。
そして、行政ではなく地域にノウハウを蓄積していくことを大切にしたい
とも。まさにその事例として後段に登場したのが岩手県遠野市の取り組みでした。
もう文化庁主催の研修で何度遠野市の担当者さんの話を聞いたことか。
それだけ先進的だということなのでしょう。
毎回、学びはありますが、正直ため息がでます。
なんでうちではこれができないのだろう。
今回は案内サインの事例です。
民俗学の古典「遠野物語」の舞台として知られる遠野市の山口集落では
県・町・民間でそれぞれバラバラに案内看板を設置して、非常にわかりづらかったと。
それを地域の人たちが「サインとは何か」という勉強会から始めて
デザインも自分たちで描いて、なんなら基礎掘削まで重機を借りてやってしまったということ。
わざわざ木製の看板にして、数年単位で塗り直す必要があるので
地域で愛着持って管理していくことになると考えた、というから思考法から違います。
3、我が町もいずれは
いかがだったでしょうか。
「国宝・重要文化財」「史跡・名勝」「伝統的建造物群」など文化財行政において、景観を護る仕組みは数あれど、「文化的景観」は一味ちがうようです。
逆に我が町の「特別名勝」より積極的に景観形成が図られているようで羨ましいです。
どうしたら地域の人たちに経験を蓄積してもらえるような仕組みができるのか。
私ももっと地域に出て行って話しないとだめかなぁ。
人が減らされて書類仕事しているだけで、あっという間に営業時間が終了してしまう、とか言い訳してる場合じゃないですね。
本日も最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。
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