無題

『騎士竜戦隊リュウソウジャーvsルパンレンジャーvsパトレンジャー』におけるルパパトの話しかしないテキスト

ロスが治らない

 何の話かと言われれば、『ルパパト』ロスだ。前回の記事では「ルパパトが忘れられないあまりリュウソウジャーが観られない」という拗らせ具合を告白したが、一年経った今でもそれは改善されていない。リュウソウジャーもきっと面白いのだろうが、いかんせんルパパトばかり繰り返し観てしまい、その他の作品まで手が回らない状態が続いている。そんな中、恒例のVS作品が上映され、しかも今回は先輩側。要はルパパト最後の作品になる可能性が高い。期待と緊張が入り混じった上映前の心境は、公開初日に駆け付けたおとなのお友達各位ならわかっていただけるはずだ。推しの卒業はいつだって辛い。どうか有終の美を遂げてくれと、祈ることしかできないのだ。

 そんな心境で臨んだ『リュパパト』だが、手堅く面白い、という印象に尽きる。VSならではの作品をまたいだキャラクターの掛け合い、武器を交換しながら戦うアクションシーン、サプライズもあって短い時間ながら濃厚なクロスオーバーを楽しませてくれる。現行ヒーローであるリュウソウ組がメインではあるものの、ルパパト組も見せ場が多く設けられ、おなじみのテーマ曲や主題歌、名乗りのシーンにはグッと来るものがある。

 『ルパパト』面における本作への期待値と言えば、やはりTVシリーズのその後が描かれる、という点。『ルパパトキュウ』がTVシリーズの合間の物語ということもあり、ファイナルライブツアーに続く二作目の後日談となる本作。快盗と警察、終わらない追いかけっこが続く二戦隊の間には、他の戦隊にはない緊張感が今なお残り続けている。追う者と追われる者、その二者の再会はこれまでの戦隊の共闘とは重みがやはり違う。その辺りはTVシリーズのメイン脚本である香村純子氏が携わってくださった結果、丁寧に描写されていて感無量であった。魁利と圭一郎の会話がめちゃくちゃいいんですよ。

 メインストーリーも良い。ギャングラーの残党ガニマ・ノシアガルダが自らの金庫にリュウソウジャーの力の源かつ相棒の騎士竜を閉じ込めたことで、リュウソウジャーは普段自分たちが使っている力に苦しめられ、地球を守る使命を貫き通すために騎士竜を犠牲にする決断を迫られる。リュウソウジャーメンバーはその使命に則り騎士竜ごとガニマを倒す方針を渋々決めるが、リュウソウレッド=コウだけがその決断を受け入れられない。ガニマを倒すことは正しいし従うべきだ。だが、それで本当にいいのか?悩めるコウを前に、パトレンジャーは「金庫を開ける手段が見つかるまで街を守り続けること」を、魁利は「大切な友を取り戻すためなら正しさよりも自分の正義を貫くべきだ」と説く。市民の安全第一で戦ってきた警察と、大切な人を取り戻すために戦ってきた快盗。そのスタンスを貫徹して後輩を鼓舞する二戦隊の覚悟がアツい。

 ギャングラーの特性を軸にコウと相棒の別離を描き、それぞれの「正義」が浮き彫りになる筋の通った物語構成。その道中で、アルセーヌに対するノエルの忠心がリフレインされ、それが三戦隊揃い踏みならではの奇跡を起こす。作品ごとの旨味を抽出し混ぜ合わせるクロスオーバー調理が素晴らしく、ルパパトの後日談としても独特の緊張感があり最終話の余韻を崩さずしっかりと祝祭感もある。絶妙なバランスで見事走り抜けてくれた60分強だった。

 細かい不満を述べるとすれば、終盤に用意されたダンスシーン。3DCGによるプリキュアとのコラボダンスをキラメイジャーが披露した後、リュウソウとルパパトが合流してケボーンダンスを披露するのだが、あろうことかガワ(スーツ)での集合シーンしか撮影されてない。せっかくなら生のルパパトキャストによるケボーンダンスが見たいし、繰り返して言うが「最後の作品」なのだ。『ルパパトキュウ』の多幸感をもう一度味わうには、本作をケボーンダンスで締めてほしかった。放送終了後に新作が観られるだけでもありがたいこととは思いつつ、無いものねだりが止まらないのも『ルパパト』が愛おしい作品だった証拠だろう。

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