第1302回 世界五代東洋学研究図書館の一つ

1、読書記録303

本日は東北歴史博物館で開催中の特別展

知の大冒険ー東洋文庫 名品の煌めきー

https://www.thm.pref.miyagi.jp/exhibition/5971/

を見学してきたので、そのレビューです。

ちょうど

春の体験イベント「春のわくわく体験見本市 2022」

もやっていたので子どもたちがそこで遊んでくれているうちにゆっくり資料を拝見できました。

博物館のすぐそばでは「あやめまつり」も開催されており、

周辺が賑わっている様子でした。

2、偉人たちも学び続けた

さて、まずは東洋文庫ですが以前のnoteでも触れたように

ミヤギとの関連も深い資料群です。

三菱財閥の岩崎久弥が北京駐在のジャーナリスト、モリソンの集めた文献を購入したことが始まりです。

岩崎が購入する以前にも、コレクションが収蔵されていた北京の英国公使館周辺が義和団事件の戦火に晒されるなど危険と隣り合わせでしたが、

日本に到着した直後には東京湾を暴風雨と高潮が襲い、一部のコンテナが海水に浸ってしまう、という悲劇に見舞われます。

資料の洗浄・乾燥・装丁の取り替えなどに、多くの人々が不眠不休で当たったとのこと。

その時の作業記録が残され、今回の展示にも供されていました。

そして太平洋戦争末期には空襲を避けて宮城県に疎開させていたのです。

戦後も財政的な問題から東京に帰ることができない状態にあった資料群を地域の方々がどれだけ努力して保存し、輸送することができたのかが当時のニュース映像とともに紹介されていました。

そしてその現在に伝えられた資料群のうち、実際に今回の展示で見ることができたものはどれも興味深いものでしたが、

その名の通り「東洋」とは何か、

西洋から「東洋」がどのように見られていたのか

逆に「東洋」はどのような自己認識を持っていたのを

考えさせられるものばかりです。

特に私が感銘を受けたのは資料を残した人たちの知識に対する貪欲さ、みたいなもの。

例えば乾隆帝。清帝国最大版図を築き、多忙な政務の中にあっても5カ国語を話すことができ、チベットを訪れた時は、チベット語で、ウイグル人とはウイグル語で話すことができたというのです。

それを思い起こさせる資料として、彼の治世に編纂された『欽定西域同文志』という西域のことを6種類の文字で記した辞典が展示されています。

『高麗史』という朝鮮王朝時代に編纂された歴史書には勝海舟の蔵書印が押されており、幕末の偉人の読書の幅広さに感服します。

マリーアントワネットの所有品だったとされる『イエズス会書簡集』には日本の長崎についての記述もあるといい、彼女も読んだかもしれませんね。

ナポレオン1世がカトリックを中国に広めるため作らせたという辞典もあり、「龍」という字を四つ連ねた、最も画数が多いことで知られる漢字まで掲載されているとのこと。

そして、本を主体とする展示物だからこその問題、というか

もっと他のページも見たい!

書いていることがわからないから、もっと解説して!

と思わせる展示物のなんと多いことか。

『カレー&ライス』というイギリス統治下のインドを描いた書物は風刺とユーモアに満ちているのが、香辛料が効きすぎて刺激的なカレーに喩えられていました。

しかし、展示では表紙だけ…

図録には数ページの写真が掲載されていましたが、その場面の解説はありませんでした。

1793年に中国を訪れてスケッチを描き溜めた画家が『中国の服装』という画集はその正確なデッサンと繊細な筆遣いで資料的な価値が非常に高いものと考えられますが、

展示されていたのは「チャイニーズ ソルジャー」とキャプションが付されたものでしたが、トラの着ぐるみを着たような奇怪な姿。

本当にこんな兵士がいたのでしょうか。

何かの儀式の時の扮装なのではないのでしょうか。

もっと深掘りしたいことが盛りだくさんでした。

もちろん博物館を見学しただけで完結することはないので、

自分で調べるきっかけ、探求の種がどっさり得られた、ということでは大満足でした。

3、人は何で動くか

展示室を出る前の最後の空間に、古今東西の書物から名言を抜き出して展示されるコーナーがありました。

どれも共通するのはやはり「知」への崇敬と学ぶことの喜び。

ただ現代で同じような文化財の危機があった場合に

どれだけの人々が未来に知を残そうと奮起するでしょうか。

人の心を動かすのはやはり歴史に見る人の生き方なのだと思います。

私も忙しさなんて言い訳にしないで、もっともっと学んでいきましょう。

本展示は来週までの残り少ない会期なので、お近くの方はお忘れなく。

本日も最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。





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