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ショートショートめいた風景

 眼鏡の少年がみっつの袋を持ってくる。蜜柑がはいっているようなメッシュの、でも蜜柑色ではない三色の小袋。じゃらじゃらと中身を出すと、こたつの上が小石だらけになった。表面がなめらかで、形も色もばらばらな石。「めっちゃきれいやろ。きのう遊園地で集めてきてん。好きなんあげるわ」
「えー、いいの?」と遠慮するそぶりを見せつつ、平らで淡い色のものをひとつ選んだ。
「もっと選びいや」
「じゃあこれも」
「もっともっと」
「んー、やっぱりこっちと交換して」
「いいよ。もっと選んで」
 ふだん小石を選ぶことがないので、いざ選べと言われるとなかなかむずかしい。けっこう時間がかかった。
「六個だけ? この白いやつがおすすめやで」
「へえ、きれいやな。じゃあこれももらうわ」
「こっちもおすすめ」ぐいぐいと手のなかに押しこんでくる。(……あれ、この場面どっかで……?)見ると、白っぽい灰色に黒い斑点だらけの石。
「なにこれ、ヘビのウロコみたいやん! 自分がいらんだけやろ」
 にやにやする少年であった。

 



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