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『Panty & Stocking with Garterbelt』を観て、お前の中のアナーキーを目覚めさせろ。

 アハッピーニューイヤー。新春だ。一歩外を出れば、初詣に興じるアベックや初売りという死地に赴く主婦とエンカウントし、いかに自分がマイノリティーであるかを悟るはずだ。だが、真の男は動じない。新年早々、世間や他人の色に染まる必要がないことを、魂が知っているからだ。唯我独尊…それこそが卸したての手帳に刻むべき平成最後の教訓なのだ。記せ…己の心に…さすれば召されん。

今から最高のアニメの話をする

 そう、お正月だからって、無理に活動的になる必要はない。家を出ない自由だって与えられている。暖房の効いた部屋で安寧を享受することは堕落ではない…。己を健やかに保つための戦略的籠城だ。

 そんな時間を持て余したお前たちに、最高のアニメを紹介する。その名も『Panty & Stocking with Garterbelt』。呼びにくいなら「パンスト」と気軽にTS○YA辺りで叫ぶといい。このアニメは、このストレス社会に生きるうえでお前たちが忘れ去ったもの…反骨精神やパンク精神といった…そういうものを思い出させてくれる、永遠のマスターピースだ。

まずは1話を観ろ

 この国は福祉がしっかりしている。ハイセンスな題名に心惹かれ、先っぽだけ!先っぽだけでも!とホテルの前で慌てるチェリボーイのためにも、第1話がニコニコという荒野に置いてある。誰でも観られる。すなわち、全年齢対象の健全なエンターテイメントであることが保証されている。

 さて、1話を観たお前たちはこう思っただろう。ビッチすぎる…きたない…ナンセンスすぎると…。その感性は間違っていない。むしろ誇るべきだ。一般常識を弁えた言動は、決して愚行ではない。

 しかしどうだろうか。表現規制や放送コード、政治的正しさに考慮するばかりで、今のエンタメには刺激が足りないんじゃないか。牙を抜かれた狼たちは行き場を無くしインターネットというアンダーグランドに拠点を移しては炎上と再生を繰り返す今、こんなパンクなアニメが地上波放送されていたということを、人類は記憶しておく必要がある。

なぜこのアニメが最高かという話をする

 このアニメのアートを観た瞬間、お前たちの脳裏に浮かんだのは懐かしさのはずだ。日曜の朝に見かけたような…。そう、パワ○パフガ○ルズだ。アメリカン・カートゥーンの魅力を無垢なキッズに叩きこんだ、あのマスターピースだ。このアニメはその質感を余すところなくトレースし、完コピしている。ギークが虐げられる定番のハイスクール・カーストを含め、異国情緒溢れる映像に、ポップコーンとコーラを口元に運ぶ手が止まらないはずだ。

 そして何より、本作を覆い尽くすのは、全編に渡って繰り広げられる映画ネタと、お下劣お下品のバーゲンセールな下ネタの数々だ。男好きの金髪ビッチと、甘いものに目が無い黒髪ゴスの姉妹が、淫猥なゴーストを叩き切る。全話なにかしら性行描写や、ダーティな描写があって、常に放送コードのボーダーラインをノーパンで走り抜ける。それがパンストの魅力だ。シンプソンズめいた、アナーキー&インモラルの到達点。決して人前で観ることは許されない、独りで向き合うことを余儀なくされる、真のエンターテイメントだ。

作ってる人が偉大すぎる

 そんなアニメを思いついた天才が、若林広海という男だ。この男は、『天元突破グレンラガン』という溶鉱炉のようにアツいアニメの製作に関わった男で、打ち上げのノリで構想を固めた結果生まれたのがパンストだ。

 そして、その元に集った男たち…今石洋之・錦織敦史・吉成曜・コヤマシゲト。そう、『天元突破グレンラガン』の、そして後に人類史上最高傑作と名高いアニメ『キルラキル』を生み出すことになるスタッフが集結し、各々が好き勝手やった結果生まれたのがこのパンスト…最高だ。狼たちは着実に生き延び、カルチャーという戦場でパンクの魂を撒き散らしている。伏して拝むしかない。

とりあえず観ろ

 今お前は、このアナーキー&インモラルの波動にやられ、己の中の野獣が蠢くのを感じているはずだ。野生を解き放て…それこそが今を打開するたった一つの冴えたやり方なのだ。

 なお、このアニメはニコニコで有料配信されているが、強者のための動画配信サービスNetflixで見放題だ。ドラマや映画やドキュメンタリーに溺れる意識高い奴らに、ナンセンスの鉛玉をブチ込んでやれ。


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