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レゼに会いに『チェンソーマン』を読んだら、お正月が超跳腸・胃胃肝血になった。

  2022年12月28日。昨日が仕事納めだったにも関わらずそれに失敗し、その年最後の休日出勤を強引に終わらせ、風邪気味の身体を無理やり布団の中に押し込んでいると、とあるツイートが飛んできた。

 「レゼ 上田麗奈」。脳内googleが目まぐるしく回転する。レゼ、という名前には見覚えがあった。チェンソーマンにハマっていた相互フォロワーが、「レゼは絶対上田麗奈さんがハマる」と豪語しており、そのことを頭の片隅に置いておいたのだ。

 予想的中だね。いい年になりますように。そんなことを思いながらタイムラインをスクロールするが、なんだか無性に気になってくる。CV:上田麗奈がバッチリとハマるキャラクター。そう、俺はいつだって、そういう危ない女性に魅入られ、狂わされてきたじゃないか

 前回の“狂い”に関しては、こちらをお読みいただければわかると思う。令和を代表するファム・ファタルことギギ・アンダルシアに情緒と鼓膜をバキバキにされ、note公式にもピックアップされた末代までの恥であり“勲章”である。

機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』ギギ・アンダルシアに狂わされたハサウェイとぼく。
筋金入りのガンダムファンではなかったのに、今作のヒロイン、ギギ・アンダルシアの声優が大好きな上田麗奈さんであると知り、劇場で今作を鑑賞したツナ缶食べたい(伝書鳩P)さん。度胸と幼さ、賢さと危なっかしさなどさまざまな魅力を併せ持つギギの魅力についてつづったnoteです。

『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』がもう一度観たくなるおすすめ感想文7選!
注目シーン集/ 知っておきたいガンダムの思想/ ギギに狂わされたぼくなど

 ギギ・アンダルシアとの再会を山崎まさよしを歌いながら待ちわびているが、『閃光のハサウェイ』の第2章の公開時期は明らかになる気配はまだない。その空白を埋めてくれるのが、レゼ、という女性になるのではないか。

 とはいえ、レゼがいったいどの巻数に登場するかもわからないし、まだ読んだこと無い漫画の単行本をイッキに買うのはハードルが高い。調べたところ、少年ジャンプ+にて1巻分に相当する7話までが無料公開されている。早速読んでみる。あっ、『ルックバック』の人の漫画なんだ。うわ〜この人絶対映画好きでしょ。見開き2コマがカッコいいなぁ〜。ヘェーッ7話ここで終わりかぁ。そっかぁ。ふ〜〜〜〜〜〜〜ん。そう。へぇ。















 賞与が出た。DMMで年末セールやってた。飲酒していた。言い訳はこれぐらいにしておこう。俺は今、猛烈に、『チェンソーマン』にハマっている。女の尻を追っかけて(不適切発言)漫画を買ったら、レゼに会うまでの時点でもうドンズバに刺さった。俺も額と両手からチェンソー出したい。ゲロ抜きで姫野先輩とキスしたい。早川アキくんの家に転がり込み血まみれのスーツをクリーニングに出してアイロンをかけ味噌汁を作りつつ帰りを待ちたいし、血だらけの彼をおぶって帰ってきた姫野先輩にめちゃくちゃ嫉妬しておかしくなりたい

 というのが2022年末の時点。年が明けて23年1月1日。元旦。2日に見るのが初夢だとするのなら、今年の初夢は「寝れなかったので欠番」になってしまった。なんでかって?第1部完まで読んじゃったからだよ!!!

フォロワー曰く「いつもの。」

 以上、これが俺のお正月の過ごし方だ。ここからは『チェンソーマン』初見感想タイムだ。俺はたった今『チェンソーマン』に触れたばかりの情弱であり、以下の文章がどんなに既出の内容であっても「へぇそんな面白い漫画があるんだぁ」という暖かい目で見てほしい。というかチェンソーマン薦めてきた奴らは責任をもって俺の死体を引き取って欲しい。今1月2日、猛烈に眠いんだ。これもみんなみんな藤本タツキってやつのせいなんだ。

タツキ💢💢💢💢💥💥💥💥💣💣💣💣💣💣

 チェンソーマン、なにが面白いって、主人公のデンジくんだ。物語開始時点で借金返済のため臓器は全部揃ってないし、マキマさんに拾われる前はもう目を覆いたくなるほど不憫だ。そうした悲惨な現実をちょっとした笑いで緩和しながら生きていく姿は実写版の『デッドプール』イズムを感じるし、もし願いが叶うなら唐揚げとか食べさせてあげたくなる。

