第974回 2020年の歴史ニュース日本編その2 展示公開編

1、実際に見に行けなくても

年末の歴史ニュースまとめ第3段は博物館や史跡の展示・公開の話題を主に集めました。

例によって個人的に気になったものばかりなので、一般的な話題性の高さや集客はあまり基準になっていないのでご了承ください。

こんな状況下にあっても新たな施設のオープンもあり、コラボや新たな切り口で資料を紹介した例もあり、

まだまだ世界は楽しみに満ちている、と実感させてくれる企画ばかりです。

ちなみに昨年分はこちら。


2、答えのない時代に

①東京都渋谷区の太田記念美術館で「十二支が合体した浮世絵」が話題

今年の春は全国的に博物館の臨時休館や企画展示の中止がありました。

「おうちミュージアム」という企画に賛同した全国の博物館で

自宅でも楽しめるものを、と工夫を凝らして発信していましたね。

普段は見られない資料の画像を公開したり、

映像やVRで博物館を見学しているような体験ができたり。

遠隔地でなかなか行けない博物館の情報に接することができたのもよかったですね。

②和歌山県岩出市の根来遺跡で屋外展示施設がオープン

根来寺は最盛期には僧兵1万人を有したとされる一大宗教勢力。

実際の遺構面より1mも上に精巧なレプリカを大胆に復元したようで

写真からでも迫力が伝わってきます。

③台湾の故宮博物館で日本のゲームFGOに関連する特別キャンペーンを実施

日本でいうと東京国立博物館にあたるでしょうか。

かの地域で最も権威がある博物館が人気のゲームに登場するキャラクターの

元となった歴史上の人物に関連する資料をPRするという企画。

我が国発のゲームですからもちろん日本の歴史上の人物も大勢キャラクターとなっています。

もっと地域おこしに活用してもいいのではないかと思います。

④北海道浦幌町立博物館でコロナ関係資料の収集と展示を開始 

博物館の大事な機能として「資料の収集」があります。

今まさに歴史的な災厄に見舞われていることをどう記録するか。

地域に密着する資料館だからこそできることがあるのではないか。

いろいろと考えさせられる話題です。

⑤大阪府の弥生文化博物館を中心に地域の博物館が連携した「お札」集めで周遊を促す

御朱印ブームだと言われてもう何年も経ちます。

寺社はもちろん、お城でも取り組み始めているちょっと上質なスタンプラリー。

ダムカードやマンホールカードも集客に一役買っていますよね。

博物館も見学客の周遊を促すような企画を積極的にしていく必要がありそうですよね。

⑥北海道白老町にアイヌ文化の発信拠点「ウポポイ」が開館

ついに開館したアイヌ文化の総合博物館。

「民族」がテーマだとどうしても政治的な問題に直面せざるをえなくなります。

遺骨問題などこの施設ができたことで解決に進むものもあると期待しています。

⑦広島県広島市の平和公園内で発掘された被曝遺構の公開

近代の遺跡でもその地域にとって特に重要なものであるならばしっかりと発掘調査をして記録をするし、場合によっては保存公開も必要だという具体例として重要になってくるかと思います。

⑧東京・虎ノ門の大倉集古館で特別展「海を渡った古伊万里~ウィーン、ロースドルフ城の悲劇~」を開催

実は陶磁器が専門なので、どうしても行きたい展示。年明けもまだ会期が残っていますが…

⑨サントリー美術館で展示中の「新蔵人物語絵巻」が室町時代の同人誌だと話題に

切り口によっては話題になるという一例として紹介。

展示企画を行う学芸員たるものはサブカルを含め流行の最先端にも目配せして

トレンドをつかまなくてはいけませんね!

⑩愛知県清須市に「あいち朝日遺跡ミュージアム」がオープン

このご時世に新規施設をオープンするという挑戦。

同じ愛知県の陶磁美術館でも「YAYOI・モダンデザイン」展が開催されていました。

そう、世間では米作りをテーマにしたゲームも流行していましたから

先年の縄文ブームに続いて弥生時代ブームが到来しているのかもしれません。

3、受難の時代

いかがだったでしょうか。

2020年は新型ウィルスに翻弄され、世界では多くの博物館が閉館に追い込まれるだろう、と言われています。

我が国においてもこの災厄が転換期になって文化施設のあり方も大きく様変わりしていくことは想像に難くありません。

国立の大きな博物館や、民間の優品を多く所蔵する都市型の美術館は

生き残るために大きく変革が求められ、競争が激しくなることでしょう。

一方で利益を上げることが前提にない地方公立館はどうなるのか。

税収が減り、自治体の予算も恐ろしい事態になっていますので

縮小・閉館を求められるところも多くなってくるでしょう。

こんなご時世でも必要性を主張できるとしたら、

市民や首長などから理解を得られるにはどうしたらいいのか。

互いに情報共有を図りながらともに生き残っていく方策を模索したいものです。

これまでも危機を乗り越えてきたのですから。


本日も最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。


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