摩擦をゼロにするな。 映画「彼女が好きなものは」 小説「彼女が好きなものはホモであって僕ではない」より


摩擦をゼロにするな。空気抵抗を無視するな。


私たちは自分の世界を簡単にしがちだ。

精神状態が「普通」とは違う「異常」な人を次々に名前ある精神疾患に当てはめる。

特出した性格を持つ人は何かしらの「障がい」があるとして障がい者認定される。

その人たちに名前がつくことで、人間関係を簡単にしている。


つまり、一個人に向き合う力を最低限に減らしている。


それもそのはず。
忙しない日々の中で私たちはあまりにも多くの人と接しすぎている。


確かに個人個人に向き合い続けるのには時間と体力がいる。
その人をラベリングし、性格を当てはめた方がコミュニケーションは楽だ。


でもそれでいいはずがない。
ラベリングするということは自分の持つ世界観だけで生き抜こうとしているだけだ。


簡単なことではない。
真に理解するなんてできない。

でも、相手の世界に理解と敬意と感謝を向けることはできる。
その努力こそが、摩擦をゼロにしていた私たちに進むきっかけをくれる。


そして、信じること。


昨日もこのテーマを扱った。
まだまだ様々なマイノリティが生きづらい世の中。

今、相手が見せてくれている姿はほんの一部でしかない。(これに関しては全ての人に言えると思っている。そもそも誰かを完璧に理解することは不可能だ。見えている世界、見ている世界、価値観が異なるのだから。だからこそ、面白いのだが)


小説中に

「『僕の言葉なんて全部嘘かもしれないよ。実は性別も年齢も性的指向もHIVも全部嘘で、どこにでもいる異性愛者の女子中学生ということもありうる』
ふざけながらはぐらかす。本当なんだろうな。そう思った」

という文章が出てくる。

物語の中で何が本当だったかはさほど重要ではないはずだ。

それよりも、そういう人をどう捉えるか、だ。
普通はそんなことない、と否定したい。

でも、

それでは相手が持つ大切な部分を否定することになる。
言えない部分、相手がもがき苦しんでいることを否定しまうかねない。

だから私は、
どんなことが起きようとその相手を受け入れたい。

それは同時に、相手を信じる自分自身を信じることになる。



「いちばんたいせつなことは、目に見えない」
『星の王子さま』の言葉がふと頭をよぎる。

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