 俺は単行本を買い集めている漫画が現状『風都探偵』『100カノ』『かげきしょうじょ!』しかなくて、ジャンプには疎い。だがそれでも、デンジは異端なのは一目瞭然だ。他の漫画が「友情・努力・勝利」ならデンジは「衣・食・住、それと胸」というモチベーションで生きている。故に行動原理はめちゃくちゃだし、主人公のヒーロー然とした活躍からは平気で逸れる。ただそれは彼の過酷な境遇から来る価値観と裏合わせであり、毎日朝食を食べるとか恋をするだとか、そういう「普通」が手に入らなかったからこそ、それを「」としてささやかに祈る。

 だからこそ、「チェンソーの悪魔」へと至るオリジンは痛快だ。孤独な自分と一緒にいてくれたポチタとの約束を叶えるために、異形の戦士と化すデンジ。頭と両手からチェンソーが生え、相手の返り血に染まるダークヒーロー。悪魔だったら仲間だとか関係なく、デンジはデンジのために力を振るう。「テメェら全員殺せばよぉ!借金はパァだぜ!」が初陣の決め台詞なジャンプ主人公いる???マジで最高だ。

 バトルシーンに代表されるように、藤本タツキ先生という方の画力はヤバい。とくに見開き2コマのキメのカットの作画密度と躍動感は素晴らしく、ラージャマウリ監督の映画やグラフィックノベルのそれに近い。日常シーンにおいても氏の映画好きが炸裂するカメラワーク(あえてそう言いたくなる)やカットの切れ味がとってもお洒落で、漫画にもこういう表現方法があるんだと驚かされてばかりだ。

 同じ映画好きとして、氏の漫画はいい意味で既視感があるというか、「あっこういう撮り方でこういう編集するな」というのが理解できて、コマとコマの連続が脳内で映像として再生される。なんならドアの開閉音や電車が通る音まで聞こえてくるくらい、「映画的漫画表現」の細部に至るまでが、馴染む。モノローグで世界観や設定の説明を挟まず、ちょっとしたセリフで読者に「察せさせる」のが巧い(そんな言葉はない)。悪魔がいて、公安と民間にそれぞれデビルハンターがいる。その辺りを最低限のセリフで済ませてしまう読ませ力は、映画だったらとても上品な演出と評されるだろう。

 マキマさんだ〜〜〜〜〜〜〜〜〜。インターネットでよく見かけますよこの美女。とにかくヤバい。タツキ先生の描く女性キャラ、後のレゼもそうだけど「付き合ったら絶対ダメだと本能でわかっていても、目が離せない」力がスゴすぎる。美人でやることなすこと滅茶苦茶で自分のことを肯定してくれてでもヤバくて美人でヤバい。「好きな男のタイプとかあります?」「デンジ君みたいな人」ほんと何回読んでもここで笑ってしまう。こ、この女ァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜💢💢💢💢

 ママ!(ママはどこ?)
 ママ!(あっ、みつけたよ!)
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 アキ早川、推せる。今となっては後の顛末を知っているので、読み返して思うけど、このメンズ、めちゃくちゃ愛おしい。仲間を失う辛さを知ればこそ、情を移さないようにしている感があるし、しかも相手は半悪魔みたいな魔神なわけで、いつでも容赦なく切り殺せる。なのにお風呂入れてあげてパンを与えてくれる優しさがデンジの心を満たしてくれた上にラストバトルでこれが活きてくるので、二重の意味でデンジくんを生かしてくれたのはアキくんなんですよね。アァ〜〜〜〜、好き。

 パワーちゃん!!!!!パワーちゃん可愛いよパワーちゃん。私服がめっちゃガーリーで原宿にいそうなのありがてェ。

 パワーちゃんも人間社会の法とか倫理とか通じないけれど、可愛がっていた猫のニャーコや後にバディと認めるデンジにはちゃんと気を配るし、彼女もデンジ同様に孤独な魂を一人慰めていたわけで、そこは共鳴しあうよね。良いね!お前ら良いチームだ!

