第644回 不幸な文化財を生まないために

1、文化庁がようやく本気を出してきたのか

文化庁が所在不明となっている文化財についてのページをリニューアルしたようです。

資料によるとポイントは3つ。

①見やすくした

 平成30年度末時点で国指定文化財10524件のうち、147件が所在不明となっていることが一目瞭然です。

②検索しやすくした

 盗難の有無や指定区分(国宝か重要文化財か)、種別(工芸品・絵画・彫刻)、都道府県や指定年などで絞り込みができるようになっています。

③対象を広げた

 地方(都道府県や市町村)指定、未指定文化財でも所在不明の文化財があれば掲載する、という方針のようです。

2、何が期待できるのか

実はこれまでも年に何回か

情報提供のお願い

みたいな文書が回ってきてたんですよ。

とあるお寺から仏像がなくなりました。
何か情報を目にされた方はお知らせください。

的なやつなんですが、FAXの転載が繰り返された為か

画像が真っ黒になって何がなんだか分からないやつ。

記述をもとに検索して画像を確認していたのですが、今後は一覧性の高いサイトで容易に情報にアクセスできそうですよね。

サイトで公開されている所在不明リストを見ると

やはり仏像や仏画は盗難が多いようで、人気のない仏堂から盗まれてしまうことが多いのでしょうか。

一方で刀も「来国光」や「長船長光」「長谷部国重」など名だたるものが数多くリストに上がっていますが

こちらは所有権の移転の際に必要な手続きをしなかったために所在がわからない、ということが多いようです。

文化財保護法 第三十二条 

重要文化財の所有者が変更したときは、新所有者は、文部科学省令の定める事項を記載した書面をもつて、且つ、旧所有者に対し交付された指定書を添えて、二十日以内に文化庁長官に届け出なければならない。

盗難とは違うとはいえ、国民共有の財産である文化財が

どこの誰が所有しているかわからない、というのは問題なのでしょう。

知らないうちに国外に売り払われてしまうのもまずいでしょうし。

かつて浮世絵がたくさん流出してしまった時のように。

そして国指定の場合は何度も調査を行って所在確認を進め、

盗難にあったものでも現物を取り戻した例もあるようです。

一方で地方指定・未指定分は依頼があったものを掲載する、というスタイルのようで

現段階では都道府県指定が11件、市町村指定が4件、未指定が5件が掲載されています。

ちょっと寂しい状況ですね。

もちろん所在不明の文化財は少ない方がいいのですが

明らかにもっと所在不明の文化財はあるだろうに掲載までは至っていない、ということなのでしょう。

やはり仏像の盗難と刀の所有権移転手続き不備が目に着きます。

3、まだまだ発展途上

いかがだったでしょうか。

国指定はもとより、地方指定も未指定もしっかりと情報を公開して

善意の第三者がオークションサイトなどで盗品を買わなくて済むよう

このサイトを確認できるような流れが生み出されるといいですよね。

抑止力、とまではいきませんが犯罪に巻き込まれる人は減らせるでしょう。


さて今回も最後にPRタイムとさせていただきます。

来る3月1日にイベントをやります。

宮城県松島町で歴史講演会。

テーマは近代。

すでに50名を超える申し込みをいただいておりますが、

マックスで100名程度は入るハコなので

ご興味のある方はぜひご連絡ください。

鉄道や建築の話がメインとなりますので

今までの常連さんとは違った客層の方からも申し込みをいただいています。

このnoteにコメントでもいいですし、

TwitterでもFacebookでもなんでも連絡いただけると嬉しいです。

さらにお時間ある方は講演会終了後オフ会に参加しませんか?

まったりご飯かお酒を味わいながら歴史の話ができればと思います。

連絡お待ちしております。

本日も最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。

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