第711回 九州・四国へ戦後の代議士がゆく

1、第7回国会①

国会会議録検索システム

を使って「文化財」という言葉が国会でどう語られてきたのかを

少しずつみていくこのコーナー。

ちなみに前回はこちら。

2、第7回国会 参議院 文部委員会 第1号 昭和25年1月31日

三島通庸議員が1月12〜21日に九州地方へ視察した報告を述べています。

福岡、鹿児島、宮崎を視察し、時間に余裕があったため熊本と大分にも立ち寄ったとのこと。

まず第一声は九州の方々は文化財に対する関心が高くないのではないか、ということ。

福岡県福岡市の東光院と観世音寺を例に

仏像が国の指定文化財であるにもかかわらず、建造物が指定されていないため

補助を出して直すこともできず、保存に支障をきたしていると述べています。

さらには史跡である太宰府跡でも礎石が耕作などで動かされていることを嘆いています。

かの天満宮ですら、シロアリの被害を受けているとのこと。

熊本城を視察した際には、櫓は修理されているが、そのすぐ脇の倉庫が荒れている。

この倉庫も建築学的見地からすると大変面白いし、

今櫓内に置かれている展示物をこちらの倉庫に移したほうが

櫓は櫓で建築様式を堪能できるのではないか、との貴重な指摘もありました。

鹿児島県では天然記念物としての鶴について視察してきた模様。

なんと地元住民は田畑を荒らす鶴に困り果て、ぜひ指定を解除してくれ、という有様。

文化財の保存と住民の生活の両立という課題を目の当たりにしたようです。

宮崎県でも青島という天然記念物の自然が多く残るところを視察したようで

来訪者が踏み荒らすことを懸念されていました。

宮崎では他に西都原古墳群、

大分では臼杵磨崖仏

というメジャー所を見ていますが、

専門的なことはわからないとしつつも、国宝の価値はある、と報告しています。

3、第7回国会 参議院 文部委員会 第2号 昭和25年2月4日

続いて鈴木憲一議員の視察報告を見てみましょう。

愛媛県西条市の保国寺ではなんと住職から指定にして欲しくない、との要望を受けます。

保国寺は室町時代の庭園の代表格ですが、

指定を受けて全国的に知られてしまうと、荒らされてしまう恐れがある、とのこと。

また同じ愛媛県の八幡浜市では貴重な仏像が、小さく壊れそうなお堂に安置されていることを嘆いています。

西条市では土居構跡という史跡が個人所有となっており、特段の配慮が必要となるだろう。と考えていたようです。

それから高知県に入り、高知城のシロアリの被害の大きさに驚いたり、

天然記念物のオナガドリのも個人所有で絶滅に瀕していることに危機感を持ったようでした。

4、指定することの効果

いかがだったでしょうか。

第7回国会に入ってもまだ保護法は採択されません。

九州と四国の二つの地域をしたつしてきた代議士さんの率直な意見に触れることができて、いい機会でした。

ただ気になったのは当時課題だったことは

いまもまだ解決していないのかもしれない、ということが恐ろしくなりました。

これ以上傷まないように、荒らされないように、

文化財として指定することで周知を図り、修繕にも国の補助が得られる

そんな体制は今も昔もほとんど変わりません。

そして予算の駆け引きで事業が決まっていくところも。

逆に指定することで周知が図られてしまうと、許容範囲を超えた来訪者が訪れ、地元側の体制に支障をきたすことになっていまう、

そんな課題も現代と変わりませんね。


本日も最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?