 コウモリ悪魔との闘い。相変わらず「胸を揉む」が第一優先のデンジくんの思い切りがいい。「野郎の!命なんざぁ〜〜!」のくだりがサイコー。世間一般の正しさから程遠い言動をすればするほど、デンジというキャラクターが光り輝く。

 パワーちゃんより胸揉み許可⇛よっしゃあああ⇛腕切断、の緩急ですよ。『チェンソーマン』はこういうシリアスとその中にある笑いのスイッチが本当に計算し尽くされている。後の方だけど「パワーがデンジと三兄弟の長男を車で轢く」シーンは逆に漫画のコマ割りを活かした表現で「器用だ……」と感心しつつ声出して笑った。あんなのズルだろ。

 「み〜んな俺んヤル事見下しやがってよお……。復讐だの、家族守りたいだの、猫救うだのあーだのこーだの。みんな偉い夢持ってていいなア!!じゃあ、夢バトルしようぜ!夢バトル!!俺がテメーをぶっ殺したらよ〜……!てめえの夢ェ!胸揉む事以下な〜!?」本当に最高。デンジというキャラに出会えて本当に良かった。彼はステレオタイプな「清く正しく美しく」なんかに縛られないし、なんなら昨今の「正しさ」に対する読者の目にも惑わされない。彼にとっては他者の復讐だとか人を守るといったものに対し、自分の胸を揉みたいという欲望が下衆なものとわかっていて、それでも突き通そうとする。だから真剣になれるし、相手の正しさにカウンターを喰らわせられる。こんな痛快なセリフみたことねぇですよ。

 『第12話 揉む』もうサブタイトルだけで笑えるようになってきた。なんかこう、アニメ『偽物語』の歯磨き回を彷彿とさせるいかがわしさ。

 と思って油断してたらマキマさんをここで投入。胸を揉むとかいう即物的な快楽よりも「官能」の味を覚えさせるマキマさん、これ対象年齢何歳の漫画???????

 「なんでもって……例えば……セッ「なんでもだよデンジ君」少年漫画としての矜持を守りつつここまでやれるんだ!という緩急のおかしみ。もうほんと、こういうの延々に観ていたい。

 物語の縦軸となる「銃の悪魔」がここで説明される。その天災にも近しい破壊の様子を、アキくんの動機(復讐)と併せて描写するのも王道だけど手際が良い。本作の基本ルールとして「モチーフとなった概念が人々に畏れられている度合いで悪魔の強さが決まる」というのがあり、殺人の武器として定番の「銃」を冠する悪魔の強さに読者もすんなり納得がいくようにできている。巧いな〜(しかも「戦争」「核兵器」はもっと強いんじゃね?という類推にもちゃんと後半で回答がある。抜け目がない)。

 チームとしての悪魔討伐に赴く早川家の面々。姫野先輩、正しくタツキ世界の住人といった感じ。奔放な性と死の匂いが両立する美女(眼帯属性のオマケつき)。こういうの好きなんだろうなァ〜〜〜ってビンビンに感じる。マキマさんよりも体育会系でさっぱりとしたお色気を感じさせつつ、後の打ち上げでの落差がいい。平和だね。

 『インセプション』的なギミックのマンション閉じ込め劇。迫るグロテスクな悪魔。魅力的な提示。デンジ君を殺して他を生かすか、みんな死ぬか。疑心暗鬼に陥る極限のサバイバル編展開か―?と思いきや最短距離でお約束を果たすコベニちゃん。ってかこの子も不憫サイドだな?この世界まともな親おらんのか???????????

 「いくら悪魔といえど契約は絶対に果たさなければならない/反故にしてはいけない」こういうロジックがあるバトル漫画がいいね。後にこれが効いてくる。

 デンジくんを犠牲に、の方に傾く面々。そこに変にギスギスせず、姫野先輩は「アキ君を生かすため」に振る舞っているところが人間臭くて笑えて、読んでいてストレスがない。基本がスラップスティックだからこそ、デンジくんの理不尽な境遇に不謹慎な笑いが止まらない。

 実写版『ドクター・ストレンジ』的解決で悪魔に殺害を懇願させるデンジ。序盤の「ノーベル賞」の件がここで活かされると思わず、脱帽。前フリを伏線と思わせず仕込ませるって、巨匠と呼ばれる映画監督でも中々できないことですよ(これは演出の上手い下手ではなく、観る側の目が肥えているという意味)。

 「永久機関が完成しちまったなアア~!!これでノーベル賞は俺んモンだぜ~!!」あんまりにもあんまりすぎてコメントもできない。策士とバカが混在していて頭おかしくなりそう。ここ早くアニメで観たい。

 打ち上げ。命がけの職務だからこそ、飯を食う時は徹底的に楽しむ。そんな時でも不憫の匂いを醸し出すコベニちゃん。一方、姫野先輩は酔ったらキス魔になるらしい。デンジくん我が世の春きたる??

