第207回 望月の君

1、陰暦の調べ

明日は陰暦10月16日。

ちょうど1000年前のこの日に藤原道長が

この世をば わが世とぞ思ふ 望月の かけたることも なしと思へば

と詠んだと伝えられています。

ちょうど今空を見上げると、確かに強く輝く月をみることができました。

2、表層と真実

先ほどの歌の意味は

この世は私のためにあるようなものだ。欠けた部分のないあの満月のように。

という感じでしょうか。

これだけ見ると政敵を追い落とし、権力の絶頂にいる男の自負を感じますし、学生時代に習った日本史でもそのように説明されてきたように記憶しています。

しかし、実はそう単純な話では無いようです。

道長はこのころ糖尿病を患っており、視力も弱っていたようです。

一般的な平安貴族のイメージは

和歌と恋で優雅な暮らしをしている、というものかも知れませんが

実際は意外とハードワークで、不規則な仕事だったようです。

そもそも道長は順風満帆に権力を得たわけではなく、同じ一族とも激しい競争を経て出世してきたのです。

そういう目でこの歌を見直すと、

様々な辛酸を克服して到達した境地というか

全てを手に入れた代わりに失ったものに想いを馳せた達観というか

より深みのあるものに思えてくるから不思議ですよね。

3、変わるのは人ではなく社会

1000年の時の隔たりを経ても

現代人と同じように

のし上がるために苦労して、

ストレスに晒されて、

生活習慣病に悩まされる。

そんな姿を思い浮かべると親しみさえ覚えてしまいます。

本当の幸せとはなんなのか考えてしまいますね。

1000年前の最高権力者が味わえなかった楽しみを庶民の身で体感できる幸せを噛み締めながら眠りにつきたいと思います。

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