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感想&完走!鎧武マラソン『グリドンVSブラーボ』『ジオウ11・12話』

 なんとか年明けまでに完走することができた鎧武マラソン。最後の作品がグリドンとブラーボになるとは、思いませんでした。

沢芽市からヘルヘイムの脅威が去って数年後―。
今、新たな危機が、沢芽市に迫っていたー。
今や世界的パティシエとして人気絶頂の城乃内。
秘書の鈴鹿を従え、テレビ出演やサイン会など芸能活動に精を出していた。
その様子を見て心中穏やかでない凰蓮の元に、
貴虎から傭兵としての任務の依頼が入る。
その内容は「城乃内を始末しろ」というものだった―!

https://www.kamen-rider-official.com/the-gaim-fes/ttfc

 いわゆるTTFCオリジナルコンテンツに触れるの実は初めてなんですが、1話2話併せて20分強のボリュームで、まぁこんなもんか、みたいなのが正直。尺がないから奥深い話も出来ないし、「黒幕をおびき出すために凰蓮に城之内を襲わせる」とか、TVシリーズ本編中ならまだしも、舞台『斬月』までを経た貴虎がそんなことするか?と思って、いわゆる解釈違い(誤用)に陥って、全然楽しめませんでした。

 話としては「増長した城之内を改心させる」「黒幕がヘルヘイムの果実を流通させるために暗躍する」がたまたま重なっただけで、大きく風呂敷が広がらず、盛り上がりにも欠けている。城之内が凰蓮をおんぶするとか、初瀬ちゃんの幻影とかその場だけのエモで鎧武完全新作!とか言われてもねぇ……。

 ただ気になるのは、黒幕の鈴鹿まさこが企てたヘルヘイムの果実をばら撒くという作戦。それは人の意思なのかあるいはヘルヘイムの再侵略なのか。続編をいつでも作れる色気だけを出しておく、繋ぎになるかならないかは2023年現在不明の、中途半端な作品。メタルさんと松田凌くんの中でキャラクターがまだ生き続けている、ってことだけが収穫でした。

 シリーズの正史としてはこれでゴールなのですが、紘汰も出ない作品で終わりってのも味気なくて、おまけとして『ジオウ』の鎧武編をチョイス。実はこれ、タイムパラドックスを扱った話数で、とにかく話の把握が難しい。

 11話は冒頭からジオウVSアナザー鎧武の戦闘から始まり、しかも鎧武アーマーに変身してアナザー鎧武を撃破。これでめでたしめでたしと思いきや、始まりの男さん(衣装が変わって動きやすくなっている)がアナザー鎧武撃破前に時を戻すという意味不明行動に出る始末で、中々アナザー鎧武を倒せない。

 というのも、アナザー鎧武に変身する男、アスラは2018年の時間軸においてチームバロンのリーダーとして君臨し、自分の正体を知った者をヘルヘイム送りにしていた。その能力によってゲイツも追放。ソウゴはゲイツを救出すべく、色々と策を講じることになるのだけれど、そのせいでツクヨミさんのストレスがマッハである。

 一方、ヘルヘイムに送られたゲイツはアナザー鎧武誕生による歴史改変によって死亡した事実が無くなった駆紋戒斗と邂逅。アスラは戒斗によってバロンを除外されており、その怒りを買って以来すでに5年間も戒斗はヘルヘイムを彷徨っていることになる。えっと、一体何食って生き延びてたんですか……??

 後の話になるけれど、このエピソードにおける戒斗さん、ゲイツにバイクを渡してクラックを開かせて自分は何食わぬ顔して生還するというめちゃくちゃオモロ行動に出ており、脚本の毛利さんと上堀内監督は戒斗をどう動かせば面白いか、完全に理解しています。己の望む未来を作るための(ジオウ=ソウゴをどうするか)覚悟を問うの、実に戒斗さんなんだけど、画と行動が面白すぎてズルい。実はこれが小林豊のラスト戒斗なわけで、あの、もう、バカなことしやがって……(それはそれとして佐野岳さんの結婚式ツイートは泣く🍰🍰)。

 歴史改変の影響で鎧武でも始まりの男でもなくなった紘汰も登場。ただのフリーターが色んなものを背負わされて神様になっちゃうという途方もない大出世をした本編と比べて、イマイチ何の仕事してるかわからないけれど優しいお兄ちゃん的な存在になっていて、これはこれでグッときますね。佐野岳さんの経年も合わさって、ちょっと大人の雰囲気の出た紘汰。こういう未来もあったのかな、というifとして、これはこれで染みるのです。

 神様としてのアフターといえば、みんな大好き『平成ジェネレーションズFINAL』があるので、こっちと併せて観るのも乙なもの。

 というわけで、TVシリーズから劇場版、小説、Vシネマ、配信作品に舞台まで、『仮面ライダー鎧武』の正史は一通り押さえたと思います。たった一ヶ月でこの詰め込み量は凄まじく、しかし熱量は一切落ちることなく観られたのは、作品そのものの面白さがあってこそ。

 10年経っても賞味期限の切れない熾烈さハードさを兼ね備え、TVシリーズでは過酷な運命を前にしても信念に沿って生きていくことを、後日談では生き残った者たちの「継承」を軸に、キャラクターたちが躍動していく。その目まぐるしい感情の動きを追っていったり、逆にこちらも翻弄されるように心の赴くままライドしていくのが、本当に楽しかった。

 本編の高い完成度と自由な拡張性を有する物語という意味では、個人的なベストライダーである『W』と、その魅力は意外と近いんだな、というのが今回一番の再発見かもしれない。また何度か見返したくなるだろうし、その度に好きになっていくんだろうな。ありがとう、鎧武。最高のステージでした。

 ここまでお読みくださった方にも、改めてお礼申し上げます。
 それでは、良いお年をお迎えください。

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