 というタイミングで原初の女・性女マキマ降臨。「マキマさんに姫野先輩とキスしてるところ見られたくない」とこの場で一番乙女なのがデンジ君なの笑う。そういう駆け引きもできるらしいが、大人のおねえさんには敵わない。そしてファーストキスにして、最悪のキス。「ゲロ食うなんて信じられねぇよな!?同じ哺乳類として情けねぇぜ!」極貧生活していたがゆえに前フリと化したキス、最悪すぎる。

 姫野先輩に連れ込まれあわやセッ!?!?の時、常に一歩先を往くのがおれたちのマキマさんなんだよな。アメとムチが絶妙すぎて手玉に取られるのがなんだか心地よくなってくる(ここ伏線ですよ)。

 サムライソード=サンの襲撃を受ける一行。アキくんを看取りたくない姫野先輩がここで脱落。死に至る段取りが「美味しい」「正しい」と思うけど、四肢を失いながら丸呑みというエグさが凄いな。それにしても「私が死んだ時泣いてほしいから」って相手に永遠に抜けない楔を打ってこの世から消える女、美しいけど残酷でめちゃくちゃタツキ先生の美学を感じる。

 頭を撃ち抜かれたにも関わらず生きていたマキマさん。この種明かしは後半になるんだけど「内閣総理大臣との契約により受けた痛みを他の日本国民に肩代わりさせた」んだよね。こっわ。なにそれ。

 「マキマさんは内閣官房長官直属のデビルハンターだ」にマジで!?と声が出る。『PSYCHO-PASSの監視官と執行官みたいな立ち位置だと勘違いしていたので、ゴリゴリにデビハンだったことに驚愕。

 「能力を秘匿するために周囲の人物は目隠ししなければならない」とか、こういう"格"の描写があると燃えるよね。この頃から「マキマさんラスボス説」を感じ始めるが、それはまた後ほど……。

 姫野先輩の殉職に涙するアキくんと、泣けないデンジくんの対比。ここで大事なのは「人が死んだのに泣けないことに悩む」というデンジ君の在り方で、素っ頓狂で常識外れな一面ばかりクローズアップしがちだけど「他の人と違う」ということに対し彼自身が悩んでいるというのは意味が大きい。「普通」になれなかったがゆえの罪悪感に苛まれている。

 その「普通じゃなさ」を肯定してくれる岸辺さん登場。デビルハンターなんて人並外れた職業してるなら、ネジ外れてる方が正しい。そういう価値観を入れてくるところも巧い。訓練を通じて「いつの間にかデンジとパワーの息が合っている」のって、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』かな。

 「イェイイェイ未来最高」こんなやつばっか!!!!!!!でもデル・トロのアイデアノートから抜け出してきたようなデザイン、すこだぞ❤

 再びサムライソード戦。特訓での学びを活かし、これまでの本能に沿った闘いではなく頭を使って敵を出し抜く。こういうロジックのある勝敗は漫画ならではよね。

 絵が巧い、は毎話そうなんだけど、今回は空中戦に電車内とシチュエーションが変わるところが大作映画っぽい。『スパイダーマン2』を漫画に置き換えて、グロくしてみました、みたいな。

 キッツイ戦闘が終わったら、ご褒美の回。なんとマキマさんと映画デートへ。マキマさん、私服かわいい〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。デンジくんも結局10代の青少年だから、清楚なお姉さんがリードしてくれるデートの魔力にはもう手も足も出ないよね。羨ましい。マジでこれになりたい。

 「今日は今から夜の十二時まで映画館でハシゴして観まくります」タツキこの野郎!!!!!!!!映画の趣味合わなかったら地獄だぞ!!!!ってかデンジくんって映画館行ったことある?声出すなよ??

 でも幸いなことに、いいオチがついたな。一緒に同じ映画観て同じシーンで泣けるって、相互理解の入り口に立てたようなワクワクがあるし、それを恋と呼びたくなるよね。あ、でも『花束みたいな恋をした』と学生時代のデートの失敗思い出して死にたくなっちゃった!!!!テヘペロ!

 でもこれ後の顛末を思えば「デンジくんに合わせて泣いた」可能性も否定できないのが、もう嫌。タツキの馬鹿。

 あっ!レゼ来たレぜ!!!もうここからはCV:上田麗奈で脳内再生するぜェ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!

 レゼ、初登場時の服装が「デッカイ鈴のロゴのTシャツ」なんだけど、それどこで売ってるの?ドラえもん意識してる??可愛いね?どこ住み?LINEやってる??こんど飲もーよ笑

 「デンジくんみたいな面白い人 はじめて(CV:上田麗奈)」には勝てねェよなァ〜〜〜〜〜〜!!!!!!

