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技名を叫んで殴るアニメ『血界戦線』が面白かった話。

 TVアニメを鑑賞するようになったのもここ2~3年の話で、それこそ毎クール、リアルタイムで追っていく作品も3作を超えることはありません。まだこの界隈のアンテナが成熟していない証拠でしょう。従って、「すでに完結した作品を後追いで観る」スタイルが多い私なのですが、友人に薦められたのがこの『血界戦線』。何でも、『キルラキル』が好きなら絶対ハマる、とまで言うではありませんか。そこまで言うなら、観てみようじゃないの。

かつてニューヨークと呼ばれた街は、3年前に起こった「大崩落」と呼ばれる未曾有の大災害により「異界」と「人間界」が交差する街「ヘルサレムズ・ロット」へと姿を変えた。人間と異界人が共存して暮らすこの街では、超常的な能力を用いた犯罪が日常と化している。そんな街の均衡を守るために秘密裏に活動するのが、秘密結社「ライブラ」である。彼らもまた超常能力を駆使し、超常現象の鎮静化や犯罪の摘発を行っていた。
半年前に異界の存在に遭遇し、妹が自ら視力を差し出すことで「神々の義眼」を得て救われた少年、レオナルド・ウォッチは、ライブラの新人に間違われて彼らと接触。義眼の能力で事件を解決したことにより正式にライブラに迎えられたレオナルドは、妹を救う術を見つけるため、様々な事件に向き合っていくことになる。

 『血界戦線』は2015年4月より放送された、『トライガン』の内藤泰弘による同名コミックを原作としたTVアニメ。最終回が30分の放送枠に収まりきらないために放送延期、なんて逸話もある凄い一作(Wiki引用)。

 物語は、主人公レオナルドが妹に宛てた手紙から始まり、そしてヘルサレムズ・ロットの街を疾走する彼の姿で幕を開ける。映画などでよく見なれた、NYの摩天楼の風景、しかしそこは人間と“そうでないモノ”が同居する不思議な世界。奪われたカメラを取り返すべく走るレオ、その背後ではミサイルが飛び、爆風で吹き飛ばされてしまう。その先でライブラの一人であるザップ・レンフロと出会い―、と、本作の話運びはとてもスピーディ。

 人間と異界人の平和的共存が果たされるも、決して良好とは言えない治安と、いつ何時超常的な事件に巻き込まれるともわからない緊迫感。際立ってシリアスに描くことはないものの、すっかり様変わりした人間界の様子を、説明台詞は最小限に、映像で魅せる冒頭のツカみがとにかく秀逸。この導入一つとっても、視聴者を物語世界に引き込む作品全体の強いインパクトが表れています。

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 そんな世界の均衡を守る秘密結社「ライブラ」とは、徹底した秘密主義の元活動する、超人的能力者の集団。赤髪の大男、クラウス・V・ラインヘルツをリーダーとして、治安維持のために暗躍し、時には異界の存在とも闘う戦闘集団でもあります。ダンディーなおじさま紳士に謎めいた執事、伊達男に女ガンスリンガー等々、あらゆる「カッコイイ」を敷き詰めた夢のチーム。定形的でありながら、様式美はやはり映えるもので、ライブラメンバーのプロフェッショナルな姿に、チーム燃えの要素を見出してしまうのは当然と言ってもよいでしょう。小山力也、宮本充、大塚明夫など、洋画吹替え界の豪華キャストが声優を担当しており、オトナの魅力を後押ししているのも喜ばしい。

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 また、彼らの多くは「血」を用いた戦闘術を有しており、クラウスなら血で十字架を生成し吸血鬼をも「密封」する「ブレングリード流血闘術」の、ザップは血を剣や糸状に変化させ、そこに「火」の属性を加える「斗流血法(ひきつぼしりゅうけっぽう)」の使い手。その他、身体強化や属性付与などの能力を発揮して繰り出される必殺技の演出が、本作の醍醐味の一つでもあります。「技名を叫んで殴る」は原作者が掲げるコンセプトでもあり(Wiki引用)、むやみやたらにカッコイイ名前の技名を叫び、キメのカット。そこに技名のフォントが重なり、その仰々しさとケレン味が最高に気持ちいい。

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 なるほど、友人が語った「キルラキルみ」とはおそらくこのことで、まんまと魅せられてしまう。「血」というモチーフも共通しているし、やはりインパクトが強いとバトルシーンは格段に面白い。つい見惚れてしまうようなキメ画が多いと、作品への好感度がグングン上昇していきます。

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 ストーリーは、街で起こる事件を解決する1話完結スタイルを基本としつつ、レオが出会ったホワイト・ブラックの兄妹のエピソードが縦軸として並行して存在し、やがて二度目の大崩落を狙う「絶望王」との闘いがクライマックスとなる構造。ここに書き切れないほどに個性豊かなライブラメンバー、その上を行く「濃い」敵キャラクターたちが織りなす、非日常な日常を描くバトルファンタジー。濃厚なのに体感時間が短く、それゆえ止め時がわからなくなる出来の良さは、1話2話と進んでいくうちに身に染みていくことでしょう。前述した最終回も、放送延期も頷けるほどにスケールの大きな話になっており、アツい展開も相まって格段の満足度。個人的には「観て良かった」と素直に思える一作でした。

 総じて、『血界戦線』は常に「上質」な印象を抱く作品です。スピーディな物語進行と、それを阻害しない程度に挟まれるギャグ、ケレン味溢れるアクションシーン、ジャジー&スタイリッシュなBGM…。作品を構成するどの要素も抜かりがなく、作画には一切の破綻のない出来栄え。観ていてストレスがなく、世界観やキャラクター萌えに耽溺できる、楽しい快作です。原作未読、比較対象を挙げられるほどアニメに通じているわけではない身分で言うのも何ですが、良質な作品と言えるのではないでしょうか。オススメです。

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