第683回 国会会議録でみる文化財 その5

1、第5回国会③

国会会議録検索システム

を使って「文化財」という言葉が国会でどう語られてきたのかを

少しずつみていくこのコーナー。

ちなみに前回はこちら。

2、第5回国会 参議院 図書館運営委員会 第2号 昭和24年4月22日

まずご紹介するのは「文化財」と言う言葉は話の流れで少し登場するだけですが

個人的に関心のあるテーマだったので取り上げたいとともいます。

ここで議論になっているのは国会図書館の資料収集について。

現在わが国では国立国会図書館法第24条で公的機関が出版物を発行した際、国会図書館に納めることが義務付けられています。第25条ではそれ以外の者も

文化財の蓄積及びその利用に資するため、発行の日か ら三十日以内に、最良版の完全なもの一部を国立国会図書館に納 入しなければならない。

とされています。

今回の議事録を見ると、その部数が議論されているようで

国会図書館館長の金森徳次郎の説明では

公的機関は50部!、民間は1部を納めることとなっていたようで

一律に50部というのは負担が大きいので改正したい、と言う趣旨。

金森は東京帝国大学法学部から官僚になり、法制局長まで務めたエリート。

戦後は吉田茂内閣で閣僚となり、国会図書館が開設されると初代館長として礎を築いた人物です。

国立国会図書館東京本館の図書目録ホールには金森の

真理がわれらを自由にする

という書が掲げられているとのことです。

何度も訪れたのに完全にスルーしてました…

次の機会に必ず見てこよう。

話を戻しますと当時の納本率は本が40%、雜誌が61%、新聞が97%となっており、想像以上に納本がされていない印象を受けます。

この事態を受け

日本の出版物がどんなものであるかという歴史的な記録が作れない

という憂慮をしています。

それを受けて現行の義務付けにつながっていくようですね。

その後レコードフィルムはどうするのか、という議論になってきます。

そこで質問に登場したのが徳川頼貞議員。

名前が示すとおり紀州徳川家の16代当主。

学習院中等科時代から音楽に没頭し、楽譜や音楽文献、古楽器類の収集家として知られ、「音楽の殿様」と称された筋金入りの音楽愛好家です。

十数年前まで施設の音楽図書館を有しており、そこでは約3万枚のレコードと楽譜を連携させて提供するシステムにしていたから、ぜひ国会図書館でも採用したらどうか、とう提言をされています。

やはり殿様のお話はスケールがでかい…

3、第5回国会 衆議院 文部委員会 第15号 昭和24年5月11日

4月27日から30日までの四日間、法隆寺金堂火災の実地調査を水谷昇議員が報告しています。

委員長である原彪が

私どももさながら目の前に見る思いがいたしました

と述懐したその報告は原文を見ていただくとして、

その末尾で文化財を守るにあたって、必要なものは

制度よりも人

と述べているのは非常に興味深いです。

法隆寺火災以來、いたいけな学童さえもが痛心の余り復興のための淨財を寄せております。われわれはマウント・ヴアーノンなるワシントンの家の保存運動に乗り出した一婦人にかんがみ、またモナ・リザの像が、ルーブル博物館から姿を消しただけで引責辞職したフランスの文相の態度を思い、この際文化財に対する世人の関心を大いに高めなければならないと存じます。

この発言は記憶に残しておきたいと思いました。

水谷は明治29年生まれの三重県選出。

地元の師範学校を卒業し、小学校の訓導、高校教諭を経て

町議、県議で経験を積んで国会議員になった叩き上げ。

経歴をみると言葉の重さも納得です。

4、年月を経たからこその見方

いかがだったでしょうか。

話題盛り沢山の第5回国会はまだまだ終わりません。

わずか70年ほど前のことですが

登場人物の評価も一定程度定まっていることから

発言と経歴を見比べながら議事録を読むということができるのが面白いです。

本日も最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。

次回もお楽しみに。



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