第771回 70年前にも議論される公務員削減の功罪

1、国会会議録検索システム

を使って「文化財」という言葉が国会でどう語られてきたのかを

戦後の第一回国会から少しずつみてきたこのコーナー。

ちなみに前回はこちら。

2、第12回国会 参議院 内閣委員会 第16号 昭和26年11月21日

ここでは行政機関職員定員法の一部を改正する法律案について

文化財保護委員会についても対象となり、必要な人員が確保できない、ということが議題になっています。

文化財保護委員会関係の行政整理の総数は二十八名で、内訳は事務局が十八名、国立博物館が九名、美術研究所が一名とのこと。

減らされた人数が28人ってこと?残った人数が28人?

続く答弁に

文化財保護委員会が発足いたしますに当りまして僅かに純増三十五名を数えたにとどまつたのであります。

という表現があるので、総数は不明ながら

人員整理された人数が28人、ということなのでしょう。

現在は都道府県や文化財建造物保存技術協会

のような外郭団体が請け負っている部分も直営でやっていたので

総数はそれなりに多かったのかもしれません。

国立博物館や奈良文化財研究所の整備が進む中、

直営工事として姫路城と松本城の修理を行っている(それぞれ職員3名)とのこと。

さらに来年度は福山城、金沢城、熊本城でも直営工事が始まると述べられています。

これに対し、

香川県出身の三好始議員は

来年度に入つて直ぐに増員しなければいけないのを今整理するというのはどうもおかしいような感じがするのでありますが

と疑問を呈しています。

それに対して政府からの有効な回答はなく、

これ以上問答を繰返しても無意味であろうと思いますから、質疑はこれで打切ります。

と呆れられています。

矢島三義議員からも

戰争中放置された仕事をここ二、三年の間に十何年分の仕事をするというような特異性があるかと考えられるわけです。そういう立場からこの文化財保護委員会の整理二十八名というものは、私はそういう方面の仕事に支障を来すのではないか

との質問があり

姫路城の修理に当つても一応疑獄の問題が表面に出ましたけれども、これは、やはり私は指導監督する人員に質の面においても量の面においても適正を得ていないというところに私はああいう不詳事が起るのじやないかと思うのです。

と追い討ちをかけています。

「姫路城で起きた不祥事」も気になりますが

煮え切らない政府の回答に対して矢島議員の

国民の生活安定とか或いは生活水準の向上というような立場からは、こういう文化財保護というものはペニシリン的な効果はないと思いますけれども、併し国家民族の百年の長い将来という、そういう立場から考えるときには、私はややもすればおろそかにされがちなこういう文化財保護というものは非常に重大なんではないか

という熱い言葉を挙げておきたいと思います。

3、寝食を忘れて国を憂う

いかがだったでしょうか。

公務員の定員削減、というのは最もわかりやすい支出減ですが

目先のコストカットで長期的にみて問題を大きくしてしまう、というのは

今に始まったことではないようですね。

文化財部門以外にも定員削減で起こりえる問題について

まだまだ議論は続いていますが、

三好始議員の

我々はこの定員法を審議を始めて最近は殊に忙がしくて食事もろくにとる時間もない、新聞も十分に読めないという状態で審議を進めておるわけであります。

という言葉が印象に残ります。

そのまま鵜呑みにするわけではありませんが、

政府の役人も国会議員も己の信念に基づいて、国の将来を考えていることは議事録を読んだだけでも十分に伝わって来ますね。


本日も最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。


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