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The Other Son 〈もう一人の息子〉

私がこれまでに見てきた中で、最も心を揺さぶられた映画のひとつ。
フランス映画「The Other Son 」(邦題 もう一人の息子)

https://www.tc-ent.co.jp//products/detail/MPF-11705 より

2012年東京国際映画祭の最優秀作品賞と最優秀監督賞の受賞作です。

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フランス系イスラエル人の青年ヨセフは、イスラエル軍の大佐である父、精神科医の母、妹と共にテルアビブで暮らす。18歳になり、兵役準備として血液検査を受けるが、rh血液型の違いから両親と親子関係がないことが明らかになる。

調査によって、18年前の湾岸戦争の混乱の最中、ハイファの病院で出生時に取り違えが起きていたことが判明。しかも、ヨセフの実の両親は、イスラエルとは敵対関係にあるパレスチナ人だった。

初めて両夫婦が対面し、院長から事実を告げられるシーン。
父親たちは怒りを露わにし気持ちを整理することができず、部屋から出て行ってしまう。一方、母親たちは互いに持参していた写真を食い入るように見つめ、実の息子の成長した姿を確認する。そして、この歳まで無事に育て上げたことを互いに感謝し合う。

やがて、息子たちに本当のことを伝える時がやってくる。

音楽好きで今時の優しい青年ヨセフ。
その出生が軍内部でも知られるところとなり、兵役が免除となる。更に、礼拝で訪れたユダヤ教会への立ち入りも拒まる。これまで築いたアイデンティティが崩れてしまい、ヨセフは自暴自棄となってしまう。敬虔なユダヤ教徒であり、国家への忠誠心が厚い父との関係もギクシャクし始める。

そして、イスラエルとの分離壁の反対側、ヨルダン川西岸の町に住むもう一人の息子、ヤシン。彼はフランス留学でバカロレアに合格した優秀な努力家で、将来は医師になることを目指している。
しかし、事実を知ったヤシンの兄は、弟がユダヤ人であることを許すことができない。ヤシンは地元の友人たちとも疎遠になってしまう。

こうして、自分を取り巻く環境が大きく変わってしまったヨセフとヤシンは、互いの家族と共に初めて対面を果たす。


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10月7日、ハマスがガザ近くのイスラエル領内に侵入し、地域住民や音楽フェス参加者たちを虐殺、拉致する事態が起こった。対してイスラエルは、ガザ地区からハマスをせん滅するため、に無差別爆撃と地上部隊の侵攻を開始。

さらに、イスラエル軍は、ハマスの司令部が地下に存在するとして、ガザ地区内の病院を攻撃し始める。


映画はフィクションだが、私は思う。

きっと、ガサ地区の病院には、今もヤシンが残っているだろう。
どんなに攻撃が激しくなっても最後まで諦めず、残されたわずかな医療品で必死に治療を続けていることだろうと。

また、ヨセフの父(ヤシンの実の父)も、国の威信を賭けて、最前線に赴いて戦闘に参加するのだろうと。

もしかしたら、ヨセフはあの音楽フェスに参加して、巻き込まれていたかもしれない。

そのようなことが日常的に起こってしまうこと、それがイスラエルとパレスチナの関係であり、その悲しい状況を何の躊躇いもなく、無限に幾重にも生み出し続けてしまうこと、それが戦争なのだろう。

オタク気質の長文を最後まで読んでいただきありがとうございます。 またお越しいただけたら幸いです。