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わんこの話

アンドレ・アレクシス『十五匹の犬』を読みはじめてすぐに
「なんでこれを選ぶかな」と自分の考えなしに呆れた。

十五匹の犬の死にざまがつぎつぎに描かれる。
いやおうなしに「うちのは幸せやったんかな」という疑問にとらわれ、
「もっとこうしていたら」「あのときあれがなかったら」と考えて
読書にもどれなくなった。

ちがうちがう、この十五匹は犬だけど犬じゃない。
人間の知性を与えられたまったくべつの生き物だから、
比べたり思い出したりする必要ない。
と自分に言い聞かせて読み通した。

結論から言うと、読んでよかった。
プリンスが放浪のすえに自然いっぱいの故郷を思い出し、
飼い主の少年の声を頭のなかで聞きながら死ぬことができたから。
一匹でも幸せに終わってほしいという自分の思いは叶ったし、
16年間田舎暮らしだったうちのわんこも幸せだったにちがいないと
確信できた。

この二か月、死なせて悪かったとずっと思ってきたけど、
お墓で安らかに眠っているのだと少しは思えるようになった。
飼い主目線で読む本ではないのだろうが、
自分にとっては意味のある出会いだった。

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