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ロマン満点!やり応え赤点。だがそれがいい『オーバーライド 巨大メカ大乱闘』

 突然ですが皆さん、『パシフィック・リム』は好きですか???

 まぁパシリムが嫌いな人類はいないので愚問なんですけど、ロボットVS怪獣という格好のゲーム向きな題材にも関わらず、なぜか日本国内でコンシューマーゲームは発売されず、アプリゲームも肩透かしな内容に終わったパシリムのゲーム。巨大ロボットを意のままに操りたい!鉄と鉄がぶつかり合うダイナミックな戦闘がしたい!そんな欲望を叶えてくれるゲームが、まさかのブラジルから届いた。その名も『オーバーライド 巨大メカ大乱闘 スーパーチャージエディション』だ。

「操りづらさ」が楽しいアクションゲーム

 本作は、その名の如く16体のロボットが世界の各都市で激突するアクションゲーム。日本のロボゲーでいえば『アーマードコア』シリーズが有名で、目にも止まらぬ速さで繰り広げられる空中戦闘はクールで中毒性が高い。一方、本作が目指したのは「鉄の拳と拳がぶつかり合う」タイプのロボゲーである。ロボットと言えばロケットパンチでしょ!という作り手のロボットアニメ愛溢れる、重量感たっぷりなロボゲー。そうそう、こういうのが遊びたかった。

 本作の操作、いや「操縦」方法はややユニークで、RとZRが右パンチと右キック、LとZLが左パンチと左キックに相当しており、この4種類のパンチとキックを織り交ぜながら敵の撃破を目指すことになる。早速開発陣の「わかってる」ポイントなのだが、例えば通常時、Rを連打、つまり右パンチを連続して放つことが出来ない、という巨大ロボらしさの表現だ。連続して攻撃する場合はR⇒Lで左右の拳を振るったり、あるいはキックに切り替えなければならない。実際に動かしてみて感覚でわかるのだが、同じ手でパンチを連打できないあたりが、なぜだかとても「らしい」のだ。

 また、パンチとキックはそれぞれ溜めることで強力な一打に変化する。肘のブースターが点火され、ボタンを離せばあなたの愛機はより強い拳を放つことができる。これぞ「エルボーロケット!」の再現だ。

 一方でロボットアニメ的なケレン味に相当するのがスペシャルアタックと必殺技の存在。スペシャルアタックは戦闘中に溜まるゲージを使用して放つ4種類の特殊技で、みんな大好きロケットパンチやブレードを展開しての連撃、あるいは遠距離攻撃や突進など各機体の個性に合わせた技の応酬が楽しい。必殺技は体力が残り僅かになった際に一度だけ放つことができ、ムービーと共に強力な一撃を放つ。敗北寸前の危機的状況から必殺技で逆転!という流れを狙えるのも「わかってる」ポイント追加だ。

 初めこそ殴り合いが主体の大味なアクションゲームという印象を受けるが、その実駆け引き要素も多く、攻撃やジャンプなどを繰り返すと一時的に移動以外の行動ができなくなる「オーバーヒート」や、ガードを崩す溜め攻撃やカウンターが実装されており、対人戦であれば高度な読み合いも要求されるだろう。剛腕を押し付けて勝つも良し、カウンター狙いであえて攻めさせるも良し、わざと劣勢に追い込まれて必殺技で逆転!というヒロイックな遊びもできるなど、自分のお気に入りなロボットアニメのシチュエーションを組み立てて遊ぶのも楽しい。

 攻撃がボタンではなく押し込みトリガーに割り当てられていたり、連続攻撃をするとすぐにオーバーヒートに陥るなど、その操作性は慣れるまでやや時間を必要とするが、やはり思い思いにロボットを動かす楽しさは格別だ。しっかりと「重さ」を感じさせる巨大ロボットを、街の被害もお構いなしに動かしまくり(ゲーム的なペナルティは一切無い)、敵の攻撃を潜り抜け左右の溜めパンチをお見舞いする。動きの軽快さよりもロマンを優先した本作の方向性は、好事家なら自ずと刺さるはずだ。

一人用ゲームとしては浅い

 本作のゲームモードは、対人か対CPUで自由に闘うモードと、オンラインでのランクマッチ、実質ストーリーモードである「アーケードモード」と、あとはチュートリアルとロボの見た目を変更するカスタマイズの項目がある。きっと対人向けのパーティーゲームとして盛り上がるはずの本作だが、発売から時間が経っているからかオンラインでのマッチングは成立せず、その真価を知ることが出来なかったのが惜しまれる。

 ストーリーモードでは、初めに操ることになる機体を選び、地球に突如姿を現した謎の巨大モンスター「ゼノタイプ」と闘っていくことになる。地球の命運を背負って闘うことになる主人公、全世界で多発するゼノタイプの襲撃、操られたロボットとの激しい戦闘。対ゼノタイプ用に開発されていた新型機体と謎のプロジェクトが導く、最悪の結末……。これまた日本のロボットアニメあるあるが多数織り込まれたストーリーは、「一週目なら」すんなりと楽しめる内容になっている。

 アーケードモードではミッションをクリアすることで得られたMODやリサーチブーストと呼ばれる通貨を使用して愛機を強化することができる。とくにMODは何が手に入るかわからないランダム性があり、序盤で強力なものを引き当てればサクサクと進められる一方で、有用なものと出会えなければ苦戦は免れない、難易度を大きく左右する運要素になっている。強力なMODの能力で敵を蹂躙する面白さは確かにあるものの、救済要素が少ないのは気になってしまう。

 そんなストーリーモードに登場する人間キャラクターは、お世辞にも日本でウケるデザインとは言い難く、ここはもう少し寄せてほしかった。何度も見るうちにヘンな愛着は湧いてくるんだけれど、マリカさんは「敵」のデザインですよね!?ジオンの女将しかあり得ないデザイン。

 ミッションの途中に挟まる会話もプレイヤーキャラに併せて細かく変わる仕様で、飽きさせないよう工夫も施されている。だが、キャラを変えたとてストーリーの大筋が大きく変わることもなく、何度も同じシチュエーションでの戦闘を16体分繰り返すのは流石に辛い。クリアしても得られるのが各機体のスキンなので、必ずしも全機分遊ばないと解放されない要素が無いのが唯一の救いだが、一人で楽しむ目的で本作を買うと、ボリューム不足を感じやすいのは欠点だ。

それでも嫌いになれない

 聞くところによれば、「4人で一つの巨大ロボを操作をする」モードがあるらしく、さながらパワーレンジャーのような遊び応えまであるらしいが、なにせプレイ人口がほとんどいないため、実際に体験することは出来なかった。かなりのポテンシャルを持っている本作を、遊び尽くすことは事前に示し合わせないと難しい。一人用として遊べば飽きが来るのはわりと早い段階になるだろう。

 それでも、本作のロマン溢れるアクションと、ロボットを操縦する「実感」は他作品にはないもので、所々の安っぽさも込みでなんだか憎めない、隠れファンの多いB級映画のような味わいの一本だ。エルボーロケットをバシバシ決めたい!という欲求をわりとすぐに満たせるため、イエーガーのパイロットを夢見る者はぜひ本作を買って遊んでみてほしい。そしてオンラインで一緒に楽しみませんか?よろしくお願いします。

 あと、続編ではなんと『ULTRAMAN』が参戦しているらしく、これこそ日本で発売しなくてどうする案件。絶対に遊びたいのでマジでローカライズ希望です。

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