 (確定で俺のコト好きじゃん)
 (どうしよう)
 (俺は俺の事を好きな人が好きだ)
 (マキマさん助けて 俺この娘好きになっちまう)
 ここホントにもうwwwwwwwwwwwwww

 うわ!うわ!!!夜の学校に忍び込むやつ!!!!思春期を灰色に過ごしてきた中年男性が一番憧れるアオハルムーブのやつ!!!!!

 授業のマネごとをする二人。デンジくんにとっては欠けた「普通」を埋めてくれる大事なシーンなんだけど、レゼ編のクライマックスで明かされた事実を鑑みれば彼女にとっても同じ意味があったのよね。普通になれなかった者同士が肩を寄せ合って、欠けた青春を埋め合う。切ないけど、優しい時間だよ。

 デンジくんの「満たされていると思い込んでいる」今の当たり前にメスを入れてくるレゼ。この辺りでフォロワーがCV:上田麗奈を推してきた意味を実感し始めた。

 ねぇなんで夜のプールとか行っちゃうのぉ〜〜〜〜〜〜!?!?

 うわしかも裸見せちゃった!!アニメ化できません!!!!デンジくんの童貞を虐めるな!!!!こういうのしたかったァ〜〜〜〜〜!!!!!!

 「デンジ君はさ、田舎のネズミと都会のネズミ、どっちがいい?」そんなのお前に決まってるじゃん……。

 真面目な話。彼女もまた「飼われている」立場の人間なので、マキマの犬となっているデンジくんを開放したい思惑があったと思う。それは自分の救済にも繋がると信じて。でもデンジくんは今の刹那的な快楽に身を任せる生き方に慣れちゃって、以前の貧困生活に逆戻りする危険を犯してまで冒険したいとは思わない。望まなくなったデンジに、たぶん一度は失望したんだろうな。それでも、逃避行を願って、祭りの夜にもう一度プロポーズ。

 ハッキリとわかったけど、レゼ役に上田麗奈さんをキャスティングした人、ぜったい同じ性癖。

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 「だって私…デンジ君が好きだから」に対し、「だんだん楽しくなってきてんだ今……」が出てくるデンジ君が愛おしいな。これまでがわりと即物的な性愛を第一優先に動いていて、それが彼の魅力でもあったけれど、今は公安や早川家という居場所に安らぎを得ているということが本人の口から放たれる。このあたりをてらいなく言語化できるのも偉いなぁ。

 その後間髪入れず「一生記憶に残る、なんならこれからの人生どんなキスをしてもこれと比べてしまうようなキス」が入ります。タツキ先生は女性を描くとブレーキが消失するらしい。

 レゼの正体は爆弾の悪魔だった!な、なんだってー!?!?

 爆弾の悪魔、レゼのバイト先の制服である「エプロン」の意匠があるのがこれまた憎たらしいぜ。その内自爆で服破けていって裸エプロンになっていくの、なんかこうどうやったら思いつくんだ!?っていう視覚的なエロス。

 道路で車を足場にしてのチェイス。これまた映像化が映えるシチュエーションだなァ〜〜〜〜。爆弾の悪魔が手足をロケットにしながら、瞬間移動めいたスピードでぐんぐんフィジカルを攻めてくる。それに対し「頭を使って」ビームを使役するデンジ。この異常事態においても“デンジ節”は絶好調。

 「台風」「サメ」「チェーンソー」が揃い、あぁこれアレだな……と読者が内心ニヤニヤしだしたところで「第50話 シャークネード」ですよ。オタクの心を読むな。

 闘いが終わり、真相が明かされる。レゼはソ連に飼われており、自由の身になるための逃避行を計画していた。デンジ君もわりとそれを覚悟して、ついていく構えだったのかな。

 デンジ君の失恋は、レゼにとっての初恋だった。そういう落とし所になると思う。出会いの際、泣いている女の子を見かけたら即席の手品で笑顔にしようとしたデンジ君が、彼女にとってヒーローじゃないわけがないんですよ。始まりは偽りの気持ちだったかもしれないけれど、泣いてるレゼにお花を差し出したデンジの気持ちは確かに本物だったから、レゼの心もそれに応えてしまった。

 アキくんに人殺しを見せたくない天使ちゃん、傷心のデンジ君を気遣うパワーちゃんの優しさが染みるなぁ。非情で命の危険がある職場なれど、そこには友情や配慮があって、それが悪魔や魔人から発せられているのもいい。そうした人間臭さの愛おしみとは正反対のマキマさんが映えるわけでもあるし。

