第433回 もっと文化遺産の世界へ
1、文化遺産の世界 その2
先日紹介した文化遺産の世界。
親しくさせていただいているフォロワーさんが私の発信をキッカケに
会員となってくれました!
と喜んだのもつかの間。
会員番号が私と一つしか違わないじゃないですか。
余計なお世話ですが良い取り組みがもっと広まるように
送っていただいたバックナンバーを1号ずつ紹介していくことで
仲間を一人でも増やしていきたいと思います。
2、古地図の面白さ
今回ご紹介するのはVol.12 March-May
もう15年以上も前の号なんですね。
特集は
「古地図の中の世界観」
トップを飾るのは世界史の教科書でもよく登場する
オルテリウスの地図。
オルテリウスはベルギーのアントワープ出身で、1547年に「地図彩飾者」としてギルド登録されているのが公的記録の初出ということです。
神戸大学の長谷川孝治によるとオルテリウスの地図帳に対する思想は
①地図を歴史理解のための手段として位置付けていること
②古今東西の優れた地図を統一されたサイズで敢行すること
③新たな原図に関する情報提供を読者に要請していること
などが注目すべきと解説されています。
まさに日本では織田信長が雄飛しようとしている時代に
ここまで思想的裏付けを持って地図製作に望んでいたということに驚かされますね。
そして次に注目したのは
青山和夫「海のかなたの想像力の世界」
中世から近世にかけて描かれた地図に架空の土地がみられることを紹介しています。
14世紀初頭の「金沢文庫蔵日本図」に登場する
人の形をしていないものが住む北方の「雁道」
男を喰らう羅刹鬼女がすむ南方の「羅刹国」
が17世紀半ばの「行基菩薩説第日本国図」にも見られると言うこと
また16世紀後半の「南瞻部州大日本国正統図」には本州島の東方に
「松嶋」「東夷東嶋」「伊々嶋」など見慣れない島名がみられるということ。
個人的にはすごく気になるフレーズが含まれていますが、
北海道や周辺の島嶼であるとしてしまえばそれまでですが
位置的に宮城県の沿岸に大きな島があるようにも見えます。
金華山や気仙沼大島などが誇張されて伝わったのか
霊場としての松島がインパクトが強く、独立した島とみられてしまったのか
わかりませんが気に留めておきたいことです。
地図の年代的な変遷を見ることで
想像の世界と現実の世界がどう擦りあわされていくか、
途中並存したり、融合したりしながら正確な地図になっていく様が伺えます。
某ゲームを彷彿とさせますね。
3、考古学と政治
最後にもう一つ。
「私が影響を受けた考古学者(ひと)」
という連載記事で、樋口隆康氏が水野清一氏を紹介しています。
その中で特に印象深かったのは学問と政治の関係。
中国の雲崗石窟の調査報告書が32冊もの大型本として刊行されたのは時の首相吉田茂がワシントン講和条約締結の際に持参して
日本は戦時中でも中国で文化芸術活動をしていた
と主張したいという思惑があったという裏話や
敗戦直後に帰属が問題になっていた対馬での発掘調査で
弥生時代の遺跡から半島式の銅矛ではなく、九州式の銅矛が出土したことを発表したら
外務省が大変喜んだとか。
政治を含めた現代社会の影響を受けない純粋学問なんてありえないと
個人的には思いますが、特定の政治信条と安易に結びつけられる学問はちょっと危うい気もしますね。
翻って現代はどうか。
そんなことも考えてみますか。
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