ナチスの化け物VSヤケクソ兵士!血みどろ大合戦『オーヴァーロード』
映画の世界において、ナチスは都合の良い悪役だ。「コイツらならどう描いてもよかろう」という暗黙の了解があるのか、非人道的なコトはなんでもやるサイコ一派として扱われ、定期的にB級映画レンタルコーナーの棚を潤している。そんな定番ジャンルに飛び込んだのは、スター・ウォーズ最新作の公開を控えるJ・J・エイブラムス率いるバッド・ロボット。
先ほど「B級」という言葉を用いたが、決して作品の質を貶める意味で使用したわけではない。一見奇天烈な発想に思えるが、戦争とホラーの両ジャンルをまたがる本作は、その両方で観客を満足させてくれる。
序盤は戦争映画。重要任務を帯びた兵士たちが、攻撃機の中でたわいのない会話をしている、見慣れたシーンから始まる。するとそこへ、敵軍の容赦ない銃撃が襲う!兵士たちは血を流し、肉片へと変わる!!外壁の薄い攻撃機はあっという間に蜂の巣となり、生き延びた兵士たちは銃弾飛び交う空をスカイダイビング。この落下のシーンはワンカットで撮影されており、一兵士の生々しい視点で繰り広げられる地獄絵図は、他作品と見比べてもショック度が高く、ゆえにフレッシュだ。
命からがら生き延びた兵士たちも、敵領地で心もとないサバイバルを強いられる。そこで目にするのは、凄惨な現実の光景だ。権力を盾に行われる虐殺と強姦、人間の醜さを前に義憤に駆られる一幕もあれど、ナチスに見つかれば自分たちが殺される。そうした葛藤を乗り越えながら、少しずつ前に進んでいく兵士たち。
バレるかバレないかのサスペンスが続く中、映画のジャンルはゆっくりと遷移していく。ナチスの異常極まりない思想が明らかになるにつれ、グロテスクで悪趣味極まりないディティールと共に”それ”が現れる。本気でロンギヌスの槍を捜索するほどオカルト・神秘に魅入られた総統閣下、やっぱりこの手のジャンルにも手を出した。醜悪な人体実験を経て生まれたそれによって、また一人犠牲者を増やしていく兵士たち。暗く狭い教会の中で、怪物とナチス兵の両方に追われることになる彼らは、あまりの異常事態に発狂寸前、ブチギレテンションでこの大殺戮大会に挑んでいく!
どんどん狂気度が増していく画面や常にテンションの高い話運びが面白く、ゴア表現もたっぷりで飽きさせない。死地を乗り越えることで生まれる友情、自己犠牲の熱さなど、戦争映画としても美味しいシチュエーション満載なのも喜ばしいポイントだ。加えて、「ナチスならこれくらいするだろう」みたいな空気が蔓延する中盤のシュールな笑いを、画面の兵士たちと共有する瞬間がとにかく最高だ。総統閣下もお喜びのことであろう。
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