 レゼ……。

 仮にこのエピソードが映画化されるとして、映画館でレゼとエンカウントして情緒バキバキにされる青少年の顔がみたい悪魔になっちゃったな。

 デンジ君の存在が報道を通して全世界に知られてしまう。江ノ島旅行は延期となり、監視がつくデンジ。

 「デンジがマキマの元にいると都合が悪い諸外国」「地獄で死ぬ直前にみんながチェンソーの音を聴いている」など、チェンソーの悪魔の特異性を改めて意識させるきな臭い展開が。そういえばレゼもデンジの心臓を得ることを目的としていた。

 デンジを狙って各国のやべぇデビルハンターが集結。ノリは『ジョン・ウィック チャプター2』だなこれ。「三兄弟」「師匠と弟子」「女を侍らせた全人類素手格闘最強の女クァンシ」「ドイツのサンタクロース」などなど、キャラが濃すぎる。

 「ソフトクリーム食べたの人生で二回目です」「一口食べておいしくて……おいしすぎて走って転んで落としちゃいました……」コベニちゃんの不幸エピソードをインターネット・ミームでコーティングしてお届けするこの手付き、めっちゃタツキしてる。

 対人形の悪魔戦はソンビ映画、クァンシ戦が武侠映画と、シチュエーションやアクションのバリエーションが切り替わる面白さは映画マニアの作者ならではで楽しい。これまで「チェンソーマンは映像で脳内再生される」と語ってきたけれど、クァンシが最初に能力を発揮する一連のシーンはおそらく「読者がページをめくること」を想定した漫画ならではの緩急とショック演出がたまらん。これはもしかしたら映像化されると魅力が減退するタイプの漫画演出かもしれない。

 「漫画が巧い」と「映画が巧い」は近いようでいて実は全く別の領域のはずなのに、その境界線を意識させない技能がタツキ先生にはあって、でも時折こうして「漫画にしか出来ない」ことも平然とやってのける。なんかもう、全方位に隙がない巧さ。

 乱戦が続く中、「真のサンタクロース」が誰なのか発覚。ま〜〜〜たヤバい美女だったよ。

 サンタクロースの契約によって地獄で叩き落される特異課とクァンシ一同。ここから始まる「闇の悪魔」の一連のシーン、ぶっ飛び具合いでは過去イチのヤバさで、宇宙飛行士の上半身と下半身が向かい合わせに均等に並べられている絵の生理的気持ち悪さ(均等なのに起きている事情が異常すぎて脳が処理できない)とか、コレ本当にジャンプでやったの!?と1巻あたりの感情が蘇ってくる。

 この一連の殺し屋全員集合編(でいい?正式名称あったらゴメン)、濃いキャラクターがたくさん出てくる反動として「デンジの出番が目減りする」印象が7巻には正直あったのだけれど、8巻から遅れを取り戻そうとギアが上がってくる展開がもう最高。「デンジ君助けてくれる?」「ワン!」ですよ。ヒーローヒーローしてるのにどこかおかしいのがデンジ節。

 「闇の中では攻撃が効かない敵」に対し「これが俺のオ…!光ん力だアアアアああ!!」って自分に火をつけて闘うんですよ。闇がヤバいなら俺が光ればいいじゃんっていう天才の発想。事前の「こちとら毎日教育テレビみてんだぜ!!」もこちらの腹筋に悪すぎる。

 デンジは日に日に成長しているし、居場所を得ておそらく内包している欲望や夢の種類も変わりつつある。それはそれとして、デンジ=チェンソーの悪魔は常にめちゃくちゃで常識を逸した、究極のバカである。この一線が守られているからこそデンジは「他の漫画にはいない」主人公になっている。そこに『チェンソーマン』に惚れ込んだ私なりの理由が詰まっている気がする。

 そしてここで隠された切り札として、おそらく最強クラスの能力に数えられるであろう「宇宙の魔人」の能力が明かされる。これどう倒すんだろうなァ〜〜??って考えてたらマキマ様がエイッって殺っちゃった!!宇宙クラスも寄せ付けないマキマ様、やっぱりどうやらエロいお姉さんというわけではないらしい。ここで単行本を区切るのエグいな〜。これでお預け食らってたら集英社に乗り込んじゃうよ。

 闇の悪魔との諸々がトラウマになったパワーちゃん。彼女も本能優先型タイプなので、壊れるとここまで幼児に逆戻りするのか。一緒にお風呂入ってもすでに友の情が湧いてるのかデンジ君もアレが反応しなくなってるの愛しいな。とはいえ「血を飲む」シチュエーションって古今東西普遍の官能があるよね(しかもラストバトルで活きてくるし)。

