第855回 国会議員が視察にやってきた その3

1、国会会議録検索システム

を使って「文化財」という言葉が国会でどう語られてきたのかを

戦後の第一回国会から少しずつみてきたこのコーナー。

ちなみに前回はこちら。


2、第13回国会 参議院 文部委員会 第6号 昭和27年2月15日

高田なほ子議員が福井と岐阜に視察に行った結果を報告しています。

当時福井県内では重要文化財92件、重要美術品は14件、史蹟名勝天然記念物は25点あったとのこと。

このうち昭和25年に重要文化財神宮寺仁王門が応急修理されたこと、神宮寺本堂は修理中、丸岡城は再建工事中と報告しています。

これらは越前地方に偏っており、小浜地域の文化財については今後の課題となっていると述べられています。

岐阜県の高山地方では飛騨国分寺本堂が重要文化財の指定申請中、他にも飛騨国分寺塔跡、高山陣屋跡、白川郷の民家、無形文化財として、神楽、獅子舞、闘鶏楽、雅楽等があるが、地域の人々の文化財に対する関心がまだ非常に薄いとの指摘も。

予算は少しずつ計上するよりも、できることなら今荒廃しかかつているのが多いのであるから、むしろ数年のうちに思い切つて予算を計上して、重点的に一度に改修してしまつたほうが、予算の上でも経費が少くなるのではないかという御意見が高くありました。

との力強い発言も見られます。

3、第13回国会 参議院 大蔵委員会 第42号 昭和27年4月17日

この頃、アメリカ軍の基地に対して日本の土地を無償貸与することについての議論が続けられていますが、

その一環で、貸与する土地の中に埋蔵文化財があったらどうするのか、という興味深い話題も触れられています。

質問に立ったのは日本社会党の木村禧八郎議員。

フィリピンの例を挙げ、埋蔵文化財や墓地などに対する住民の権利留保について協定内に記述があるのに、日本はなくて良いのか、という趣旨。

応答したのは岡崎勝男大臣。

フィリピンにおいては日本よりも広大な地域一帯を軍事基地としてアメリカ側に提供し、その基地内においてはすべての裁判管轄権等をアメリカ側に讓渡するという形をとるので、単純には比較できないと反論します。

事前に埋蔵文化財があると分かっている所があれば同意しなければよい、だから敢えて協定に明記はされていないのだ、ということも話しています。

まあこれは外務官僚から政治家に転身した方の認識なので

そんなもんかと思いますが、現場レベルとしては、なかなかそんな建前は通用しないのだろうな、と。

国益を振りかざされたら、埋蔵文化財を守るために不同意とすることができたとは到底思えませんね。

実際沖縄では基地内に埋蔵文化財があることは周知の事実ですしね。

そもそもすでに戦後75年。太平洋戦争中の遺構ですら埋蔵文化財として取り扱われるようになってきました。

3、今よりも広い「文化財」

いかがだったでしょうか。

まだまだ戦後の荒々しい雰囲気たっぷりの国会議事録なので

ぜひ直接ごらんになってみてはいかがでしょうか。

またちょっと脱線しますが「文化財」というキーワードで検索すると、新聞やテレビを「文化財」と呼んでいる用例があり驚きました。

文化的な情報を得るためのツール、という意味合いで使っているのでしょうが、

現代ではピンとこないですね。

そんなことにも気づかされました。


本日も最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。

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