 9巻、早川アキが剛速球で死亡フラグを建てまくる前半部、タツキ先生の中で早川アキが「殺すに相応しいほどに熟した」頃合いになったんだろうな。仲間の死を看取りたくない彼がその究極として、死ぬほど復讐したかった銃の悪魔討伐戦を辞退しようとする。早川家の居心地の良さに一番やられちゃったのはアキ君だったんだね。

 あぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜早川アキってさぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。

 「現在 銃の悪魔はすでに倒され 拘束されているの」から始まる一連の説明のワクワクですよ。物語の縦軸だと思っていたものをひっくり返され、より大きな敵が浮かび上がってくる。銃の悪魔の保有率こそが国家間のパワーバランスであり、抑止力となる「悪魔の名前ルール」設定の妙。巧い。

 そして忘れてたタイミングで未来最高=サンの登場。ここで最悪の悪夢をアキくんに見せておいて、天使ちゃんと海を見る『ノッキングオンヘブンズドア』モチーフもキメて、でっけぇでっけぇ死亡フラグのバベルの塔が完成。さぁいつでも殺せるぞ!という助走をつけて、ここから最悪のジェットコースターの幕開け。

 銃の悪魔のデザイン、好きです。もうこれでコメント終わりでいいですかね?ってくらい壮絶。なに???なにやってんの??????

 『シン・ゴジラ』蒲田くん上陸のシークエンスのような、淡々と状況が進行していく間に死者数が加速度に増えていくあの感じを、漫画に置き換えたらこうなるんだろうな、という印象。コマとコマの間を埋める、つまり「あぁ今人が死んだな」という感覚を死者の名前を箇条書きにしまくるという常軌を逸した表現で描く。

 と同時に、マキマの正体もここで開示。「支配の悪魔」と明かされた瞬間、じゃあ今までのデンジ君への振る舞い全部アウトじゃん!?と瞬時に体温が下がった。こっわ。なにそれ。

 銃の悪魔に乗っ取られてしまったアキ。先の展開の話になるのだけれど、あれだけ無数の死者が出ておいて早川アキに転生する理由が銃の悪魔に動機がないだろうから、これは絶対マキマの所業ですよね。

 『鉄男』オマージュ満載の銃の魔人=早川アキ。ビジュアルは100点悪意5億点って感じだな。銃の悪魔によって奪われた弟とじゃれ合う様子がデンジとの闘いとシンクロするって、露悪の極みですよ。

 家族の中で上手く溶け込めず、弟に抱えていた嫉妬じみた気持ちを内包しながら、それが雪解けしていく一方で「今の家族」であるデンジが血に染まっていく対比。デンジはもういつものデンジ節も出せず、「戻れ 戻れ 戻れ アキに戻れっ」と叫ぶことしか出来ない。

 早川家という居場所が尊いものであるかをお互いに認識しながら、それはもう戻らないという決定的な分断を描く。作劇として真っ当で、美しく、これ以上ないほどに残酷。であるからこそ、面白い。

 そしてここで泣けるのが、デンジに助けを求め、あまつさえ自分の血を捧げる民間人まで出てくる。デンノコはすでにヒーローになって、ヒーローとしての立ち振舞を求められる。生きている者を救うためには、自分の家族を殺されなければならないジレンマ。なんで、なんでこんな構図思いつく。

 あっははははは。アキ。うわぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。

 めっちゃ辛いけど読むの止められねぇんだよなァ〜〜〜〜(当時。1月1日深夜1時超え)。

 淡々と、粛々と、アキを失ったその後が描かれる。もう家借りるくらいの社会性はあって、それはきっとアキとの生活で得たもの。その生命を奪ったことに苦悩する。

 デンジはバカかもしれないけれど、家族を殺してしまった気持ちに蓋をできるほど、バカにはなれない。彼本来の優しさや良心が、彼を蝕んでいく。

 そこにつけこむ魔性・オブ・ザ・イヤーことマキマ様。デンジくんが自ら人間性や尊厳をかなぐり捨てるところまで追い詰めた時点で、『チェンソーマン』というゲームの勝敗は決していたような気がする。

 「私がパワーちゃん殺すから」「わん……」「え?」すっげぇ〜〜〜〜〜〜何コレ。ホラー映画の間の取り方するじゃんここ。アキとのトラウマを想起させる「ドア」を隔てるところも相変わらず巧い。

 当たり前のようにデンジくんの誕生日ケーキ準備しているパワーちゃんマジ愛おしいな。と思わせて死んだァ〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!容赦ない!容赦なさすぎるってこの漫画!!!!!!!

 マキマさんのネジの外れっぷりが印象的だけど、ここにきてデンジのトラウマの最下層、「父親を殺してしまった」を思い出させることで完膚なきまで叩きのめす、一連の流れがこれまた容赦ない。こちらの語彙が尽きてきたので、「容赦ない」ってワードあと何回か出てきます。すみません。

 チェンソーマンの悪魔としての特異な能力、マキマの目的、これまでの過程、このタイミングで挟まれるコベニ虐、何もかも狂ってる。

 チェンソーマン、ついでに「労働」の概念も喰ってくれよ。

 続く支配VSチェンソーの闘い。ここでチェンソーマンを英雄として崇め人々から恐怖の感情を薄める=チェンソーマンを弱体化する作戦、『ぼくらのウォーゲーム』のアレを思い出して好きだ。

 「だから俺……!チェンソーマンになりたい……!」こんなに惨めで格好悪くて情けなくて、でも泣ける「I am Iron Man.」があるのかよ。

 普通が欲しい、普通になりたいと追い求め、それが叶っても次の夢なんて見つかりやしない。そう思い込んでいた自分はいつしか、その普通では飽き足らなくなる。

誰だ誰だ頭の中 呼びかける声は
あれが欲しいこれが欲しいと歌っている

米津玄師『KICK BACK』

 「支配」されることで満たされ続ける生活ではなく、たとえ乾いていても欲張る方を選ぶ。上手いモン食いたいし女とセックスがしたい。それが人間だからと、敢えて言い切ってしまう。

 父親を殺し借金まみれで、売れる臓器を全部売って残飯で食い凌ぐ。そんな最下層を知っているからこそ、「チェンソーマンとして/ヒーローとして」誰かに望まれ、崇められる。その喜びを知ってしまった。デンジは早川家という家族を、「暖かみ」を知ってしまった。もう戻れないんですよ。知らなかった頃の自分には。

 泥臭くても、支配される自分なんてまっぴらゴメンだ。デンジはもう、飼われる存在ではなくなった。だからマキマに勝てる唯一の存在になれた。ポチタ=チェンソーの悪魔がデンジと出会ったことが、マキマの敗因になった。そしてそれを掴んだのがデンジ本来の優しさ、すなわち「弱き者を見捨てず、抱きしめてあげられること」だったの、巧すぎる……!!

 しかも!!マキマを内包する「愛」の手段が彼女を肉として喰らうことなんだけど、じゃあ「料理」を、食材を調理して食べれるものにしてあげるという「愛」を教えたのは誰かって言えば、アキくんなわけで。デンジくんの中でマキマさんだけじゃなくてパワーちゃんもアキくんも生きてる!!江ノ島のエピソードでマキマが何気なく「早川家」って言った瞬間にこの対決はオチてるんですよ!!!!タツキ〜〜〜!!!

 ここまで来ると「漫画が巧い」とかを超えて「物語が巧い」という他ない。練られたテーマ性とそこに導くプロセスの秀逸さ、それでいて最後に迎える着地の普遍性たるや、まぁ凄い。舌を巻く膝を打つ感服する。そういった言葉のフルコースでも足らないくらい驚かされたし感動した。

 うわ、しかもこれラストカットで「実はここまでがチェンソーマンというヒーローのオリジンでした〜〜〜〜^^」とかぬけぬけとやるんだよ藤本タツキという男は!!!!!!粋だし癪だし超カッケェよォ〜〜〜〜!!!!こういう漫画描きたいじゃん映画好きでアメコミ好きで漫画家やってたらさァ。もし俺が同業者でこんなの読んでたら絶対狂ってる。漫画家じゃなくて良かった。

 「第一部」とか区切りがあるの知らなくて本当に良かった。12巻が存在することを知っていた(購入済み)ので、「どう終わるの?」というハラハラ込みで読んでいたからこそ、「公安編 完」ときて天を仰いだからね。

 チェンソーマン、面白い。もう面白すぎる。漫画離れした映画的演出とか露悪的なギャグセンスとか蠱惑的な女性像とか全部全部ひっくるめてエンタメとしての強度があるし、それがちゃんとヒットしてアニメ化してるってのも納得しかない感じ。最高。最高の漫画。ここまで来たら完結まで追うし、正月休みの大部分を捧げた甲斐のある作品だった。

 ってなわけで、今手元には12巻と、1/4に発売されたばっかりの最新13巻があるんだよな。でも今読んだら確実に労働という名の日常に戻れなくなるけどなァ〜〜〜〜〜!!!!!!!

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